チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦でドルトムントが姿を消すことになった。トッテナムとのアウェーでの…

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦でドルトムントが姿を消すことになった。トッテナムとのアウェーでの第1戦に3-0と大敗したのに続き、第2戦も0-1で敗れ、1点も取ることができずに2連敗というありさまだった。

 ホームでの第2戦、ドルトムントは圧倒的に攻め立てた。ポゼッションは62対38、シュート数は12対4、成功したパスの本数は700対332。ほとんどの数字で上回ったが、たったひとつ、ゴールだけが及ばなかった。

 3点差を挽回しようと焦るドルトムントを尻目に、トッテナムはゆったりと試合を進めた。後半に入って、49分にDFの穴をついたハリー・ケインがゴールを決めると、ドルトムントのプレスは徐々に弱まっていく。トッテナムが守備固めの選手交代を行ない、露骨に後ろの枚数を増やしたのと対照的に、ドルトムントは次々にアタッカーを投入していったが、実らなかった。



トッテナムに敗れ、チャンピオンズリーグ敗退が決まったドルトムント

 それでもドルトムントのゴール裏は最後まで温かかった。主将のマルコ・ロイスは「サポーターの声援は鳥肌モノだった」と、感謝の言葉を述べた。

 ドルトムントのルシアン・ファブレ監督は、試合をこう振り返った。

「今日は前半にたくさんの、後半にもいくつかのチャンスがあった。失点したあとも我々は勇気を持ってよく戦った。今日は点が取れなかっただけだ」

 たしかにそうかもしれないが、この勝負は90分だけを見るべきではなく、2戦合計180分で考えるものだろう。第1戦の大敗で事実上、決着はついていた。そして、この結果が想像に難くないものであったのは、何も第1戦のせいだけだったわけではない。

 今季、開幕からブンデスリーガの首位を独走してきたドルトムントだったが、後半戦に入ると、国内でも不調ぶりが際立っていたからだ。

 リーグ戦では、ウィンターブレイクが明けて2連勝したものの、その後は3引き分け。前節はアウクスブルクに敗れ、7戦で3勝3分1敗という成績だ。ウィンターブレイク前には2位バイエルンに勝ち点差6をつけていたが、ついに勝ち点54で並ばれてしまった。こうなると逆転されるのは時間の問題だろう。さらにドイツ杯でも、ブレーメンに延長戦の末に敗れている。今年に入ってからのドルトムントはいいところナシなのだ。

 では、前半戦の勢いはなぜなくなったのか。

 リーグ戦に関して言えば、各チームがドルトムント対策を講じ、それが功を奏しているからだろう。前半戦のドルトムントは勢いのある、別の言い方をすれば勢いまかせの攻撃で、見る者をあっと言わせてきた。誰が試合に出ても、どこからでも、どの時間帯にでもゴールが奪える。センターバックまで含めた全選手が高いアジリティをもち、スピード感と爽快感に溢れるサッカーを見せた。だからこそ、香川真司はフィットするポジションを発見できなかった。

 しかし、そのスピードと勢いまかせが裏目に出ているのが最近のドルトムントだ。この日のトッテナムのように、たとえドルトムントに攻め立てられても、人数をかけて守り、ケインやソン・フンミンにカウンターを任せるパターンを見出してしまえば、ドルトムントの攻撃は怖くなくなる。

 昨季までであれば、マルセル・シュメルツァーやウカシュ・ピシュチェクといったベテランのサイドバックが、うまくチームのバランスを取ることもできたが、今季は全ポジションでメンバーを刷新したため、こうした”安定剤”がいなくなった。

 もうひとつ誤算だったのは、チーム内得点王のパコ・アルカサルだ。アルカサルはリーグ戦では現在13得点をあげているが、実に途中出場で11得点。不思議なことに先発した場合は2得点にすぎない。CLではここまで途中出場で1得点、先発で1得点の合計2得点。この日のトッテナム戦にも先発したが、無得点に終わった。チームの攻撃を牽引しているようで、計算ができない選手でもあるのだ。

 香川真司をレンタルでベシクタシュに出してしまったことと、ドルトムントが勝てなくなったことは、好調だった前半戦の香川の出場試合数の少なさから考えれば、ほとんど関係がないと言っていいだろう。ただ、香川のような、少し時間をかけ、相手の様子を見ながら攻撃を作っていける選手がひとりいれば、何か状況が変わるかもしれない。そう思わせる不安定さが今のドルトムントにはある。

 これでドルトムントはシーズン3冠のうちのふたつを失った。残るはブンデスリーガのタイトルのみ。若いチームを立て直すことはできるだろうか。