写真:森薗政崇(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部

3月17日、Tリーグの初代王者を決めるプレーオフファイナルに並々ならぬ決意で臨む男がいる。

岡山リベッツのガッツマン、森薗政崇だ。

決戦を直前に控えた森薗に、両国国技館での歴史的一戦への意気込みを聞いた。

祖父が愛した両国国技館




写真:森薗政崇(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部

森薗は今月に入り、4月の世界卓球選手権(以下、世界卓球)で自身初となる全種目(男子シングルス、男子ダブルス、混合ダブルス)への出場権を得た。今回の世界卓球で3種目すべてに出場するのは森薗の他に張本智和、伊藤美誠のみということもあり、ナショナルチームの中でも一気に存在感が増している。

それでも森薗は「今は両国国技館に気持ちが集中している」と言い切る。

昨年10月24日のTリーグ開幕戦、舞台となった両国国技館のセンターコートに、森薗の姿は無かった。開幕戦の対戦カードは、木下マイスター東京とT.T彩たまの2チームで組まれたためだ。「僕らリベッツは開幕戦を両国で出来なかった。それがとても悔しくて絶対に両国国技館でやりたかったんです」

森薗が両国国技館でのプレーにこだわるのには、もう1つ大きな理由があった。「実は亡くなった祖父が相撲好きで、子供のころ国技館に相撲を見に連れていってもらいました。その時、小学生ながらにすごいなって思ったのを覚えていて。焼き鳥を食べながら、大きい力士の人たちを見ながら『これだけの人に見られているんだから緊張するんだろうな』なんて思いながら見ていました」と幼き日の原体験を振り返る。

10数年の時を経て、その舞台に大きくなった森薗少年が立つことになろうとは、森薗の祖父も想像していなかったはずだ。「僕がその舞台に立つところを、祖父も天国から見ていてくれると思う。そう思うと楽しみです。人生で国技館で卓球をやれる人なんて本当に一握りだし、人生で何回できるか分からない。緊張は当然するんでしょうけど、それ以上にとにかくその場を楽しみ尽くしたいですね」

森薗が思いを馳せるのは祖父に対してだけではない。「開幕戦の観客動員は5000人以上でしたよね?僕も観ていましたが、5000人の前で卓球をやれるって、今、この時代に卓球選手でいられるからこそ叶うこと。この時代に卓球できて幸せだと思いますし、卓球を引退した年上の先輩方のおかげで今の僕らがあるんだということを改めて思います。そういう感謝を噛み締めながらやるべきかなって、開幕戦を見ていて思いましたね。」

勝率86%の理由




写真:上田仁、森薗政崇(岡山リベッツ)/撮影:ラリーズ編集部

Tリーグという最高の舞台でプレーできることへの感謝を忘れず、貪欲にプレーしてきた森薗。レギュラーシーズンのシングルスの成績は6勝1敗で勝率86%。ダブルスでも上田仁と組んだペアでは15勝3敗と勝率83%を誇る。

この驚異的な数字について森薗は「そもそも僕、リーグが得意なんですよ」と自信を覗かせる。確かに森薗はTリーグができる前に武者修行をしていたドイツ・ブンデスリーグでも2年連続最多勝の成績を残すなど、団体戦のリーグに滅法強い。


「リーグって長い期間アベレージを維持しないといけないじゃないですか。やっぱり慣れてないとパフォーマンスを発揮し続けるのは難しい。特に連戦したときに短い時間でどれだけ自分の状態を維持できるか。これって僕も実際ドイツにいるときにものすごい苦労したんですけど、何年間もやるにつれて慣れていきました。やっぱりどうしてもリーグとワールドツアーと世界卓球とって、みんなモチベーションにむらが出ちゃうんですけど、僕の場合はそこに対して、どんなに苦しくても一定の自分の調子を維持する術をドイツでかなり磨いてきた。だからどんな試合もどんなに状態が悪くても頑張れる。そういう意味ではリーグ向きなのかもしれません」

13歳で単身ドイツに渡り、10年間の武者修行を経てTリーグに参戦した森薗の強さがここにある。

祖父への思い、先人たちへの感謝、そしてドイツでの替えがたい経験。様々な思いを胸にファイナルに臨む森薗は、どんなプレーを見せてくれるだろうか。3月17日13時、両国国技館のセンターコートに注目だ。

文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)