4月11日から始まった世界フィギュアスケート国別対抗戦。日本チームのメダル獲得のためには女子シングルで上位に入ることが絶対条件だったが、紀平梨花、坂本花織のふたりがショートプログラム(SP)で好スタートを切った。

 期待の紀平は、最初のトリプルアクセルに成功。同じくトリプルアクセルを成功させて、その時点でトップだったエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)を上回る出来にした。



今季最高得点を記録した紀平梨花

 直前の6分間練習で紀平は、トリプルアクセルを3回失敗していた。

「6分間練習はすごく不満があってヤバイかなと思ったけど、終わったあとに一度靴を脱いでからテープを強めに巻き直したことで感覚がよくなった。入るコースを考えすぎてもジャンプのタイミングがわからなくなるけど、何回も何回も確認して、体にしみ込ませることができていたので、今回は何も考えず無意識でいい位置に行けたのかなと思います」

 こう話す最初のトリプルアクセルは、まったく力みのないきれいなジャンプ。GOE(出来ばえ点)加点もトゥクタミシェワの2.29点を上回る2.86点だった。その後も丁寧に要素をこなす滑りに終始し、終わってみればグランプリファイナルに続く今季2度目のノーミスの滑り。今季世界最高の83.97点を獲得して首位に立った。

「今回はファイナルや世界選手権より、すごくジャンプに集中することができました。これまでノーミスでできることが少なかったから、今回はショートでと思っていました。いつもなら最後の3回転ルッツを跳んだあとも『今からこけたら一緒だ』と思って本当の笑顔を見せることができていなかったけど、今回はルッツを跳んだあとで自然に笑顔を出せた。このプログラムを最後はしっかり決めて『この曲にしてよかった』という気持ちで終わりたかったので、演技のあとはすごくうれしくて、ガッツポーズも自然に出ていました」

 また、最終滑走者となった坂本花織も、ノビノビとした滑りを見せた。

 今回は「ジャンプの練習を1回もせずに、すぐに通しで練習したり、試合から帰ってきた直後の練習で最初にノーミスでやるとか、ショートに関してはどんな状態でもノーミスでできるように練習をしてきたので、だいぶ自信がついていました」と言う。



シーズン最終戦で自己最高得点の坂本花織

 ジャンプに関しては、最初の2本は「空中でしっかりつま先まで伸ばし切れば着氷もつま先からできるけど、それがだいぶできるようになりました」と本人が言うように、ゆっくりとした曲調に合わせた柔らかいランディングのジャンプを見せ、最後の3回転ループも難しい入りから成功させて、GOE加点でジャッジが4点と5点を並べる出来にした。

 さらに演技構成点は、SPトップの紀平を0.20点上回る全選手中最高の36点を獲得。自己最高の76.95点を出して3位に入った。

「滑り出す瞬間、いつもは緊張をごまかすように笑うけど、今日は緊張というよりメッチャ集中できていたから、表情を作ることまで頭が回らなくて顔は死んでいた」と坂本は笑っていたが、紀平とともに実力を出し切る演技をしてチームに貢献した。

 男子は、世界選手権優勝のネイサン・チェンと3位のビンセント・ジョウのアメリカ勢がともにノーミスの演技で100点台に乗せた一方で、プログラムを昨季の『四季』にした宇野昌磨は、92.78点で3位につけた。

 今回、「何かを成し遂げたいとか、世界選手権の悔しさを晴らしたいとかいう気持ちはまったくなく、チームに少しでも貢献できたらという思いだけ」と話していた宇野は、SPでは4回転フリップ+3回転トーループに果敢に挑戦。ただ、フリップはGOEで減点にはならなかったが着氷で耐える形になり、3回転トーループを付けることができなかった。さらに、後半の4回転トーループは少し回りすぎる着氷になってしまい、少し間をおいて2回転トーループを付ける連続ジャンプにしたが、GOEは3.80点の減点となった。

 演技後、宇野は「チームにもっと貢献したかったですが、今の調整や実力では妥当な成績だと思います」と淡々と話していたが、最低限の役割を果たす結果を手にした。

 そして、もうひとりの男子シングル代表として、今季の不調を吹き飛ばす滑りをしたのが田中刑事だった。

「やっといい演技ができました。何とかギリギリでセーフだったと思う」と田中自身が言うように、今季は「練習ではできているが本番ではなかなかできない」と悩んでいた最初の4回転サルコウをしっかり降りると、最後のトリプルアクセルで0.91点減点されるだけのミスにとどめ、今季自己最高の89.05点を獲得して4位につけた。

 今大会、各選手はシーズン最後の戦いでプレッシャーなく滑っていて、アンドレイ・ラズキン(ロシア)が88.96点、マッテオ・リッツォ(イタリア)とナム・ニュエン(カナダ)が87点台後半を出す展開での89点台。そこに競り勝っての4位は、日本チームに大きく貢献したと言える。フリーでの日本勢の滑りにも注目したい。