写真:打浪優/撮影:ラリーズ編集部

Tリーグ、日本ペイントマレッツで活躍する女子大生Tリーガー打浪優。卓球を始めたのは小学校4年生からと、他の選手に比べて比較的遅いスタートだったが、瞬く間にその才能を開花した。奈良女子高校時代にはチームを全国ベスト8に導くなど輝かしい功績を収めた。

大学進学を前に進路に迷った打浪だが、晴れて卓球の道を選び、神戸松蔭女子学院大学へ。今回は、打浪がいよいよ大学生になってからの、本格的なキャリア形成の模様に迫る。

“初出場でベスト8入り” シンデレラストーリーが生んだ苦悩と葛藤

類まれなる才能を持った打浪だが、大学に入ってからの卓球人生に、大きな挫折や葛藤はあっただろうか。「挫折という程のものではないですが・・・」そう前置きする打浪。

「大学2年生の時に、はじめて全日本学生卓球選手権に出場して、ベスト8に入賞したんです。すごく嬉しかったですし、この試合がなかったら、私は今ここにいなかったと思います。この試合が、私のこれまでの卓球人生で一番大きな試合でした。さらに、そのあと初出場した全日本卓球選手権大会の一般の部では、シングルスでベスト32まで進むことが出来たんです。高校選抜で全国ベスト8になった青春時代と同じぐらい、卓球が楽しい時期ではありました。でも・・・あの頃とは違う苦しさがあったんです」

“全日本学生選手権に初出場してベスト8”という称号は、打浪の名前を瞬く間に世間に知らしめた。そうすると、自分の中の目標が高くなることはもちろんだが、対戦相手も同じく高い目標を掲げて向かってくる。名前を知られるような選手になったことで、自分のプレースタイルを相手に研究され、試合で思うような結果を残せず、自分の目標を超えられない日々が続いた。

「今までの選手人生で一番悩んだ時期でした」そんな苦悩の中で卓球と向き合っていた打浪に、大きなニュースが届いた。現在所属する日本ペイントマレッツ(以下ニッペM)からのオファーである。

実業団をイメージしていた それでも選んだ“プロリーガー”という道

選手を続けるならば実業団というイメージがあった打浪にとって、プロリーグは未知の世界。卓球以外のスポーツですら、プロよりも世界大会や実業団リーグなどに注目していた打浪にとって、自分がプロの世界にいる姿は、想像しづらかった。

「初めてその話をいただいたとき、プロリーグに対して知識がない事もあり、畏れ多くて私には無理だと思いました。でも、大学の先生やチームメイト、そして高校時代の恩師にも相談して、みんなが口を揃えて『挑戦してほしい』と背中を押してくれて。そういった後押しのおかげで、自分の中で少しずつプロ選手になりたい気持ちが芽生えてきました。これは後から聞いた話なのですが、私の親もオファーを聞いたとき、プロに進んでほしいと思っていたらしいです」

「周りの後押しがなかったらプロにはならなかった」と、どこまでも謙虚な姿勢を貫く打浪。ニッペMの三原監督からのオファーを貰ってから、実に半年以上の時間をかけてプロ転向を決めた打浪。それだけ時間をかけて出した答えなので、もちろんこの決断を打浪は「決めてよかった」と胸を張って答えていた。




写真:打浪優(日本ペイントマレッツ)/提供:T.LEAGUE

自分自身に対しても、自分と向き合ってくれる周囲に対しても、どこまでも実直で正直なキャラクターは、打浪がニッペMのチームメイトやファンから愛される要素のひとつだろう。

打浪にとって、Tリーグというプロの世界は、知らないことが多く不安もあるが、それ以上に刺激的で楽しい場所だった。恒常的にトレーニングが行える環境があることはもちろん、今の自分のコンディションに合わせた食事やトレーニングのアドバイスをマンツーマンで行ってもらえることに、打浪は衝撃を受けたという。

「トレーニングのサポートだけじゃなく、食事やメンタルのアドバイスを1対1でしてくれるトレーナーさんがいることに感動しました。そして『これがプロになるという事なのか』と改めて、自分がこの道で生きていくことを意識するきっかけにもなりました」

大学進学時から、将来は実業団でプレーするという目標のもと練習に励んできた打浪。結果として、プロという環境で卓球が出来るようになったことについて、「自分でもすごく驚いている」としみじみ振り返った。

『雲の上の存在』だった選手が目の前に

Tリーグには、打浪が卓球を始めた頃から目標としてきた選手が多数所属している。たとえば「石川選手は左ハンドで戦型も全く違いますけど、すごく憧れています」とその思いを口にした。石川をはじめ、憧れの選手と試合する場面ではどういった気持ちで挑むのだろうか。

「自分が対戦できるなんて、信じられないですよ。試合をしながら、一人のファンとして見てしまいますね」と嬉しそうに話す打浪。どこまでも素直で飾らない人柄が見え隠れする。

また、憧れの選手との試合が多いTリーグは、打浪の中にも変化を生んだ。これまでは雲の上の存在だと思っていた選手の試合を間近で観戦したり、直接対戦したりする中で、「自分にもできるのではないか」「自分だったらこう戦う」と考える場面が増えたのだ。

「自分の持っていないものを持つ選手は多い。だがそれは同時に、自分の持っている強みを見出すことにも繋がり、頑張れば互角に戦えるのではないかと思えるようになった」と打浪は分析する。

「以前は馮天薇(フォン・ティエンウェイ)選手と一緒に打つなんて考えられませんでした。ですが、彼女を間近で見ることのできる環境に身を置くと、強い選手でも波があることを知りましたし、『私と同じなんだ』と感じるようになり、格上選手との試合に自信がつきました」

以前は試合に負けると「もう卓球はやりたくない」と落胆してしまうことが多かったという打浪。だが今では自分の敗北にしっかりと向き合い、次に向け戦術を練ることが楽しみになっている。試合の結果をポジティブに捉えられるようになったのも、Tリーグの環境にいるおかげだと、打浪は語った。

Tリーグそして自身のチームへの感謝と愛着をたびたび口にする打浪は、Tリーグのファーストシーズンが終わったことをどのように受け止めているだろうか。来期を見据えた今後の目標についても、率直に言葉を紡いでくれた。(最終回に続く)

文:戸澤しおり(ラリーズ編集部)