スーパーGT開幕プレビュー@GT500編 2019年のスーパーGTシリーズが4月13日、14日に岡山国際サーキットで開幕する。シーズン前には公式合同テストが2度行なわれたが、その内容から各陣営の仕上がり具合や今年の勢力図が少しずつ見えて…

スーパーGT開幕プレビュー@GT500編

 2019年のスーパーGTシリーズが4月13日、14日に岡山国際サーキットで開幕する。シーズン前には公式合同テストが2度行なわれたが、その内容から各陣営の仕上がり具合や今年の勢力図が少しずつ見えてきた。

 モータースポーツの開幕前合同テストは、プロ野球でいうところの「オープン戦」、Jリーグならば「プレシーズンマッチ」のようなもの。ここでの結果が、シーズンを占ううえで重要な試金石となる。



王座奪還に挑むナンバー12のカルソニックIMPUL GT-R

 ホンダ、レクサス(トヨタ)、日産がしのぎを削るGT500クラスの各陣営は、毎週のように各地のサーキットでテスト走行を繰り返し2019年仕様のマシンを仕上げてきた。ただ、合同テストではライバルに「手のうちがバレる」ことにもなりかねないため、緊張感を漂わせながら走るチームが多かった。

 そんななか、2回のテストで好タイムを記録していたのは日産勢だ。昨年はライバル2社に後れをとって惨敗に終わってしまったが、今年は挽回すべく、車体やエンジンにかなりの改良を入れてきた。

 その日産勢のなかでも、とくに速さを見せたのが、「元祖・日本一速い男」として知られる星野一義監督率いる名門チームインパル、ナンバー12のカルソニック IMPUL GT-R。今年はGT500クラス参戦6年目となる慶應義塾大出身の佐々木大樹(27歳)に加え、F1でリザーブドライバーの経験もあるイギリス出身のジェームス・ロシター(35歳)がレクサスから移籍してきた。

 新体制となった12号車は、2月のマレーシア・セパンテストや3月の鈴鹿テストなど、各メーカーが主催するプライベートテストでトップタイムを連発。そして全15台が集まった岡山国際サーキットと富士スピードウェイでの公式テストでも、GT500クラス総合トップタイムを叩き出した。まさに「絶好調」と言っていいほどの仕上がり具合だ。

 しかし、星野監督はテスト結果を冷静に受け止め、楽観視する様子はまったくない。

「『この調子で何とかチャンピオンを……』という感じでは絶対に上に行けないし、そういう守りの言葉もよくない。チーム全員でどんどん攻めていかないと」

 星野監督が気を緩めないのは、過去に苦い経験を何度も経ているからだ。

 12号車は毎年トップ争いに絡む活躍を見せるものの、ここ数年はあと一歩で悔し涙を飲んできた。2014年と2015年は最終戦までチャンピオン争いを演じたが、肝心なレースで好結果を得られず惜敗。昨年の第5戦・富士500マイルレースでも安定した走りでトップを快走するも、チェッカーまで残りわずかのところでエンジンルーム内のトラブルで無念のスローダウンとなり、またも勝利を逃した。

 どんなに速くても、調子がよくても、チェッカーフラッグを受けるまでは絶対に油断できない――。

 その言葉の意味を、星野監督は誰よりも心得ているのだろう。彼の「最後まで攻め続ける」姿勢は、ドライバーやチームスタッフにもしっかり染みついている。

 岡山の合同テストでトップタイムを記録した佐々木は、このように語った。

「(岡山テストでのベストタイムについて)満足はしていないです。正直、ホンダ勢は絶対に(手のうちを見せないために)抑えて走っていたし、最終的に僕たちと近いところにくるんじゃないかなと思っています。そういう意味では、僕たちもまだ足りない部分があるので、そこを補っていかないと開幕戦でポールポジションは取れません」

 富士の合同テストでトップタイムを記録したロシターも、佐々木と同様に気を引き締める。

「ここまでのテストでは、いい部分もあれば改善したい部分もある。そして何より、僕自身がもっとGT-Rの特性を勉強しなければいけない。開幕戦に向けてテストを繰り返し、クルマのパフォーマンスを少しでもよくしなければ」

 トップタイムを出せば、普段なら上機嫌で話してくれるロシターも、冷静にシリーズを見据えていたのが印象的だった。

 各陣営の本当のパフォーマンスは、開幕戦が始まってみないとわからない部分が確かにある。だが、今年の12号車は「開幕戦の優勝候補」と言っていい。

 名門チームインパルは、2016年の第5戦・富士を最後に優勝から遠ざかっている。それだけに、星野監督は口にしなかったものの、「今年こそ!」という想いは誰よりも強いだろう。だが、その想いを前面に出すのではなく、「守るのではなく、攻め続けていく」という姿勢を貫こうとしている姿に、あらためて”星野一義らしさ”が垣間見えた気がした。

 2016年以来となる優勝、そして悲願のスーパーGT年間王座獲得へ――。名門チームインパル、復活のシーズンが動き出した。