メルボルンでの表彰台獲得に周囲が浮き足立つなか、レッドブル・ホンダ自身にまったくその気配はない。それどころか、これまで以上に気を引き締め直している。

 それというのも、3位になれた喜びよりも、トップとの差が与えた衝撃のほうが大きかったからだ。



バーレーンの予選・決勝は陽が沈んだ午後6時にスタートする

 開幕戦を終えてミルトンキーンズに戻る前に一度、日本に立ち寄ったホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはHRD Sakuraの様子をこう語る。

「表彰台に立てて『よかったね』という声もありましたけど、その一方で予選・決勝で自分たちのポジショニングが見えたことによって、『まだまだ』『もうひと踏ん張り』という雰囲気が漂っていました。(理由は)メルセデスAMGとのパフォーマンスの差ですね。

 フェラーリを抜いたことはいいことですが、メルボルンでたまたま彼らが苦しんでいたのかもしれませんし、今回の普通のサーキット(バーレーン)に来てどうなのかもわかりません。ひっくり返される時は、簡単にひっくり返されますから」

 レッドブル側も、車体の性能差が見えたことで安穏とはしていられない。

 昨年はパワーの不利を車体で補ってトップ争いに加わっていったが、パワフルになったとはいえ、ホンダのパワーユニットはまだ2強を追い越すところまではきていない。それに加えてライバルに劣る車体では、メルボルンで圧倒的な速さを見せたメルセデスAMGに敵うはずがない。

 マックス・フェルスタッペンはメルボルンをこう振り返る。

「僕らはテストの最終日に大きな妥協を強いられてしまったから、自分たちの実力がわからないまま開幕を迎えた。新型パーツを装着した状態で走って、最終的な確認が十分にできなかったからね。

 結果、メルボルンで僕らは(チームとして)2番手だった。メルセデスAMGの速さには少し驚かされたし、フェラーリにも逆の意味で驚いたね。もう一歩上に行くためには、さらなる努力が必要だ」

 メルボルンでフルプッシュしたRB15のフィーリングはよかったと、フェルスタッペンは言う。しかし、高速コーナーでは明らかに2強と比べて車速差があり、ダウンフォースレベルで劣っている。

 非力なルノー製パワーユニットに合わせて、ダウンフォースを減らしてでも空気抵抗を削って空力効率を追究するのが、これまでのレッドブルのマシン作りだった。だがパワー差が小さくなったことで、さらにダウンフォースを増していかなければならない。そのパワー差は、小さいながらも確実に存在する。重箱の隅を突くような接戦の中でトップを争う上では、こうした小さな差の積み重ねが効いてくる。

「今までと比べて、いいウインドウ(差)の中に入ることができているけど、まだ2強チームと同等レベルとは言わないよ。フェラーリを抜いたとはいえ、かなりトウ(スリップストリーム)に入っていたし、DRS(※)を使ってもいた。予選では全体的にパワーや最高速でまだ少し差があったし、彼らに追いつくためにはもっとハードワークが必要だ」(フェルスタッペン)

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 開幕の地メルボルンはアルバート・パークの周遊道路を使った半公道サーキットで、通常のサーキットとは比べものにならないほどバンピーでダスティ。さらに今年は風が強くてマシンが空力的に不安定になりやすく、コンクリートウォールに囲まれていることもあって、ドライバーたちはフルに攻めることが難しい場所だった。

 フェラーリは冷却面に苦しんでいたため、空力面やパワーユニットのモードで妥協を強いられたことがパフォーマンスを落とした原因ではないかと見られていた。だが、最高速が伸びている反面、特定の中速コーナーで苦しんでいる状況を考えれば、バンプや風の影響による空力的なセンシティブさのせいで本来の力を発揮できなかったのではないか……という見方のほうが、説得力がある。

 いずれの原因にせよ、バーレーンは通常のグランプリサーキットであり、路面はスムーズで風の影響もそれほど受けない。陽が沈んだ午後6時にスタートする予選・決勝では気温は下がり、冷却問題を抱えることもなさそうだ。

 だからこそ今週末のバーレーンGPでは、各チーム・各マシンの実力がメルボルン以上に正確に見えてくるはずだ。

 メルボルンではほとんど不可能だったオーバーテイクも、バーレーンでは多く見られるだろうと予想される。今年のDRS大型化に加えて、もともとオーバーテイクの容易なコースなうえにDRSゾーンが3箇所(メインストレート、ターン3~4、ターン10~11)に増やされたからだ。

 ホンダはメルボルンでのデータを分析して、さらにセッティング面の最適化を進めたパワーユニットをバーレーンに持ち込んできている。とはいえ、スペック1のポテンシャルはすでに十分に引き出せているため、使い方の面でそれほど大きな進歩があるわけではない。

 ただ、ホンダにとってバーレーンは、昨年トロロッソとともに4位を掴み取った場所。上位勢の脱落によるものだったとはいえ、中団グループのトップを快走し、ハースとのバトルを制しての4位であることもまた事実だ。

「オーストラリアは半公道サーキットですから、普通の路面のパーマネントサーキットであるバーレーンに来た時にどうか。バルセロナから一歩前進したメルボルン、そして普通のサーキットに戻ったバーレーンと、みんな同じようにステップを踏んできているので、ここでさらに自分たちのパフォーマンスレベルとライバルとの差が見えてきます」(ホンダ田辺テクニカルディレクター)

 今季のF1は新レギュレーションのもとで再出発しているだけに、各チームの伸びしろは大きい。その分だけ、開発競争は激しいものになる。パワーユニット面では2強が限界に近づきつつあるなか、ホンダはまだまだ伸びしろがある。フェルスタッペンはこう語る。

「オーストラリアは少し変わったサーキットだったので、バーレーンや中国ではもう少しクリアな勢力図が見えてくると思う。今後の勢力図は、どのチームがどれだけアップグレードを持ち込んでこられるかにかかっている。それは、車体とパワーユニットの両面でね」

 今週末のバーレーンでは、開幕戦以上に正確な勢力図が見えてくるはずだ。しかしそれは、あくまで現時点での勢力図に過ぎない。重要なのは、そこからいかに進歩し続けられるかだ。