「勝てる雰囲気があっただけに……」 試合後、清水エスパルスの選手は口惜しそうに言ったが、負けはしたものの手応えがあるのか…
「勝てる雰囲気があっただけに……」
試合後、清水エスパルスの選手は口惜しそうに言ったが、負けはしたものの手応えがあるのか、表情に硬さはなかった。
「今日はなかなか、うまくいかなかったです。チーム全体でミスも目立って、こういう日もあるかなって」
一方でFC東京の日本代表MF橋本拳人は、逆転勝利にもかかわらず、どこか不満そうな口ぶりでそう語った。現状に甘んじていない。
「ただ、勝ち点3は大きいです」
不調でも帳尻を合わせ、勝ち点を稼げるか--。それも、王者になるチームの試練なのかもしれない。

室屋成とともに、FC東京の右サイドを活性化させていた久保建英
4月6日、味の素スタジアム。2位のFC東京は、17位と低迷する清水を迎え撃っている。4-4-2同士のミラーゲーム。FC東京が押し込むというのが下馬評だったが、互角の展開になった。
前半、FC東京は右サイド中心に局面を切り拓こうとした。
攻撃軸になったのは室屋成、久保建英の2人だろう。日本代表に選ばれている右サイドバック、室屋は積極的な攻め上がりでボールを引き出し、クロスを折り返している。久保との呼吸は抜群で、久保が引いてボールを受けたときは前に出て、深みを作った。また、久保も室屋に呼応。自らボールを奪い取ってカウンターを発動させ、逞しさを見せる一方、1人で4人の囲みを抜け出るテクニックも見せ、左足でシュートを打った。
「前半は相手にボールを持たれてしまった。(味方の)身体も重そうだったので、自分が右サイドで起点になろうと、裏に抜ける動きとかを多くしました」(室屋)
もっとも、上位らしくないミスも目に付いた。攻撃はパスがつながらず、守備は相手ボールホルダーに寄せられない。バックラインと前線の距離が長く、完全に間延び。セカンドボールを拾えず、カウンター返しでピンチになるなど、”補給路を断たれる”状態に近かった。自慢の堅牢さは消えていた。
「前半は何回かパスカットされ、カウンターを受けている。その流れで、後半に先制されてしまった」(FC東京・長谷川健太監督)
後半2分だった。キックオフから一度も自分たちのボールにできず、清水FW北川航也の巧みなポストワークに苦しむFC東京。バックラインが押し込まれた後、相手がボールを下げた後のクロスを、北川に巧妙にヘディングで合わせられ、失点した。チームとしての不具合を象徴していた。
リードされたFC東京は、反撃が必要になったが、その後もちぐはぐさが目立った。攻守のバランスの悪さを修正できず、ペースを取り戻せない。もし後半28分、スルーパスにオフサイドぎりぎりで抜け出した北川の右足シュートがサイドネットではなく、枠内を捉えていたら--。
「1-0で勝てる相手じゃないと思っていたので、いい流れだったときに、もう1点取れていれば……」(清水・鄭大世)
FC東京は命拾いした。実はこのとき、攻守はアジャストしつつあった。ナ・サンホ、ジャエルの投入で、左サイドからの攻撃が活性化していたのだ。
そして後半30分だった。中盤でパスをつないだ橋本が左サイドへ展開。左サイドバックの小川諒也が受け、さらに左へ流れたディエゴ・オリヴェイラが左足でクロスを送る。これにニアに走り込んだサンホがGKの鼻先で合わせ、ネットを揺らした。
「ビハインドで入ったので、ゲームの流れを変えなくては、と思っていました。(マーカーが)ガツガツと来たので、これを振り切ればチャンスになると」(サンホ)
サンホはゲームの流れを変えている。彼が左サイド奥深くまで侵入したことによって、FC東京は相手を押し込めた。これで必然的に、選手間の距離がよくなった。後半35分にはサンホがボールを頭で突いて、それを受けた久保が自陣からドリブル。1人かわした後、斜めに走り込んだサンホがスペースを空ける。久保は左足でシュートを打ち、右ポストを直撃した。
FC東京は攻撃に迫力が出ている。
「得点した後も、(前節、終了間際に同点に追いつかれた浦和レッズ戦のように)引きすぎなかった。勢いを変えず、プレーすることができた」(FC東京・東慶悟)
後半41分だった。東の縦パスをオリヴェイラがフリックし、交代出場のブラジル人FWジャエルが背中越しのパスを入れる。これをワンツーの形で走り込んだオリヴェイラが右足で浮かせ、GKの頭上を破った。
FC東京は2-1で逆転勝利を収めている。
率直に言って、チームとしては精彩を欠いていた。距離感が悪く、何度もパスカットされ、攻撃は不完全燃焼で、不用意なカウンターを浴びた。しかし、悪いながらも、交代カードを切った後は調子を取り戻し、勝利を飾っている。
「昨年までなら、勝ち切れていなかった」
東京の選手たちはそう洩らしていた。それは変化、成長と言えるだろう。昨シーズンは後半戦で下位チームとの勝負を取りこぼし、完全に失速していた。この日の勝ち点3は、飛躍の予兆か--。
FC東京は首位、サンフレッチェ広島と同勝ち点で並んだ。