「初めての世界選手権で、自分たちがどこまでできるかわかった」(フォース・北澤育恵)「長い大会で最終日まで残れたのは自信になる」(サード・松村千秋) カーリング女子日本代表の中部電力が、7年ぶりに世界選手権(デンマーク・シルケボー)に出場して…

「初めての世界選手権で、自分たちがどこまでできるかわかった」(フォース・北澤育恵)

「長い大会で最終日まで残れたのは自信になる」(サード・松村千秋)

 カーリング女子日本代表の中部電力が、7年ぶりに世界選手権(デンマーク・シルケボー)に出場して4位という好成績を残した。冒頭のコメントは、帰国した選手たちの第一声だ。選手たちは皆、疲労の色を少し見せながらも、それぞれ充実した表情で各々の思いを語ってくれた。

 2016年のスウィフトカレント(カナダ)大会で、ロコ・ソラーレが日本勢初の世界選手権でのメダル(銀)を獲得した。それに次ぐ今回の4位という結果は、2008年のバーノン(カナダ)大会でチーム青森が残した成績と同じだが、当時は参加12カ国だったことを思えば、今回のほうが躍進という印象が強い。快挙とまではいかなくとも、大健闘と言っていいだろう。



世界選手権で4位という好結果を出した中部電力。左から北澤育恵、中嶋星奈、松村千秋、石郷岡葉純

 氷上に立つ4人のうち3人、北澤とリードの石郷岡葉純、スキップの中嶋星奈にとっては、初の世界戦のアイスだった。それでも、フィフスの清水絵美が「本当にのびのびとプレーしていて、それが、この結果につながったのかなと思います」と、コーチボックスから後輩たちを称えたように、彼女たちは堂々としたプレーを見せ、大会を通してノープレッシャーでゲームに集中できていた。

 課題だったアイスリーディング(氷の状態を読むこと)も、比較的他国よりも早い段階からクリアになっていた印象だ。その結果、日本のチームにとっては慣れていない欧州の、しかも世界選手権という大舞台でも、トップ4という結果を出すことができた。

 もちろんそれは、なかなか結果が出ないなかでもチームを支えてきた会社の辛抱、両角友佑コーチの献身的なストーンチェック、そして日本選手権で全勝優勝したチームの自信、すべての要素がかみ合って実現したものだ。

 ただ、選手たちは冒頭で紹介したような手応えも得たが、必ずしも満足はしていない。

「(4位という結果は)うれしい反面、もう少し(自身の)ショット率が上がっていれば、もっと勝てたんじゃないかな、という気持ちもある。最後の韓国戦(3位決定戦)は、(持ち)時間もなくなってしまったので、スキップとしては時間の使い方も反省点」(中嶋)

「世界のリードは、ショットだけでなく、スイープもすごく強い。そのほか、細かいところも(優勝した)スイスなり、(準優勝の)スウェーデンなり、トップチームから学んでいければ……。そのためにも、(今大会の)映像、アーカイブや録画などもあると思うので、それを見直したい」(石郷岡)

「初めてアリーナリンクで試合をしたが、(アイスが)滑っていないところと、滑っているところの使い分けがうまくできていなかった。世界選手権で経験したものをしっかり学んで(吸収し)、次のアイスアリーナ(の試合)で生かしていきたい」(北澤)

 北澤が口にした「次のアイスアリーナ」とは、再び日本代表として戦う11月のパシフィック・アジア選手権だ。来年の世界選手権の予選でもあり、その世界選手権の結果は2022年北京五輪の出場枠にもかかわってくるため、非常に重要な大会となる。

「(来季は)忙しいシーズンになるので、体力をつけないといけない。それに伴って、筋力強化や陸トレ(陸上トレーニング)をもう1回、きちんとやっていかなければいけない」

 そう松村が語るように、来季からは世界4位の自覚と、日本代表としての責任が求められる。

 日本選手権で全勝優勝を飾り、世界選手権では各国代表と戦って互角以上のパフォーマンスを見せたが、その一方で、スウェーデンと韓国には連敗を喫している。ワールドツアーで比較すれば、18位(3月末現在)の中部電力は、7位のロコ・ソラーレ、13位の北海道銀行フォルティウスと、国内の2チームより下位ランクにあることも事実だ。

 この勢いは今季限りで終わってしまうのか、それとも今季の目覚ましい躍進をきっかけにして、世界のトップへと一気に上り詰めていくのか。すべては、本人たち次第だ。

 多少なりとも、プレッシャーは生まれるだろう。結果が出なければ、叩かれるかもしれない。それでも、日本代表としての責任を持ちながら、さらなる高みへのチャレンジを忘れることなく、今後も国内外での活躍が期待される。

 日本代表というのは、そういう存在であり、彼女たちはまずそれに慣れなくてはいけない。中部電力は、もはや「古豪」でも「ダークホース」でもなく、”JAPAN”のユニフォームに袖を通すチームなのだから。