軽井沢アイスパークで行なわれた第12回 全農 日本ミックスダブルスカーリング選手権は、藤澤五月と山口剛史ペアの「藤澤山口」が連覇を遂げて幕を閉じた。

「ひとつでも多く試合ができるようにがんばりたい」

 開幕前にそう抱負を語った藤澤は、プレーオフ進出が決まった際に「対戦したいペアは?」と記者から質問されたときも、「すべてのチームとやりたいくらいです」と応じた。その言葉どおり、「藤澤山口」はゲームを経るごと、エンドを消化するごとに、さまざまな技術や戦術を吸収していくかのような戦いぶりで全勝優勝を飾った。



ミックスダブルス日本選手権で連覇を果たした藤澤五月(右)と山口剛史ペア

 カーリングは通常、ひとり2投、4人で8投を投じて1エンドが構成される。しかしこのミックスダブルスでは、2人で5つのストーンを分担して投げて行なわれる(※)。
※最初のストーンを投げるプレーヤーが、そのエンドの最後のストーンも投げなければならない。そして、もうひとりのプレーヤーが2~4投目のストーンを担当する。最初のストーンを投げるプレーヤーは、エンドが終了すれば、交代可能。

 4人制に比べて、手元に限られた石しかないため、小さなミスがより致命傷となり、スリルに満ちたエンドになることが多い。スイーパーも少なく、アイスの状態をジャッジする目が必要になる。

 まずは経験が重視される種目なので、4人制では国内トップレベルにある面々であっても、そう簡単に対応できるものではない。今回、JCA(日本カーリング委員会)強化部による強化委員会推薦枠で初めて出場した小谷優奈&荻原功暉ペアの「小谷・荻原」や石垣真央&神田順平ペアの「石垣・神田」らは、予選リーグで敗退した。

「小谷・荻原」の荻原が「(ミックスダブルス)独特の石の積み方、配置になるので、ドローを(ハウス)中央に正確に置けないと勝負にならない」と言えば、「石垣・神田」の神田は「どこで勝負を仕掛けるのかつかめないうちに、どんどんゲームが進行していく。ハウス内の状況が悪くなってしまうと、取り返しがつかない」と、ともにミックスダブルス特有のゲーム性への戸惑いを隠せず、経験不足を嘆いた。

 ただ、彼らの予選リーグ敗退の要因を、経験と研究不足だけに断定することはできない。

 前年度の優勝枠、そして推薦枠以外、つまり地方予選から勝ち抜いてきたペアでプレーオフに進んだチームは、荻原が指摘した「中央に置くドロー」を丁寧にハウス内に送り込み続けた。

 地元・中部ブロック代表の、「クレイポルド」の傳美砂子&傳直文ペア、「オリオン機械」の堀内珠実&冨安岳人ペア、「チーム柳澤」の柳澤実知&小泉聡ペアをはじめ、「妹背牛協会」の三浦好子&似里浩志ペア(北海道ブロック)や、リスクを減らすゲームメイクをしながらもキーショットをしっかり決めて4位と躍進した「藤澤・小野寺」の藤澤汐里&小野寺浩太ペア(関東ブロック)は、正確かつ安定したショットを見せ、地方代表かつミックスダブルスのトップチームとしての矜持をそれぞれ示した。

 その地方代表組については、3位となった「札幌国際大学」の吉村紗也香も、「私たちがなかなか入れない場所にしっかり(ストーンを)置いてくる」と賞賛を惜しまなかった。

 一方で、地方代表組も、前年度優勝枠や推薦枠のペアと同じアイスに乗ることで大いに刺激を受けたようだ。優勝した「藤澤山口」と、準優勝の「鈴木・平田」の鈴木夕湖&平田洸介ペア、両チームと対戦した「クレイポルド」の傳直文はこう語る。

「とにかく技術が高い。少しでも危ないスペースを作ってしまうと、すかさずそこに入ってくる。ミックスダブルスは細かいミスが出ると、複数失点につながってしまう怖さがあるんですが、短い期間でそれを理解しているのでしょう。また、リリースの際に『ちょっと体が外に出ていたよ』とか、細かな部分まで伝え合っているのも印象的でした」

「妹背牛協会」の似里も、「彼らに技術と経験がある前提で、ですけど」と前置したうえで、傳と同様に「難しいショット、僕たちが思いつかない作戦をしてくるのは、勉強になりました」と優勝枠や推薦枠ペアに賛辞を送り、彼らの強さについてそう語った。

 結果的に、強化委員会推薦チームらが手を焼いたミックスダブルスの生命線となる「ハウス中央へのドロー」と、反対にミックスダブルス専門ペアが舌を巻いた”幅広いショットと高い技術”と、このふたつをうまく融合していたのが、頂点に立った「藤澤山口」だった。

 準優勝に終わった「鈴木・平田」の鈴木は決勝後、ロコ・ソラーレのチームメイトである藤澤について、手放しで称えた。

「作戦面、アングルの作り方がとくにすごかった。あらためてサッちゃん(藤澤)はいい選手なんだな、と思いました」

 そして藤澤は、「苦しい戦いも多かったけれど、その分、成長できたかなと思います」と語った。その言葉どおり、昨年の大会で8試合、その後の世界選手権で11試合、そして今大会の9試合――すべての経験を無駄にせず、貪欲にチームの血肉に変えられたことが、今回の結果につながったのだろう。

「藤澤山口」はこのあと、4月20日からノルウェー・スタヴァンゲルで開幕する世界選手権に日本代表として出場する。初出場ながら5位という好成績を残した昨年以上の結果が期待される。

「昨年、山口さんと『トップ8はそこまで力の差はないね』って話をしたんです。(そこから上に行くには)私たちはもっと経験を積まなければいけなかった。今年は昨年よりもいい成績を残したいと思います」(藤澤)

「(昨年も)メダルへの手応えは、正直ありました。もう一度、自分たちの力を試したい」(山口)

 確実にレベルアップした日本選手権において、全チームが彼らに与えた新たな経験を財産として、「藤澤山口」が再び世界に挑む。藤澤がいつも口にする「ひとつでも多くの試合を……」を目指し、それを実現できれば、世界のトップも見えてくるはずだ。