写真:早田ひな(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
Tリーグ11連勝からの初代MVP受賞、そして先日のポルトガルOP優勝。弱冠18歳の女王・早田ひなに迫るインタビュー企画も今回で最終回。

同い年の平野美宇、伊藤美誠らとともに「黄金世代」と呼ばれ、日本女子卓球の人気を牽引する早田だが、同い年の女子アスリート3人衆ともなれば各方面で比べらることが茶飯事だ。かつてないほど選手層が厚いと評され、満を持してのTリーグ開幕など急ピッチで進化を続ける日本卓球界は、早田の目にどう映っているだろうか。

核心に迫るテーマにも早田は、ひとつひとつ丁寧に答えてくれた。

「黄金世代」と呼ばれて

フィギュアスケートしかりゴルフしかり、そして卓球もまたしかり。同世代の選手の層が厚くなってくると、ファンは歓喜の余り、つい選手をひとまとめにしたり安易に比較したりすることも少なくない。選手にとってみれば、ひとりひとり違うキャリア、強み、波などがあって然るべきで、不本意な思いをしてはいまいか。

「黄金世代」――。中学生・高校生という多感な時期からずっと、伊藤美誠や平野美宇らと切磋琢磨してきた早田は、自分達がそう呼ばれていることを、どう受け止めているのか。

「黄金世代と言われているのは知っています。世界から見ても日本人選手のレベルが上がっていることは感じていて、その中で奇跡的に同世代3人が揃いました。同世代に素晴らしい選手が2人もいたから自分も頑張れました。2人が結果を出すと自分も頑張ろうと思えるので、2人のおかげでここまで来れていると思っています」。

世間の老婆心など意に介さず、ただただ卓球を強くなることだけ見据えている早田のひたむきさと、周囲に感謝の気持ちを忘れない人間力が垣間見える。さらに、同世代への特別なライバル心について問うと早田はこう語る。




写真:左から早田ひな・伊藤美誠・平野美宇(2016 ITTFアワード)/提供:ITTF・アフロ

「ライバル意識はありますが、そういうところはしっかり分けて団体戦のときはチームジャパンとして共に戦います。基本的に卓球は個人競技なので、個人として対戦するときはライバルであり、試合が終わると仲良しというところがあるように思います。伊藤選手は性格が似ていて気が合うので、ご飯を食べに行くこともあります。平野選手はアイドルが好きなので、いつも自分と伊藤選手にアイドルの話を熱心にしてくれます(笑)」。

団体戦と個人戦で分ける。オンとオフで分ける。お互いに対する意識を区別し、良好な関係のまま切磋琢磨を続ける早田たちは、どこまでもプロフェッショナルでありピュアである。プロアスリートとしての力強さと、オフショットの微笑ましさの対比に、日本中が虜になるのも頷ける。

早田の憧れが同じ左利きで高身長の中国選手・丁寧であるという話は、ファンの間で有名だが、早田は丁寧に女子選手として憧れを抱きながら、同時に「日本をここまで強くしたのは、中国に勝つというみんなの気持ち」と語る。

女王・早田が説く いま日本の卓球が強いワケ

「今、日本の卓球選手はみんな、誰かが結果を出す度に次は私もと思っていると思います。その中でも特に、中国選手に勝つことが共通の目標になっているので、誰かが中国選手に勝つと、みんなさらに中国選手に勝とうという気持ちが芽生えます」。

「こんなふうに周りからの刺激もすごいし、それを支えてくれている方の努力もあると思います。選手もその周りも、一人一人がしっかり目標を持って取り組んでいることが結果につながって、卓球界が盛り上がっているのではないかと思います」。

日本の卓球を盛り上げる立役者は、ひとりひとりの選手と、選手を支える全ての人。それはつまり拡大解釈すれば、選手達を応援する国民全体も含まれる。そんな卓球を取り巻く環境を知ってか、早田は卓球にひたむきであると同時に、いつも支えてくれる周りへの感謝と気遣いを忘れない。

いま日本卓球界を盛り上げているひとつの要素であるTリーグについても、その意義を聞いてみた。11連勝という快挙を成し遂げ初代MVPに輝いた女王の目に、その舞台はどう映っているだろうか。

「これまでは、日本で大きな試合があるのは全日本選手権のとき東京だけということが多かったけれど、Tリーグは色々な地方でやるので、東京に全日本選手権を見に来られない人もたくさん集まってくれます。そんなふうに、これまで見てもらえなかった人達を前に、日本のトップ選手が試合をできるリーグです。Tリーグが始まったことで、卓球のおもしろさを沢山の人に伝えられているのかなと思っています」。

