「とにかく引かない。引いてやられるよりも、前からのハードワークで最善を尽くす。その覚悟で戦った」(MF喜田拓也、横浜…
「とにかく引かない。引いてやられるよりも、前からのハードワークで最善を尽くす。その覚悟で戦った」(MF喜田拓也、横浜F・マリノス)
この日、横浜F・マリノスは最後まで一貫した戦いを見せている。目を覆うようなミスは何度か出たし、それは明らかな弱点でもあった。しかし、挑むようなプレーを少しも変えていない。
「アタッキングフットボール」
そう標榜するオーストラリア人、アンジェ・ポステコグルー監督が率いて2年目。そのチャレンジは結実するのか?

川崎フロンターレ戦の終了間際、扇原貴宏の同点ゴールが決まった横浜F・マリノス
3月10日、日産スタジアム。開幕2連勝でスタートを切った横浜FMは本拠地に、3連覇を目指す王者、川崎フロンターレを迎えた。序盤は敵ゴール前にも近づけなかった。プレスをはがせず、ボールを運ばれ、力の差を感じさせた。
「ビルドアップのところでは課題が出ました。(パスを受けるための)ズレがうまく作れなかった。(川崎が)きー坊(喜田)にあえて出させて、そこを狙われたというか」(GK飯倉大樹・横浜FM)
前半4分だった。川崎は、GKからビルドアップを試みる横浜FMの動きをはめる。GK飯倉が後ろから喜田につなごうとしたパスを、インターセプトに成功。田中碧からのスルーパスを受けたレアンドロ・ダミアンは、GKの鼻先でボールを浮かし、鮮やかに先制点を決めた。
横浜FMは後手を踏み、その後も形勢は悪かった。しかし、インサイドハーフに入った天野純、大津祐樹が左右にボールを引き出す。2人はキープ力とパス出しに優れ、プレーを旋回させ始める。
24分、大津が右サイドで幅を取る。その瞬間、インサイドを駆け抜けた仲川輝人にパスが出て、仲川はゴールラインぎりぎりで折り返す。これをファーサイドで待っていたマルコス・ジュニオールが流し込んだ。
同点にした後、横浜FMはチームカラーを強く出し始める。強度の高いプレッシングで、川崎に主導権を握らせない。ボールを奪い返したら、徹底的にサイドを攻め崩す。インサイドハーフは、その渦の中心になっていた。この日は、川崎から期限付き移籍したMF三好康児が欠場を余儀なくされていたが、戦い方は変わっていない。
「(横浜FMは)特殊な配置なので、やりづらさはありましたね。ただ、前から(プレスに)来ている分、はがすと裏をどんどん狙える、とは思っていました」(DF谷口彰悟・川崎)
横浜FMはリスクをかけながら、勝利を目指した。後半はチャンスも得たが、同時にビルドアップからのミスも多発している。その結果、危ういショートカウンターを何度も浴びた。
そして、後半43分だった。
川崎は、中村憲剛が左サイドに展開すると、長谷川竜也がファーへのクロスを流し込み、小林悠が頭で折り返す。3人の交代出場選手が作った好機を、レアンドロ・ダミアンが頭で押し込んだ。土壇場で1-2と勝ち越し、戦力差を見せつけた。
<さすが王者!>
そんなムードが会場内に流れる。残り時間はほとんどなかった。
リードした川崎は、これで逃げ切りモードに入っている。当然の流れだろう。ただ、慎重になったというよりは、怯(ひる)みが見えたというのだろうか。”らしくない”クリアで、せっかく奪い返したボールを横浜FMに渡してしまうシーンもあった。
一方の横浜FMは流されなかった。愚直なまでに、前へボールを運ぼうとしていた。
「(交代で出場したときには)しっかりボールに触って、動かして、とにかく空いているところへ入っていこうと。アグレッシブにプレーし、チームに勢いを与えようとしました。みんな、下を向いていなかった。その姿勢が、得点につながったのでは……」(MF扇原貴宏・横浜FM)
アディショナルタイムの左CKだった。GK飯倉も、ゴールエリア内に入っていた。天野が左足で蹴ったボールに、扇原が身体をひねりながらヘディングで合わせている。総攻撃の姿勢が実った形だった。敢然と戦い、2-2に追いついてのドロー。横浜FMにとって、悪い結果ではないだろう。
「ミスは起こるもの。それを引きずらず、やり続けることが大事だ」
試合後の会見で、ポステコグルー監督は落ち着いた様子でそう語っている。
「川崎はボールを持たせたら、簡単に(こちらの)陣地まで入ってきてしまう。だから、前からアグレッシブに行く必要があった。ゴールに近づかせない。無論、プレスは後ろにギャップを作って、危険はあった。しかし我々は攻撃だけでなく、守備もアグレッシブに行く。そのおかげで、今日は相手を苦しめられた。決め切れるかどうかの際どいチャンスも作り出していたし、2-2はフェアな結果と言えるだろう」
横浜FMは、弱点を突かれた部分はあった。攻守両面でバランスを欠く一面もある。しかし、そのアンバランスさによって追いついた、とも言える――。
3節終了時点で無敗の3位。ポステコグルー横浜FMは、不完全な輝きを放っている。