「こういう瞬間のためにプレーしているんだ」ネッツに続き、しばらくドアマットチームと呼ばれたマジックも、2011-12シーズン以来となるプレーオフ進出を決めた。このチームにおいて、誰よりもプレーオフ進出という結果を感慨深く受け止めていたのは、…

「こういう瞬間のためにプレーしているんだ」

ネッツに続き、しばらくドアマットチームと呼ばれたマジックも、2011-12シーズン以来となるプレーオフ進出を決めた。このチームにおいて、誰よりもプレーオフ進出という結果を感慨深く受け止めていたのは、ニコラ・ブーチェビッチだった。

在籍7年目のブーチェビッチは、試合後にこう語る。「最高の気分だ。僕がこの6年で乗り越えてきたことは誰にも分からないだろう。勝てなくて、苦しくて、疑いの目を向けられて、難しい時期もあった。でも、最高の形で報われたよ。この素晴らしい会場で、偉大なセルティックスに勝って決めることができたのだからね」とコメント。

その口調は静かだったが、一言一言が力強いものだった。振り返ればブーチェビッチは、ここ何年もトレードの対象と噂されてきた。スピードを重視するチームスタイルにフィットしないとも酷評されたこともあった。それでも今シーズンは、キャリア最高の平均20.8得点、12.0リバウンド、3.8アシストというスタッツを残し、キャリア初のオールスターにも選ばれた。

マジックは3月中旬のウィザーズ戦に敗れて借金が7(31勝38敗)に膨れたが、そこから6連勝で挽回し、望みを繋いだ。ブーチェビッチは、苦しい状況から立ち直ったチームの力を称えた。

「ウィザーズに負けた時点では難しいと思った。そこから挽回できたチームを誇りに思う。もちろん、今この位置にいられる理由は、クリフ(ヘッドコーチのスティーブ・クリフォード)とコーチングスタッフのおかげ。あまりにもクレージーなことで、まだ実感がない」

試合後のロッカールームでは、プレーオフ進出を祝い、選手とスタッフが水をかけ合って喜んだ。その輪の中心にいたブーチェビッチは「冷たい水だったけれどね」と一瞬笑顔を見せると、こう続けた。「こういう瞬間のためにプレーしているんだ。みんなで何かを成し遂げて、それを祝えるのはアスリート冥利に尽きる。チームのみんなは家族であり、兄弟のようなものだから」

おそらく東カンファレンスの6位か7位でレギュラーシーズンを終えるマジックは、ファーストラウンドで2位のラプターズか、3位のセブンティシクサーズと対戦する可能性が高い。どちらも格上だが、勢いという点では、9年ぶりにサウスイースト・ディビジョンを制したマジックに分がある。少なくともブーチェビッチと仲間たちは、自信を持ってプレーオフに臨むだろう。

ブーチェビッチにとってはシクサーズに所属した1年目以来、7年ぶりのポストシーズン。苦しみ、悩み抜いてつかんだプレーオフの舞台で、どんなプレーを見せてくれるのかが楽しみだ。