「今年は、すごくいい年にしようと思っています。シーズンが終わったときに、『いい1年だった』と思えるように」 今季ステップ・アップ・ツアーの開幕戦、rashink×RE SYU RYU/RKBレディース(福岡県)で出会った堀琴音(23歳)は、…

「今年は、すごくいい年にしようと思っています。シーズンが終わったときに、『いい1年だった』と思えるように」

 今季ステップ・アップ・ツアーの開幕戦、rashink×RE SYU RYU/RKBレディース(福岡県)で出会った堀琴音(23歳)は、そう言って笑顔を見せた。だが、その姿からは「今年が勝負の1年になる」という悲壮な覚悟も見え隠れしていた。



シード復活へ、巻き返しを誓う堀琴音

 昨季、堀にとっては試練の日々が続いた。レギュラーツアー34試合に出場して、予選通過はわずか5回。つまり、2度の棄権を除いて、27試合も予選落ちの屈辱を味わったわけだ。

 その結果、賞金ランキングは114位。2015年に19歳で初シードを獲得し、以降3年間保持してきたシードを失った。さらに、ファイナルQTでも82位という結果に終わって、今季ツアーの出場権を逃してしまった。

 不振に陥った原因は、スイングの微妙なズレがあったまま、シーズンを迎えてしまったこと。試合が続くなかで修正作業を続けてきたが、かつての自分のゴルフを取り戻すことは容易ではなかった。

 そして今季も、ここまで主催者推薦で開幕戦のダイキンオーキッドレディス、2戦目のヨコハマタイヤ PRGRレディスカップ、3戦目のTポイント×ENEOSに出場したが、いずれも予選落ち。結果だけ見れば、昨年からの不振を引きずっているように見える。

 だが、堀自身はいたって前向きだ。昨季とは違って、気持ちの切り替えができているという。

「試合に出るからには優勝を目指したいです。このオフには、ショットの練習をずっと続けてきました。悪かった部分を重点的にこなして、パター練習もたくさんやりました。合宿はとても充実していましたから、徐々に調子を上げていきたいです」

 堀は昨年の夏から、原江里菜らを指導する森守洋コーチに師事した。原もかつて、若くして結果を残して脚光を浴びたが、一時シードを喪失する不振に陥った。しかし、そのどん底から這い上がって、再びシード選手に復活した経験を持つ。

 堀は、そんな自らの境遇に似た先輩にアドバイスを求め、森コーチを紹介された。そして、指導を受け始めると、すぐに「ミスの幅は少なくなり、自信を持って(クラブを)振れるようになった」と、その効果を語っていた。

 もちろん今も、「森コーチと原さんには、さまざまなアドバイスをもらっています。技術的にも、精神的な面でも、本当に助けてもらっています」と言う。目に見える結果として表には出ていないものの、復活への階段を着実に上がっていることは間違いないようだ。

 堀が語る。

「すべてがゼロから始まったので、おかしくなってしまったものを戻すのはなかなか難しい。それで、当初は過去によかった時のような、元の形に戻そうと思っていたのですが、その考えはやめました。今は、新たにイチから作り直すことを重点的に取り組んでいます。過去にとらわれることがないように」

 最もよかった時の自分は忘れる--そう、堀は言い切った。

 気持ちは吹っ切れた。もう後戻りはしない。あとは、現状の苦難に耐え、それを乗り越えて、結果を残していくしかない。

「少しずついい方向に向かっているのですが、まだ結果がついてこない。そこは、もどかしいですね。でも、いつか絶対に、いい結果につながると信じています。シーズンは長いので、焦らずにいきたい。

 だから今は、我慢の時かなと思いますし、そう自分に言い聞かせています。苦しい時も多いですが、今はゴルフが楽しいです」

 堀を応援するファンはたくさんいる。堀は、そんなファンのため、さらには所属先やスポンサーのため、「結果を残したい」という気持ちが人一倍強い。そこには”プロ”としての自覚があるからだ。

「プロゴルファーとして大事なものですか? やっぱり、結果が一番だと思います。それを果たせないなか、ファンの存在はすごく力になりますし、ありがたみを感じます。今でも、試合会場まで足を運んでくださる方がいますから。だからこそ、早く結果を出して、レギュラーツアーの舞台に戻れるようにがんばりたい」

 2016年には、賞金ランキング11位という成績を残した。アマチュア時代から注目を浴びてきた堀のポテンシャルと実力は、そうした過去の実績からも明らかだ。無論、堀自身、再びその表舞台に戻って、眩いばかりのスポットライトを浴びたいと思っている。

 幸い、まだ23歳と若い。挽回のチャンスはいくらでもある。「我慢の時」という長く苦しいトンネルを抜け出して、再び大きく羽ばたく日が必ずやって来るはずだ。