フィギュアスケート世界選手権が20日、さいたまスーパーアリーナで開幕した。初日の女子ショートプログラム(SP)では、最終グループに登場した日本の坂本花織とロシアのアリーナ・ザギトワがトップ争いを演じ、首位の座は最終滑走者のザギトワが自己ベストを更新する合計82.08点でさらった。会心の演技をした坂本も、自己最高の合計76.86点をマークして、首位と5.22点差の2位発進と好スタートを切った。



自己最高点をマークして世界選手権SP2位につけた坂本花織

「今日のショートは、点数で前の自分に勝てたので満足しています。フリーでも自分に勝てるように体調と気持ちを維持して臨みたいです。いままでなら、ショート後は『あそこもここもダメだった』と思うんですけど、初めての世界選手権でしたが、やりきった感じがするので楽しかったです」(坂本)

 試合後にそう振り返った坂本は、最終グループの1番滑走だった。世界選手権初出場ながらも舞い上がることなく、ほどよい緊張感を見事にコントロールしてみせ、『フロム・マイ・ファースト・モーメント』の曲に乗ってノーミス演技を披露した。

 プログラム冒頭に跳ぶ3回転フリップ+3回転トーループの連続ジャンプで、持ち味の高さと幅のある鮮やかなジャンプを決めると波に乗った。しっかりと音に合わせた振り付けと、ジャンプの着氷が相まって演技に引き込み、ほかのジャンプも出来栄え点で加点が多くつく申し分ない出来だった。

 3つのジャンプの出来栄え点だけで、連続ジャンプが2.12点、2回転アクセルが1.27点、3回転ループで2.38点と計5.77点を得るなど、高い評価を得ることができた。審判も減点をつける余地がないほど、その演技はクリーンさが際立っていたと言えるだろう。

 シニアデビューシーズンだった昨季は、シーズンを疾走して階段を駆け上り、五輪代表にまでなった。2年目の今季は、北京五輪に向けて、自分の立ち位置を確実にするための大事なシーズンとなる。初出場となる大舞台で結果を残さなければ今後につながらないことは、坂本自身が一番わかっているはずだ。だからこそ、平昌五輪前よりも練習の質、量をともに増やして、とことん取り組んできた。

「五輪前は朝練1時間だけでしたが、今回は朝練を2時間半に増やして、クラブの貸し切りの夜練習と、一般営業の貸し切りではスピン練習をやったりしましたし、トレーニングも取り入れました。ブノワ(・リショー)先生(フリーの振付師)とは1日8時間くらいの練習をやってきました」

 自信がつくまで練習を徹底する坂本が、試合本番で大きな失敗をほとんどしないのは誰もが知るところだ。

 ただ、勝負に勝つためには、フリーでもしっかりノーミス演技を揃えなければならない。フリーが悪ければ、表彰台のチャンスを逃しかねない。先行逃げ切り型の戦い方をしてきた坂本は、こんな抱負を口にした。

「世界の頂点を目指しているけど、いまはフリーでノーミスをするだけだと思っていますし、気持ちも前向きに捉えているつもりです」

 ノーミス演技で好発進した坂本と対照的に、ハイリスクハイリターンの大技トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を武器に持つ紀平梨花は、NHK杯、四大陸選手権と同様にトリプルアクセルで失敗。合計70.90点と得点が伸びずに7位と出遅れた。

 演技直後の紀平は、顔をゆがめて悔しそうな表情を見せた。

「いつもだったら集中しすぎると緊張に変わったりするんですけど、緊張はあまりなかったです。この大会は『本当に強気で絶対やる』という気持ちを持ちながらやっていたので、その気持ちはよかったなと思いました。とにかく、(失敗した)トリプルアクセルの感覚をもっと作らないと、ショートで決めるのは大変というか、自分(の感覚)ができていないと思ったので、もっともっと感覚を作ることが大事になるとわかりました」(紀平)

 SP、フリーで計3本のトリプルアクセルを跳ぶことは、紀平にとってもまだ簡単なことではない。感覚で跳ぶよりも頭で考えて跳ぶタイプだが、それでも、試合ごとに会場が変わり、リンクが変わるなかで、他のジャンプ以上に微調整が必要なトリプルアクセルを試合本番に合わせていくことは、至難の業のようだ。

「心が完璧でも、自分の感覚が合っていないとダメなので、今回のリンクに合わせたアクセルの跳び方を一番いいジャンプとして自分の頭に描きつけないと、ショートのトリプルアクセルのようにああいうズレが起こってしまう。もうあとは(フリーまでに)アクセルをたくさん跳ぶしかないと思っています。

 もっと何も考えなくても、どんな状態でも跳べる感覚にしていかないといけなかったなという後悔があって、本当に反省するしかないです。フリーは全部の実力を出せるように、今回の演技でダメだったところを挙げていって、克服して、フリーに臨むことが絶対大事だなと思いました。

 とにかく感覚を合わせて、緊張感を保って強気でフリーに挑みたい。フリー前の朝練習はメインリンクでできると思うので、そこでたくさん跳ぶしかないと思います」

 今季はSPで出遅れても、フリーでトリプルアクセルを跳んで逆転するなど、国際大会6戦負けなしの驚異的な成績を残している紀平だが、今回はかなり厳しい状況に追い込まれている。

 NHK杯、四大陸選手権もSP5位からの逆転優勝だったが、首位との最大差はNHK杯時の6.58点差だった。それが今回は、首位ザギトワとの差が11.18点もある。しかも今大会のザギトワは、一時期の不振から脱却したのか、安定感ある滑りを見せ、SPは80点台をマークする会心の演技だった。フリーで大崩れする可能性は低いだろう。

「いままで逆転ができたのは、しっかりとSPの失敗を修正してフリーに臨んで結果が出せたからなので、フリーに向けた練習で、悪かったところを全部克服できるように集中していきたいです。とにかくやるしかない気持ちです」

 果たして大逆転はあるのか。紀平の並外れた適応能力に期待したいところだ。