J1リーグが開幕した2月23日、湘南ベルマーレがeSPORTS選手と所属契約を結んだと発表した。契約を結んだのは、ともに20歳のSLEDGEとBluesの2選手だ。トライアウトを通じて所属契約を結んだJクラブは湘南ベルマーレが史上初。この新たな試みの中、SLEDGEとBluesの両選手が、チームのフィロソフィである“湘南スタイル”をeSPORT界でも体現していく。果たして、彼らが見せる“湘南スタイル”とはどんなものだろうか?そして、どのように地域コミュニティに貢献していくのか聞いてみた。(取材日:2019年3月13日)

湘南ベルマーレの一員になっての率直な感想を教えてください。
SLEDGE(以下:S)「正直なれると思っていなかったので、なれた時はびっくりしました。J1リーグのホーム開幕戦(2月23日)の時にスタジアムでサポーターの皆さんに挨拶した時に実感が湧いてきて、最近は(ベルマーレの一員であることに)自覚を持って行動をしています。」

Blues(以下:B)「こういう機会を与えていただいて、光栄に思っています。ベルマーレの所属選手に選ばれると思っていなかったので、すごくびっくりしたというかすごく嬉しかったです。」

お二人から見た湘南ベルマーレの印象について教えてください。
S「サッカーの面で言うと、走るサッカーというか、みんなが一つの目標に向かう団結力があるチームだと思います。クラブ自体が地域に親しまれている印象があります。」

B「開幕戦を見た時はスタジアムの雰囲気が良くて、前半劣勢だったと思うのですがスタジアムの雰囲気が後押しして勝利につながったと思いました。ファンの後押しがあるクラブだと思います。」

どのような形で湘南ベルマーレ、地域コミュニティに貢献していきたいですか?
S「eSPORTS選手として湘南ベルマーレに所属しているので、eSPORTSの大会で成績を残していくことで、逆にベルマーレを知らない方がeSPORTSのほうで興味を持っていただきベルマーレのファンになってくれたら嬉しいです。eSPORTSもリアルなサッカーに負けないくらい応援してもらえるような成績を残せるよう頑張っていきたいです。」

B「先日に慶應義塾大学の研究室の方々と一緒に湘南台で行ったイベントに参加して地域の人々と触れ合いました。こういう機会は今後増えてくるかもしれないので、eSPORTSを通じて地域の方と触れ合っていきたいです。(イベントに出席した感想は)小さい子供がたくさんきたので、eSPORTSの魅力を少しは伝えられたかなと思います。」

湘南ベルマーレのフィロソフィでもある“湘南スタイル”をeSPORTSでどのように体現したいですか?
S「湘南ベルマーレは走るチームなので、サッカーゲームでも最後まで諦めなかったり、粘り強く最後まで戦い続けることで、湘南ベルマーレのスタイルをeSPORTSのほうで体現できたらと思います。」

B「メンタル的に“湘南スタイル”を体現していきたいです。」

SLEDGE選手

eSPORTS選手になったきっかけを教えてください。
S「(eSPORTS選手を)目指そうと思ったのは、正直言ってベルマーレのトライアウトの募集を見た時です。元々FIFAの世界大会の配信をよく見ていたので、ゲーム自体には興味を持っていました。元々はサッカー選手を目指して高校の部活をやっていたのですが、それが叶わなくなりました。それで、大学で時間があった時に就職先を考えていた時に、サッカー選手は専門な職業なので、自分もそのような職業に就けたらと思っていました。ですので、eSPORTSのプロ選手の募集を見た時に挑戦しようと思いました。(募集を見つけたのは)偶然です。」

B「自分もeSPORTS 選手になろうと強く思っていたわけではなく、トライアウトで腕試しをしてみたくて応募したら幸運にも最後まで残ることができました。ただトライアウトでは、夢というか、ベルマーレの選手になりたいという野望はありました。」

2人の名前(SLEDGE、Blues)の由来を教えてください。
S「よく聞かれますね(笑)父親が元々ゲームをやっていたので、それをずっと見ていました。父親が(ゲームを)やらなくなったタイミングで、ゲーム機ごと自分にくれました。父親が元々使っていた名前がSLEDGEでそれを引き継いでいます。由来を父親に聞いたら、釣りが好きなので自分が好きなルアーの名前を付けたようです。」

B「チェルシーのサポーターの愛称からもらったのですが、芸がないなと自分でも思います(笑)チェルシーのファンで、ディエゴ・コスタが好きでした。元々は(元ドイツ代表の)ミヒャエル・バラックが好きで、バラックがチェルシーに移籍したタイミングでチェルシーを好きになりました。ですので、10年以上ファンですね。」

リアルのサッカーの試合を見て、ゲームに参考したりしますか?
S「けっこうしているほうだと思います。自分自身がサッカーをやっていたということもあって、監督から色々教わったことをゲームの世界で試してみたり、プロの試合を見て攻め方をゲームに取り入れています。元々自分のスタイルがあったので、そこにベルマーレ色を入れていきたいです。それと、ベルマーレの選手の中に高校の同級生がいるので、けっこう喋ったりしています。ゲームの話やリアルなサッカーの話もします。」

B「僕も色々なチームの戦術をゲームで試しています。ベルマーレも試していて、少しずつ取り入れていき、近づけていきたいです。」

自身の(ゲーム内での)プレースタイル、セールスポイントを教えてください。
S「攻撃のパターンが豊富だと思うので、崩し方を見てもらいたいです。テンポのいいパスで縦に早い攻撃の時もあれば、ポゼッションサッカーをする時もあります。それが自分の中で武器だと思っています。」

