マイアミでの初戦敗退は18歳以来となった錦織圭 まさに”マイアミショック”と言えるような敗退となった。 第5シードの錦織圭(ATPランキング6位/3月18日づけ以下同)が、マスターズ1000(以下MS)・マイアミ大会の初戦となる2回戦で、ド…



マイアミでの初戦敗退は18歳以来となった錦織圭

 まさに”マイアミショック”と言えるような敗退となった。

 第5シードの錦織圭(ATPランキング6位/3月18日づけ以下同)が、マスターズ1000(以下MS)・マイアミ大会の初戦となる2回戦で、ドゥサン・ラヨビッチ(44位、セルビア)に、2-6、6-2、6-3で、まさかの逆転負けを喫して早々にマイアミを去ることになった。マイアミ大会の初戦で負けるのは、18歳で初出場して1回戦で負けた2008年大会以来だ(※2011年大会も2回戦敗退だったが、ノーシードだったため1回戦は勝利していた)。

 また、ツアーレベルでの初戦負けは、2018年8月のMS・カナダ大会以来となる。

 これまでラヨビッチとの対戦成績は錦織の2勝0敗で、今回の2回戦では、錦織が第1セット第5ゲームから4ゲームを連取してセットを先取した。

 だが、錦織のテニスの調子は上向かず、第2セット第3ゲームでサービスブレークをラヨビッチに初めて許してから、試合の主導権は徐々にラヨビッチへ移っていった。ラヨビッチは、がまん強くディフェンスをして、錦織が有利だと見られていたラリー戦でもポイントを奪う場面が多く見られた。

「自分のプレーを最後もうひとつ上げていけなかった。大事なところでミスが出たり、取りきれないところが、やっぱり試合の勝敗に関わったと思います」

 しきりに錦織は、テニス自体の調子は悪くないと主張した。

「感覚はよかったです。なかなか100点のプレーは、この風の中ではできなかったですけど、先週(インディアンウエルズ)よりはだいぶボールは飛んでいましたし、しっかり(ボールに回転がかかって)落ちてくれていた。全然テニスは悪くなかったですね」

 気がかりなのは、ATPドバイ大会(2回戦敗退)、MS・インディアンウエルズ大会(3回戦敗退)に続く今回の大会序盤での早期敗退だ。

 ドバイとインディアンウエルズで続けてフベルト・フルカチュ(54位、ポーランド)に負けた時は、22歳の若手選手には失うものがなく、その勢いに錦織が押されたという見方もできた。

 だが、マイアミでの2回戦では、ラヨビッチの調子が格段よかったわけではなく、どちらかと言えば錦織のひとり相撲だった。

 まず、「サーブがもうちょっと入っていれば、また展開は変わっていたと思います」と、敗因には錦織が振り返ったサービスゲームの出来の悪さが挙げられる。

 錦織の第1セットのファーストサーブの確率は56%と低かったものの、ファーストサーブでのポイント獲得率は79%を維持できた。第2セットのファーストサーブの確率は52%で、ファーストサーブでのポイント獲得率が42%に落ち、リターンからラヨビッチは、錦織にプレッシャーをかけていた。今、多くの対戦相手が、錦織の甘いサーブを見逃さずに、リターンから強打して攻撃することを試みている。

 そして、ファイナルセットのファーストサーブの確率は70%に回復したものの、ファーストサーブでのポイント獲得率は58%に留まり、錦織のプレーの回復の起点には成り得なかった。

 さらに、錦織の武器のひとつである細かく素早いフットワークが影を潜め、初動が鈍いためポジションに入るのが1~2歩遅れ、グランドストロークでのミスが早かった。特に、一番の武器であるはずのフォアハンドストロークは、下半身のパワーを十分に生かしきれず、上半身だけの鈍いスィングになって、錦織らしからぬミスが多発した。錦織は、風の影響を指摘したが、そこまで強風ではなかったし、条件はラヨビッチも同じだった。

 錦織のプレーには躍動感が見られず、覇気もないまま、翼をもがれた鳥のようなプレーに終始した。

 正直に言えば、これほど悪いプレーの錦織をマイアミで見たのは初めてだ。これは、プロテニスプレーヤーなら誰もが通る道でもある、年齢を重ねる中で、徐々に実力が落ちていく過程なのだろうか。

 29歳の錦織がその過程に足を踏み入れたという判断を下すのには時期尚早で、もっと時間をかけて彼のプレーを見守らなければならない。約11カ月のツアーを毎年戦う中で、調子の悪い時は必ずあるからだ。

 プロ選手なら、何かしらポジティブなものを大会から持ち帰りたいと思うのは当然で、基本的に前向きな錦織は、なおのことその傾向は強い。ましてや年齢からくる力の衰えだとしたら、負けず嫌いな錦織は自分自身では認めたくないだろう。

 だが、ここはテニスの調子が良いはずだと意固地になり過ぎずに、コーチたちときっちり話し合って練習を重ねながら、4月から始まるヨーロッパでのクレーシーズンに向けて、軌道修正をすべきではないだろうか。

「やっていくしかないと思います。なかなか、ずっと調子を100%というのは難しいので、まぁ、珍しい2大会(インディアンウエルズとマイアミでの大会序盤敗退)ではありましたけど、これを反省して、次に向けてプラスにしていければなと思います」

 錦織の次戦は、4月中旬のMS・モンテカルロ大会。昨年は、右手首のけがの復活の狼煙となるような準優勝を成し遂げたため、ランキングポイント600点のディフェンドをしていかなければならない。

「気持ちの面だったり、自信をつけてクレーコートシーズンに臨めれば。しっかり練習期間もあるので、まぁ大丈夫だと思います」

 ポジティブな姿勢を保とうとする錦織の言葉を信じたいところだが、トップ5に返り咲く目標を達成するには今がまさに正念場で、ここをどう乗り越えるかによって、今後の錦織のキャリアにも影響を及ぼしていくかもしれない。