早田にとって、Tリーグは、より多くのファンや観客に卓球の楽しさを伝えられる舞台。そして、自身の成長に資する舞台でもある。

「Tリーグは世界のトップ選手と試合することも多くて、ワールドツアーでは勝ち上がっていかないと当たれない選手とも対戦できます。自分の色々な技術を試して、何が効くのか分かることによって自信にもなりますし、逆に相手が何をしてくるのかを考えると楽しみでもあります」。

卓球の楽しさを広く伝えたいという純粋な思いと、自身の成長を楽しみに取り組む真摯な姿勢はまさにTリーグ初代MVPにふさわしい。

憧れは「素直な人」 好きな芸能人は?

そんなひたむきな女王・早田の、プライベートはどんな様子だろうか。プライベートとは言っても、「卓球三昧」な生活を送る早田にとって、束の間の時間であろうことは想像に難くないが――。

「GENERATIONSという3代目J SOUL BROTHERSの弟的な存在のグループにはまっています。中でも白濱亜嵐さんと関口メンディーさんにはまっていて、ダンスがかっこいいんです。メンディーさんはダンスだけでなく、テレビ番組での素直な人柄も好きです」。

少し照れながら、無邪気にそう語る早田。ダンスが好き。素直な人柄が好き。というキーワードが出てきたので、その意図するところをもう少し掘り下げてみた。

「卓球は個人競技ですが、ダンスは揃えようと思って簡単に揃うものじゃないと思うので。普段の仲の良さやチームワークで揃うようになるんだと思ったら、ダンスができるのはすごいなって」。




写真:左から伊藤美誠・早田ひな(2018ITTFグランドファイナル 女子ダブルス 表彰式 早田・伊藤ペアが優勝)/撮影:千葉格・アフロ

「関口メンディーさんの素直さについては、テレビ番組でどっきりを仕掛けられていじられている姿をよく見ているんです。メンディーさんの素直なところを見て、私もこういう人になりたいなっていつも思っています」。

卓球にはない要素に憧れたり、その人物の人柄に惹かれたり。早田は、卓球界でこれほど注目されながら、少しも偏狭さやスレたところがない。さらに、早田の人柄を物語るエピソードがある。

「映画がけっこう好きで、ひとりで大号泣しています。恋愛系も好きですが、家族のことやみんなで頑張る映画を見ることが多いです。「リメンバー・ミー」やチアダン(「チア男子!!」)が好き。リメンバー・ミーは家族を大事にする話。チアダンは団結感やチーム力に憧れます」。

飛行機の中でこれらを見て、マスクで隠しながら大号泣したという早田。多忙な毎日を送るが、行ってみたい場所はオーロラ見学と北海道への温泉旅行。此度のMVPの受賞では、ノジマの商品券で「たこ焼き機を買ってチームメイトとパーティーしたい」と語っていた。日本卓球界を牽引する力強い存在でありながら、どこまでもピュアなキャラクターが印象的な早田ひな。彼女を見ていると、まるで真っ白な雪で心が洗われるような感覚に陥る。

「素の自分見せる」 70万再生の人気コンテンツに

早田が素の自分を見せることを意識する瞬間があるという。それはファンに向けてSNSでメッセージを伝えるときだ。TリーグのパートナーであるTikTokでも「#早田ひな」で検索してみると、わずか9つの投稿でなんと70万回以上も再生されている。

再生回数の多さについて早田は「素に近い状態の自分を出しているからでしょうか。」と理由を予測する。「普段はユニフォーム姿で試合をしている真面目なところ以外なかなか見せる機会がないんですが、TikTokでは、そうじゃない素の姿も多く発信できています」。

普段は卓球に集中するためにSNSとの適切な距離感を保つという早田だからこそ、少ない投稿の中で多くのファンから共感を得られているのかもしれない。

早田属する日本生命レッドエルフは、上位2チームのみに与えられるプレーオフ出場権を見事勝ち取った。3月17日の木下アビエル神奈川との対決に向け、「日本生命レッドエルフとして初代チャンピオンを目指しているので、しっかりチームに貢献できるように頑張りたいです」早田はそう締め括った。

ダイナミックかつひたむきなプレーで、観る者すべてを魅了する早田ひな。そのまっすぐな瞳は今後どんな景色を目にするのか。楽しみでならない。(了)

文:大塚沙央里(ラリーズ編集部)