沖縄に拠点を置き、約2週間にわたるキャンプに取り組んでいる早大野球部。今回は3月6日に行われた練習に密着し、7季ぶりの東京六大学リーグ制覇に向け虎視眈々(たんたん)と準備を進めるチームの様子を紹介する。


キャッチボールをする選手たち

  午前9時――。大粒の雨が降り注ぐ傍ら、室内練習場にはナインの緊張感が張り詰めていた。小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)が見守る中、この日の練習が開始する。まずはキャッチボールを含むウォーミングアップから。各選手が掛け声を出しながら体を徐々にほぐしていく。ウォーミングアップを終えると、野手陣は徳武定祐コーチ(昭36商=東京・早実)の前に集合。「打席で気持ちをもっと前に出せと、そういう話をした」。今季から久しぶりに早大のユニホームに袖を通す徳武コーチ。かつて青木宣親(平16人卒=現東京ヤクルトスワローズ)や鳥谷敬(平16人卒=現阪神タイガース)、中村奨吾(平26スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)や茂木栄五郎(平27文構卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)といった数々の好打者を育て上げてきた名コーチだ。身ぶり手ぶりの指導に、選手たちは真剣な表情で聞き入っていた。

 集合の輪がほどけると、野手陣は複数の組に分かれ各自のメニューへ。メインとなったのは、投球マシンと打撃投手を設置し2カ所で行われた打撃練習である。徳武コーチが熱視線を送る中、各選手が速いテンポでローテーションし打ち込んでいく。その中でも目を引いたのが、岩本久重(スポ2=大阪桐蔭)だ。打席中、破裂するような乾いた打球音が響き渡っていた。昨年の東京六大学秋季リーグ戦、なかなかベンチに入れず悔しい時間を過ごした岩本だが、持ち前の力強いスイングでアピールを続けているようだ。  別の組は、田中浩康コーチ(平17社卒=香川・尽誠学園)による内野1カ所ノックで汗を流していた。選手の正面に比較的易しいゴロを打ち続ける田中コーチ。ゴロの捕球動作を念入りにしみ込ませようとしているようだ。また、この日は田口喜将(商4=東京・早実)や山野聖起(法4=岡山・金光学園)といった外野手も内野の位置で練習。普段とは違う距離感に苦戦する場面も見られた。


ノックを打つ田中コーチ

 その他の野手陣がティー打撃やバント練習に取り組む中、黙々とバットを振り込む選手がいた。加藤雅樹主将(社4=東京・早実)だ。佐藤孝治助監督(昭60教卒=東京・早実)がバットで目印を示し、示されたコースを正確に振り抜く。「昨日の試合(○1x-0ホンダ鈴鹿)で課題が出たので。その改善を手伝ってもらっていた」。時折、加藤がバットを構えてから、佐藤助監督が目印を動かす場面も。狙い球と異なる球が来ても対応できるようにするための練習だ。今年も4番としての起用が期待される新主将。沖縄キャンプでは「フォームの安定」をテーマに掲げ、来(きた)るべき日に備え牙を研いでいる。


佐藤助監督とマンツーマンで素振りを行う加藤

 一方の投手陣。この日はトレーニングメニューが中心だった。ウォーミングアップ後、雨がやんだ屋外に出て短距離ダッシュを反復。その後は室内練習場に戻り、ゴムチューブや大きなボールを使った体幹トレーニングをこなした。  そんな中、徳山壮磨(スポ2=大阪桐蔭)は投手陣で唯一ブルペン入り。捕手を座らせ、力強い直球に加え、カーブやスライダーなどの変化球も披露した。昨夏の右肩のけがを機に、投球フォームの改造に取り組んできた徳山。「前のフォームよりボールの(指への)かかりもよくなった」。新フォームに確かな手応えを感じているようだ。


この日、投手陣で唯一ブルペン入りした徳山

 この日の練習は午前中で終了。約3時間という短い時間であったが、おのおのがそれぞれの目的意識を持ち、密度の濃い練習にしようという姿が印象的だった。特に加藤は、練習の隙間時間を見つけては素振りに没頭していた。主将の貪欲な姿勢が、必ずやチームに良い影響を与えていることだろう。1日から始まった沖縄キャンプもいよいよ後半戦。春季リーグ戦に向け、チーム内のサバイバルも激化していく。

(記事 石﨑開、写真 村上萌々子、吉岡拓哉、江藤華、柴田侑佳)

★過熱する捕手陣


大きな声を出しながらタッチプレーに取り組む小藤(右)と岩本(左)

 この日の捕手陣はタッチプレーの練習に取り組んでいた。佐藤助監督が投じたショートバウンドを捕球し、すかさずベースにタッチする。一見単純な練習だが、大きな声を出してこれを盛り上げていた。「昨日ホンダ鈴鹿はキャッチャーのタッチ(プレー)で盛り上がっていて。見習うようにと佐藤助監督に言われました」(小藤翼副将、スポ4=東京・日大三)。小藤に続き、重田慎太郎(文構4=佐賀西)や岩本らも積極的に声を出し盛り上げ、周囲の視線をさらっていた。『扇の要』である捕手陣が先陣を切って明るい雰囲気を出せば、チームの士気もさらに高まるだろう。

(記事 石﨑開、写真 望月優樹)

※記事中の学年は新年度のものです。