今年2月に2019年シーズンが開幕したJリーグは、まだJ1は第4節、J2は第5節、J3は第3節が終わったばかりだが…
今年2月に2019年シーズンが開幕したJリーグは、まだJ1は第4節、J2は第5節、J3は第3節が終わったばかりだが、早くも指揮官の首をすげ替えるクラブが現れた。
今季最初の監督解任劇の舞台となったのは、ジェフユナイテッド千葉。J2第4節終了時点で、2敗2分けの勝ち点2で21位に沈んでいた千葉は、監督就任3年目を迎えたばかりのフアン・エスナイデル前監督に見切りをつけ、江尻篤彦コーチを新監督に昇格させた。

早くも解任されたフアン・エスナイデル監督
エスナイデル前監督は、就任1年目の一昨季、無謀と紙一重の積極果敢な戦術を採用し、ちょっとした注目を集めた。
その戦術とは、「ハイプレス・ハイライン」。DFラインをかなり高く設定し、コンパクトな布陣を保ちながら、前線から相手にプレッシャーをかける戦い方だ。
敵陣で次々と千葉の選手が相手ボールに襲い掛かり、それに合わせてDFラインもどんどん高くなっていく。ときにピッチ上の選手全員が、ハーフウェーラインを挟んで数メートル程度の範囲に収まっているのではないかと思うほど、戦術は徹底されており、あまりに高い位置まで押し上げられるDFラインに、スタンドがどよめくこともしばしばだった。
高い位置から人数をかけてボールを奪いにいく積極的な守備は、同時に、より相手ゴールに近い位置から攻撃を始められることも意味していた。ハイプレスでボールを奪ってショートカウンター。エスナイデル監督が用いた戦術は、相手の攻撃から自由を奪うばかりでなく、ハマれば自らの爆発的な攻撃力を生み出した。
あまりに極端な戦術ゆえ、それがチームに浸透するまで時間を要したが、シーズン終盤は怒涛の7連勝。最終節でJ1昇格プレーオフ進出の最後のイス(6位)に滑り込んだ。結局、プレーオフで敗れ、J1昇格はならなかったものの、翌シーズンへの期待が高まる締めくくりとなった。
ところが、エスナイデル前監督の2年目となった昨季、事は期待どおりには進まなかった。
極端に高い位置からプレッシャーをかける戦術は、DFラインの背後に広大なスペースを生み出す危険と背中合わせ。対戦相手の千葉に対する研究が進むと、ハイプレス・ハイラインは、メリットよりもデメリットのほうが目立つようになっていった。
昨季の千葉は、リーグ2位の総得点72を記録する一方で、総失点72はJ3降格クラブに匹敵するワースト2位タイ。シーズン途中、従来の戦術を捨て、引いて守備を固めるなどの”応急手当”も施したものの、成績の大きな改善にはつながらず、最終順位はクラブ史上ワーストの14位に終わっている。
当然、昨季終了時点で監督を代える選択もあり得た。いや、今となっては、そうすべきだった、と言えるのかもしれない。
日本リーグ時代からの名門チームにして、Jリーグの「オリジナル10」に名を連ねた古参クラブは、しかし、続投を選択。エスナイデル前監督に指揮権を託したが、すでに”賞味期限切れ”の感は否めなかった。
リスクと背中合わせゆえ、見る者を引きつけた積極策はすっかり影を潜め、至って当たり前の戦い方に収まってしまったにもかかわらず、結果はついてこない。加えて、当たり前の範囲内で自分たちの戦い方を模索するも、それが定まることはなく、フォーメションひとつを取っても右往左往。結果、わずか4試合での監督交代となった。
傷が浅いうちに早めの決断を下したと言えば聞こえはいいが、一度は続投を決めながら、シーズン序盤にこの有様では、クラブの失策と言われても仕方があるまい。
江尻新監督の初戦となったJ2第5節の京都サンガ戦も、1-1の引き分け。J2で唯一勝ち星がない千葉は、順位もひとつ落として、ついに最下位転落である。もはや2009年以来遠ざかっているJ1への復帰はおろか、J3降格さえちらつく状況にある。
江尻新監督は、「(監督が代わってから)1週間、正確には4日間くらいの準備」しかないなか、「結果が出ないと、ネガティブな気持ちに陥りやすい」と、選手のメンタル面に働きかけることに注力したという。
だからこそ新指揮官は、前半に先制を許しながら焦れずに攻め続け、優勢に試合を進めた後半に追いついた引き分けを、「ポジティブに捉えて、次に勝ち点3を取れるようにしたい」と語る。
たしかに、千葉が後半に見せた連続攻撃には迫力があったし、76分に同点に追いついたあとの試合展開を考えれば、勝ち越していても不思議はなかった。ベテランのMF佐藤勇人もまた、「勝てなかったが、これを続けていけば、自分たちの方向性というか、自分たちの怖さを出して、勝ち点を取っていけるのではないか」と、手応えを口にする。
だが、シーズン途中の監督解任とは、いわば、ショック療法。期待されるのは、長い目で見た強化よりも、結果に対する即効性だ。
荒療治は選手たちの危機感をあおり、やる気を高める効果が期待できる一方で、監督が代わってもなお、思うような結果が得られなければ、やっぱりダメかという、さらなる沈滞ムードを引き起こしかねない。
それだけに、今の千葉に必要なのは、内容よりも結果。すなわち、勝ち点3を手にすることである。
1993年のJリーグ誕生から四半世紀以上が経ち、オリジナル10のうち、J2降格経験がないクラブは、鹿島アントラーズと横浜F・マリノスだけになった。栄枯盛衰は当然のこととはいえ、オリジナル10のなかで、まだJ3に降格したクラブはひとつもない。
Jリーグ史に不名誉な記録を残してしまうのか否か。危機的状況にある千葉にとっては、これからの数試合にクラブの未来がかかっていると言っても過言ではあるまい。