福田正博 フットボール原論J1リーグが開幕してここまで4節が終了。今シーズンも混戦の様相を呈している。そんな序盤の戦…
福田正博 フットボール原論
J1リーグが開幕してここまで4節が終了。今シーズンも混戦の様相を呈している。そんな序盤の戦いで、気になったチーム、明暗の分かれた試合などを、福田正博氏が分析した。
J1リーグは開幕から第4節までが終わったが、今シーズンも混戦になりそうな気配が漂っている。18チームのうち、無敗は3勝1分けで首位に立つFC東京と、2勝2分けで4位のサンフレッチェ広島の2チームしかないからだ。
欧州リーグなら開幕直後に無敗のチームはもう少しあるものだが、これは各チームの実力が拮抗しているJリーグならではだろう。
そのなかで、リーグ2連覇中の川崎フロンターレは3分1敗で13位。川崎は優勝した過去2シーズンも開幕ダッシュに成功したわけではない。これから巻き返してくるはずだ。また、今季、開幕から突っ走るチームがないのは、川崎にとって追い風と言ってもいい。

リーグ戦でまだ勝利のない川崎フロンターレ
ここまでの4試合で勝利はないが、内容そのもののレベルは高い。パスをつないでポゼッションしながら相手を圧倒し、多くのチャンスを作り出せている。勝てなかったのが不思議なくらいだ。ゲームの主導権を握り、勝ち点3を積み重ねる力を持っているだけに、ひとつ勝ってキッカケをつかめば、出遅れを取り戻していくはずだ。
川崎が3連覇のかかるリーグ戦とACLの両方を勝ち抜くには、新戦力の台頭が欠かせない。成熟したコンビネーションで戦うスタイルだけに、新加入選手がすぐに適応するのが難しいチームであることは間違いないが、それでも昨年は、家長昭博や守田英正がフィットしたことでチーム力を伸ばした。
今季はそうした上積みとしての戦力が誰になるのかが、まだ見えてこない。昨年までのチームになかった強みを持つレアンドロ・ダミアンに期待していると思うが、現状はレアンドロ・ダミアンの良さを生かそうとすると、チームとして川崎が持っている良さを生かしきれなくなる状況と言えるだろう。
右サイドバックも気がかりなポジションだ。清水エスパルスに移籍したエウシーニョの抜けた穴を、マギーニョや馬渡和彰が埋めているが、まだまだエウシーニョの域には達していない。エウシーニョは賢くリスクをかけて右サイドの攻撃を活性化させたが、マギーニョも馬渡も、まだまだ噛み合っていない。ここの連係がスムーズになれば、さらに多くのチャンスを作りだせるようになっていくはずだ。
今季のJ1が面白いのは、ボールを保持して主導権を握るスタイルのチームが増えていることだ。川崎をはじめ、名古屋グランパス、横浜F・マリノス、コンサドーレ札幌、ヴィッセル神戸、大分トリニータなどが、ポゼッションとパスワークを武器に勝ち点3を狙うサッカーをしている。堅守速攻のチームとの対比が明確になることで、その面白さがより伝わりやすくなったと言える。
そのなかで、J2から昇格してきた大分が、3勝1敗の開幕ダッシュを決めた。アウェーでの開幕戦で鹿島アントラーズを破って勢いに乗ったが、4年前まではアマチュアだった29歳の遅咲きストライカーの藤本憲明が4戦5得点と快進撃の象徴になっている。
昨年J2で最多得点の攻撃力はJ1でも通用すると思っていたが、守備は不安を残していた。しかし、得点力をそのままに、守備をきっちり改善してきた。昨年のメンバーから半分が入れ替わったチームに、戦術をうまく落とし込んだ片野坂知宏監督の手腕は見事としか言いようがない。長いシーズンで負けが込む時期もあるかもしれないが、上位に食らいつきながら、リーグをかき回していってもらいたい。
今シーズン最大の注目クラブである神戸は、2勝1分1敗とまずますのスタートを切った。昨年末にダビド・ビジャの加入は決まっていたが、CBや中盤の戦力が足りていないとなれば、素早く補強した。CBにダンクレーを獲得した時点で、普通なら補強は終わりそうなものだが、手を緩めないのが神戸のすごさだ。セルジ・サンペールの獲得は、彼らの掲げる「バルサ化」への本気度の表れ。さらに「あの選手が加われば」「このポジションにあの選手が入れば」という想像を駆り立ててくれるチームになった。
神戸にとってダンクレーの獲得は大きい。守備だけではなく、縦パスを前線に入れる技術と判断力は、攻撃的なサッカーをするチームには欠かせないもの。当然、対戦相手もそこは研究してくるため、もうひとりのCB大崎玲央が狙われることになるが、それだけに彼の成長は必要不可欠になってくる。
これは大崎に限ったことではない。ビジャ、アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキー、サンペール、ダンクレーの5選手がいるとはいえ、神戸の上位進出には日本人選手の成長は欠かせない。これから暑さの厳しい夏があり、故障の可能性もある。外国人選手が出場できない時に、代わりに出る日本人選手がどこまでやれるかがポイントになってくる。
今シーズンは、神戸の躍進がJリーグ全体の観客動員面でも重要なものになる。昨年の神戸は前年比で約6万人も増えたが、これはイニエスタ加入後の半年間の数値。しかもイニエスタ効果は神戸だけにとどまらなかった。
たとえば、昨季の浦和レッズはホームの観客動員が年間17試合で約3万4千人増えた。数字だけを見れば1試合あたり2000人の増員だが、実際はヴィッセル神戸戦で約2万5千人増。残りの約9千人の増員もフェルナンド・トーレスの加入したサガン鳥栖戦だった。元スペイン代表の2選手がいなければ、浦和の観客動員は前年より減っていた可能性もあったのだ。
ビジャやダンクレー、サンペールという心強い味方を得たイニエスタが能力を存分に発揮しながら、神戸が優勝争いを繰り広げれば、彼らが出場する試合は、アウェーでもホームでもスタンドが満員になるはずだ。神戸がきっかけになって新たにスタジアムへ足を運ぶ人たちを増やしながら、Jリーグがさらに活性化し、その注目度が高くなっていくことに期待したい。