ヤクルトの春季キャンプ中(沖縄・浦添市)、青木宣親(37歳)、雄平(34歳)、ウラディミール・バレンティン(34歳…

 ヤクルトの春季キャンプ中(沖縄・浦添市)、青木宣親(37歳)、雄平(34歳)、ウラディミール・バレンティン(34歳)、坂口智隆(34歳)は”ランチ特打組”として毎日を過ごした。午前中の守備、走塁などの全体練習が終わると、野手陣はランチ休憩の時間となるのだが、4人はメイン球場でのバッティング練習で汗を流した。そして午後からのチーム全体練習が始まれば、室内練習場へ移動して、今度はマシンを相手にバットを振り込んだ。

「このキャンプで、僕はほとんど彼らの練習を見ていません」

 小川淳司監督の言葉からは4人への信頼の厚さが伝わり、オープン戦終盤にきっちり仕上げてきた姿を見れば、頼もしさは増すばかりだ。4人の練習風景は、まさに「成熟した」という言葉がピッタリで、個人でバットを振り込むほかに、バッティング談義に花を咲かせていた。



チームの精神的支柱でもある青木宣親

 宮出隆自打撃コーチは”ランチ特打”の意図について、こう説明してくれた。

「青木、雄平、坂口は放っておいても練習しますからね。むしろ、やりすぎることもあるほど。ベテランですし、実績も十分なので自主性に任せられるということですよね。実際、責任感を持ってやってくれていますし、バレンティンも『3人がやるならオレもやる』といった感じで、相乗効果というか、僕にはそう見えました。コーチとしては、あとはケガをせずに開幕に合わせてくれればいいと」

 開幕を目前に控えた4人のベテランたちは、準備万端といったところだ。

 坂口は「ひとりで黙々と考えながら練習できる時間をいただけたのは、すごく大切な時間でした」と、今回のキャンプを振り返った。

「自分のやりたいことをしっかりすることができました。数もこなせたので『やっておけばよかった』という思いがなく、オープン戦の成績とかは関係なく、ここまで順調にくることができました」

 昨年、チームはシーズン途中から1番・坂口、2番・青木の打順を固定。彼らの熟練したバッティングは、打線に安定感をもたらした。

「打順が何番だろうと、自分の役割は変わらないです。打率も出塁率もそうですが、凡打のなかにでもチームに貢献できることはあります。そこを意識しながら次の打者につなげていきたい。そこは一貫しています」(坂口)

 青木に現時点での状態を聞くと、「すごく順調で不安はないです」と力強い答えが返ってきた。昨シーズンは打撃だけでなく、精神的支柱としてチームの躍進に貢献。ここまでのチームについても聞いてみた。

「オープン戦を消化しながら見えてきたことはありますが、『こんなことをやらなければ』というのは、まだないですよね。とはいっても、シーズンに入れば浮き沈みはどうしてもあるのですが、今はみんなが自信を持ってできていることがいいですよね」

 雄平は「去年まではメイン(全体練習)のところでの練習だったんですけど、今年は急に『はい、どうぞ』ってなっちゃって」と笑った。

「ランチ特打に入れてもらって、時間を有効に使うことができたのでよかったです。メインで動いている人たちに負けないくらいの気持ちで毎日練習してきましたし、僕のほうが多く振っている日は絶対にありました。メインはローテーションで回っているので、どうしても空き時間ができてしまうのですが、僕はノンストップで打つこともありました。もちろん、そこで勝負しているわけじゃないんですけど(笑)」

 実際、雄平は相当数バットを振り込んだ。ランチ特打では、終了時間なのにもかかわらず「ギリギリまでいきましょう」と粘り、宮出コーチから「大人になりなさい」とたしなめられるシーンもあった。また夜間練習では、室内練習場に来た石井琢朗打撃コーチがマシンを相手に打ち込む雄平を見つけ、「おい、雄平! まだやってたんか」と呆れられていた。

 その雄平は開幕を前に、次のように語った。

「目指すのはもちろんキャリアハイですが、数字の上限は決めずにやっていこうと。いつもならこのあたりでフォームに迷いが出るのですが、今年はそれがないんです。まだ打ち損じが多く、とくに甘い球の結果がよくない。打ちたい、打ちたいという気持ちが出すぎているので、それをコントロールできれば、自然と長打が増えると思いますし、成績はもっとよくなるはずです」

 そう雄平が力強く答えていると、練習を終えたバレンティンが「雄平、いま絶好調です。打率4割です」と日本語で声をかけてきた。

 後日、バレンティンに今シーズンの意気込みについて話を聞くことができた。バレンティンは今回のキャンプ、オープン戦の試合前練習で「ゲンキダシテ」と声を出し、小川監督やコーチ陣、選手たちに積極的に話しかけにいく姿が印象的だった。

「チームは家族です。そういう意味で、野球だけではなく日常の会話をすることで雰囲気もよくなるんじゃないかと……。オープン戦の成績はあまりよくありませんが、チームはシーズンに向けていい準備ができていると思います。僕自身は個人的な目標はありませんが、昨年以上の成績を残すことで、それがチームを助けることになるし、リーグ優勝にもつながると思っています。キャリアを重ねているので、個人タイトルよりもみんなで優勝を勝ち取りたい」

 ヤクルトの上位打線は、この4人に山田哲人が加わり、小川監督は「1番から5番は変えようがありません」というほど超強力である。

「あとは下位打線の頑張りですよね。打つ、打たないではなく、出塁するということを重視してほしい。下位打線が機能すれば、とんでもなく点が取れる可能性がありますからね。さらに言うと、下位で走れる選手がいてくれるともっと大きいんですけど……。そういうことを含めて、僕たちも知恵を絞らなければいけないと思っています」(宮出コーチ)

 チームには廣岡大志、村上宗隆、塩見泰隆といった若手に”躍進”の予感が漂い、ベテラン4人にとっても刺激になるはずだ。坂口は言う。

「それはプロに入った時から、野球を始めた時から競争は続いていますからね。そこに左右されず、自分のことをまずはしっかりという気持ちでやっています」

 頼りになるベテランと勢いのある若手がうまく融合すれば……ヤクルト打線はどんな破壊力を見せてくれるのか。その期待感の大きさは計り知れない。