写真:上田仁(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部スポーツのプロ化が進むにつれ、アスリートにとってファンやスポンサーとの付き合い方の重要度は増していく。卓球においても例外ではない。多くの卓球アスリートが、競技力の向上を最優先にしながらも、S…

写真:上田仁(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部

スポーツのプロ化が進むにつれ、アスリートにとってファンやスポンサーとの付き合い方の重要度は増していく。

卓球においても例外ではない。多くの卓球アスリートが、競技力の向上を最優先にしながらも、SNSを通じてファンとの交流やスポンサー満足度を高める動きを加速させている。

Tリーグ開幕を見据えて実業団選手からプロ転向をした上田仁(岡山リベッツ)もその1人だ。卓球界随一の頭脳派プレーヤーの上田はどのようにSNSと向き合っているのか。Tリーグ開幕直後にいち早くTikTokで話題を呼んだ、“あの投稿”の裏側に何があったのか、話を聞いた。

上田仁のSNS活用法

ーーアスリートがSNSを活用する時代になりました。上田選手はどのようにSNSと向き合っていますか?
上田仁(岡山リベッツ、以下「上田」):うまく付き合うことがとても重要だと思っていて、まだまだ勉強中の段階ですね。とにかく拡散のスピードが早いことがSNSの特長ですよね。色んな動画も速報もSNSで回ってくる時代になりました。

ーーご自身はいつ頃から活用されているのでしょうか。
上田:実はプロ転向する前、実業団に居た頃からアカウントは持っていました。でも会社員だったということもあり、名前も公開せず、アカウントに鍵をかけて知り合いのみしか見られないようにしていました。会社員時代は、発信の重要性をあまり知らなかったというのもあります。当時のフォロワーは150人くらいでした。

プロになってからはまずはTリーグ自体を知ってもらう必要があると思い、発信を増やしています。

ーーその成果もあり、今はtwitterのフォロワーが当時の50倍くらいに増えていますよね。投稿する内容についてはどのようなことを意識しているのでしょうか?
上田:人とちょっと違う発信。これに尽きると思っています。他のスポーツでも卓球でも、発信のうまい選手はその人にしか見せられないシーンを切り取って投稿していますよね。プライベートを垣間見せたり、オフショットを撮ったり、そこに時々番宣やスポンサーに配慮をした投稿などを加えているので嫌らしくない。

ーー戦略家の上田選手らしい分析ですね。他のプロスポーツなどの動向も見ているのでしょうか?
上田:プロ野球やJリーグを見ていると、日本代表の1軍の主力としてプレーしている選手もいる一方、そうではないけどプロリーグの中で人気がある選手もいる。そういう選手も注目を浴びてメディアに取り上げられたり、グッズが売れたりしているんですよね。球界を盛り上げる、ファンを増やすという意味ではそういう選手の果たす役割は重要だと思っています。

なので、Tリーグに入るイコール、本当に世界の頂点を目指すプロに必ずしも全員がならなくても、どんどん発信していけば良いのかなと思います。

卓球界でのSNS活用 上手いのは誰だ?

ーー卓球界でSNSを上手く使えていると思う選手はいますか?
上田:水谷(隼)選手ですね。タイミングも内容も予想外のものが多い。それからオフショットを垣間見せる投稿なのに自然とスポンサー企業の商品を褒めたりしていますよね。

Tリーグのチームで言えば、T.T彩たまですね。1日1回絶対投稿するというミッションがあるらしく、本当にコツコツ継続していて、だからこそファンも多い。日本選手だけでなく黄鎮廷(香港)選手なんかも楽しそうにTT兄弟のネタをやったりしていて、すごくいいですよね。

ーー上田選手がリベッツ関連でもっと発信したいテーマはありますか?
上田:どのチームにもチームカラーがあるので、他と同じことをしなければという意識は無いです。

ただ、僕らは韓国選手や台湾選手も含めて、本当に仲が良く一体感がある。そんなチームの自然体の姿をお見せできたら、もっと身近に感じていただけるのかなと。

なので移動中にもオフショットをみんなで撮って「これ載せていい?」っていいながら載せたりしています。あとは何気ない練習風景の動画が世界中で見られたということもあったので、狙って投稿するというよりは、僕らの日常が垣間見えるというのがいいのかもしれませんね。卓球選手の日常って一般の人にとっては非日常だと思いますので。

SNSを通じたファンとの交流も活発に

ーーSNSを見たファンはどのような反応をされているのでしょうか?
上田:本当に皆さん「いいね」や拡散をしてくれて、何回もして下さる方はこちらも覚えてしまう。匿名でアカウントを作られている方でも試合会場に来て下さったら「あのアカウントの方ですよね」とわかりますよ。

全てに返信をつけられるわけではないですが、必ず全てのコメントを見ています。

ーーそれはファンとしても嬉しいですね。
上田:TリーグとコラボしたTikTokの場合だと、よりファンが国際的ですよね。本当に試合の前後の何でもない瞬間の映像に音楽をつけるだけで世界中がTリーグの世界観を感じられる。

ーーTリーグのTikTokのアカウントでは、開幕直後から上田選手の投稿が話題を呼んでいました。ファンはそれまで真面目な上田仁像しか見えなかったといいますか。
上田:あれは開幕戦の時に各チーム1人ずつ入場するシーンがあり、その前後に、リーグ公式アカウントで全員のTikTokの撮影をしたんです。僕の前まではみんな真面目に抱負とかを語っていたんですけど、石垣さん(日本生命レッドエルフ)の後が僕で、撮影担当の人から「みんな表情が硬いから頼むね」と言われて頑張って弾けたんですよ(笑)

そうしたら、以降僕はそういうキャラに認定されたのか、要求がエスカレートしましてね。

でも、TikTokで普段と違う自分をさらけ出したからこそ「試合とは違う一面が見れて良かった」という声も沢山いただくようになりました。それが1人でも会場に足を運んでくれるきっかけになるかもしれないので、本当に発信は大事ですね。

ーー今後の発信も引き続き楽しみにしています。
上田:一度はものすごくバズってみたいですね。とはいえ狙ってできるものではないので、発信を続けます。ファイナルにも注目して下さい。

文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)