B「縦に早くを意識しています。より早くゴールにボールを近づけることを意識しています。」

ゲームをスポーツに昇華させるために一番大事なことは何だと思いますか?また、eSPORTSの楽しいところ、のめり込むポイントは?
S「楽しいポイントは、家とかで誰でも気軽にできるところだと思います。運動は怪我してしまうとできない期間がありますが、eSPORTSですとそういう障害がなく自由に遊べるのが、eSPORTSにのめり込むポイントだと思います。」

B「サッカーゲームなので勝敗がつくものです。勝ちに向かって戦術考えたり、練習したりしてスキルアップしていくところが、スポーツとして受け入れられる第一歩だと思います。」

Blues選手

今回の選考はオンラインで予選を行い、最終的に4人に絞りオフラインで決勝を行った。選考方法は、試合の結果だけでなく人間性も加味されたという。人間性を測る性格診断には、慶應義塾大学の研究室と共同研究したデータが使われ、それも選考に一役買った。選手の選考やeSPORT選手の育成方法、最終ゴールについて湘南ベルマーレのeスポーツ部門責任者である猪狩佑貴氏に話を聞いてみた。

湘南ベルマーレがeSPORTS界で目指すことを教えてください。
「昨今話題になっているSTEAM教育のところで、水谷(尚人)社長を筆頭に、これから大事になってくるプログラミングなどの部分を湘南ベルマーレとして何かできないかと考えました。その時に、地域に根ざした市民クラブがeSPORTSという分野にチャレンジすることで、どちらかというとネガティブなゲームのイメージを、ポジティブでスポーツ感溢れる健康的なイメージを世に発信していきたいです。」

トライアウトを実施して選手選考をしたそうですが、その内容を具体的に教えてください。
「予選はオンラインでやったのですが、僕らクラブだけではできないところをご協力いただいているところにサポートいただいてしっかりとやっていただきました。最終的には4人に絞ってオフラインで決勝を行いました。試合の勝敗ももちろんのことですが、慶應義塾大学の研究チームにも手伝っていただき、試合前や試合中に様々な計測をやっていただきました。そのデータも評価ポイントになりました。実際に獲得したいと思った選手は、(ゲームが)強いに越したことはありませんが、どちらかというと人間性をみたり面接を通して選考しました。」

慶應義塾大学と共同研究しているとのことですが、今回の選考でどのように反映されているのか具体的に教えてください。
「最終的に評価基準で活かせているかどうか難しい部分ではありますが、どういう性格だったかという分析は非常に基準になりました。僕らでは分からない部分であり、実際に会ってみるとその通りでありました。」

eSPORTSをフックとして、湘南地区でどんな新たなコミュニティを作る想定でしょうか?
「トップチームのオフィシャルクラブパートナーには色々な企業が参画いただいていますが、中々サッカーチームの選手がシーズン中にショッピングモールとかに行って地元の方と触れ合う機会は難しいです。ですが、eSPORTSの選手は比較的フットワーク軽く行けますし、ゲームという触れやすいものがあるので子供達も参加しやすいイベントがたくさんできると思います。まだ形にはなっていませんが、すでに何社か選手を呼んでイベントしたいという会社があるので、その時点でeSPORTS選手がいてくれたおかげで話が大きくなっています。これからそういう形で、既存のトップパートナー含め新規のパートナーにもささるコンテンツでないかと思います。そういうところで露出することで地域の人にも見てもらって身近に感じてもらい、ネガティブなゲームのイメージを一変してもらえると思うので、そういう部分で二人には活動してもらいたいと思っています。」

eSPORTS選手の育成方法を具体的に教えてください。
「技術的な部分は個人でスキルアップできると思っています。ベルマーレとしては、メンタル部分がトップチームも大事にしているところなので、2人にはトップチームのホームゲームに実際に来てもらって、スタジアムの雰囲気であったりトップチームの選手の顔とか監督の表情とかを身近に感じてもらって、そこの中に自分もいることを感じれば責任感も出てくると思います。今後にはなりますが、トップチームのミーティングにも出てもらって、トップチームの現状を把握し、チームの一員であることを肌で感じて欲しいです。」

eSPORTSで湘南ベルマーレが目指す最終ゴールを教えてください。
​「“湘南から世界へ”が大きなトピックの一つです。世界大会で湘南ベルマーレのエンブレムを背負って、世界の壁を突破していく姿が見られれば素晴らしいし、そこを目指していきたいと思います。そして、そこを大きな軸としながらも、湘南地域での活動でもフットワーク軽く出てもらって、湘南にeSPORTS選手がいることをアピールしてもらい、ゆくゆくはeSPORTSのポジティブなイメージに少しでも貢献していきたいと思います。」

猪狩佑貴氏

“湘南から世界へ”。リアルなサッカーではかなり高い壁だが、eSPORTSの世界の方がそのハードルは低いかもしれない。この壮大な目標を託された2人に、今後の意気込みを力強く話してもらった。

S「選んでくれたベルマーレのために結果を残し、ファンの方々に愛されることによって恩返ししていく形を取れればと思います。つい先日にeJリーグの発表があったので、まずはそのeJリーグに向けていい成績を残せるように頑張っていきたいです。」

B「勝利で貢献したいのがありますし、一人のサポーターとしてスタジアムに駆けつけて応援したいですし、地域の方々ともうまくやっていけたらと思います。」