「(開幕前の)キャンプで試合したときから、”裏を狙って”という戦い方はハマっていた」 FC東…
「(開幕前の)キャンプで試合したときから、”裏を狙って”という戦い方はハマっていた」
FC東京の選手はそう洩らしている。
2月に行なわれたトレーニングマッチ、FC東京は名古屋グランパスを9-3という派手なスコアで下していた。元ブラジル代表FWジョーを中心にした得点力を誇る相手に、守備のスキを突く形のカウンター戦術が的中。チーム作りの段階とは言え、プレーモデルは変わらない。
<裏狙い>
その戦術が、この日も奏功した。

名古屋グランパス戦でも右サイドで攻撃を牽引した久保建英(FC東京)
3月17日、味の素スタジアム。J1リーグ2位のFC東京は1位の名古屋を迎え、”首位攻防”にしのぎを削っている。まだ第4節で、何かが決するわけではない。しかし首位争いはいつだって、潮目のひとつになる。
FC東京は昨シーズンと同じく、プレッシング&リトリートという守備戦術を併用。走力のある永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラが前から激しく追い、回避されたら下がってブロックを作る。橋本拳人、高萩洋次郎が守備のフィルターとなって、サイドは攻め口を閉じ、森重真人、チャン・ヒョンスのセンターバックが強固な守りを仕上げる。そして相手ボールを引っかけ、裏のスペースに素早く蹴り出し、再び前線の走力を生かすのだ。
名古屋戦は、その”色”が濃厚に出た。
「前半は、思いどおりいかないところでも、自分たちで(ボールをつないで)リズムを作って、まだ一本のパスで解決しようというのはあるが、成長を感じた試合だった。これからもっとうまくなっていく」(名古屋・風間八宏監督)
名古屋は対照的に、ボールプレーの練度の高さを感じさせた。ディフェンスラインが高い位置をキープすることによって、リスクをかけながら攻撃の枚数を増やし、コンビネーションを生み出す。前線のジョーにパスが入ると、得点の気配が高まった。
「お互いの特長が出た、緊迫感のある試合だったと思います。(FC東京は)自分たちのストロングを生かすことができた。(守備で)粘り強く対応し、いい態勢ではプレーさせていなかった」(FC東京・長谷川健太監督)
FC東京は安定した守備によって、プレーのリズムを取っていた。強度と堅牢さで名古屋に対抗。ジョアン・シミッチのロングパスからジョーに決定的なシュートを打ち込まれる場面はあったものの、それも最後は体をぶつけていた。
「シミッチは身体をひねってパスを入れてくるので、そこは警戒して、必ず誰かがつくようにしていましたね。ジョーのポスト(プレー)はたしかに(ボールが)収まる感じでしたけど、センターバックがしっかり跳ね返せていたし。先制できた瞬間、”勝った”と思いました」(FC東京・橋本)
後半9分だった。右サイドでボールをつなげようとする名古屋の選手たちを、FC東京の選手が囲い込む。距離をつめ、網を絞るように圧迫。名古屋の右サイドバックがボールを持った瞬間、橋本がパスコースを消しながら鋭く寄せ、一気にボールを奪い返す。そこからの攻守の切り替えは早かった。東慶悟のスルーパスから裏を抜けた永井が独走し、ゴール右隅に流し込んだ。
「(裏を狙う形は)前半から何回もチャレンジしていて、1人ダメでも、2人、3人(抜け出そうと)。その積み重ねがゴールにつながりました」(FC東京・永井)
痛快な一撃だった。分厚い守備からのカウンター。まさに狙い通りだ。
もっとも、時間が経過するにつれ、FC東京は劣勢に回る。名古屋の怒濤の攻めに、意図的に下げていたラインが、ただ押し下げられる形になってしまう。前線の選手がキープからファウルを取ってプレーを切る、という老獪さもなかった。
「前から行こう! もっとつなごう!」
ピッチ内ではそんな会話のやりとりもあったようだが、流れを変えられない。主将の東が相手ボールを突き出し、前に出ようとするが、周りの反応は乏しかった。試合終了直前、シミッチのクロスに合わせたジョーのヘディングが外れたのは、東京にとって僥倖だったと言える。
FC東京はどうにか守り切り、1-0で勝利を収めている。鍛えられた守備とカウンターを示し、それは彼らの武器と言える。守りに自信があるだけに、先制したら滅法強く、自分の土俵で戦える。
なにより、17歳の久保建英が著しい成長を遂げている。右サイドでボールを持って、相手に脅威を与え、時間もスペースも作れるようになった。
たとえば序盤、右サイドでドリブルを仕掛け、ボランチのシミッチを釣り出している。挟まれて奪い返されるも、直後、中央でフリーになった東へパスが渡り、スルーパスから永井が決定機を迎えた。個としての逞しさを見せ、相乗効果を生みつつあるのだ。
もっとも、現状に満足はできない。昨シーズンも、FC東京は8月までは首位争いを演じていたが、その後は得点力不足で失速した。
「(右足で放ったシュートをサイドネットに外したシーンの)リプレイを10回くらい見ましたが、入っていませんでしたね。決めるべきところで決めていたら、もっと楽に試合を進められた」
久保は皮肉っぽく言ったが、悔しさを含んだ向上心が次につながるか――。FC東京は4年ぶりの首位浮上。ひとつの潮目をものにした。