ヤクルトの春季キャンプ(沖縄・浦添市)は、朝8時半の早出練習に始まり、夜間練習が終わるのは午後6時頃。昨年同様、厳…

 ヤクルトの春季キャンプ(沖縄・浦添市)は、朝8時半の早出練習に始まり、夜間練習が終わるのは午後6時頃。昨年同様、厳しく時間の長いキャンプだったが、今年は「ひとつひとつの丁寧さ」と「緊張感」が、より強くなっている印象を受けた。小川淳司監督は「一昨年のシーズン96敗から、去年2位という結果を出したことで、気の緩みが懸念材料としてありました」と言ってこう続けた。

「そういう心配を持って、1月31日のミーティングの日に『緊張感を持ったキャンプを過ごしていこう』と(キャンプを)スタートさせました。そのなかで、『今のはどうだった』『今日はどうだった』と、その都度、選手たちに指摘して引き締めているのが宮本慎也(ヘッドコーチ)です」

 キャンプも終盤にさしかかる頃、小川監督に今シーズンの展望について話をうかがった。



昨年、下馬評を覆しシーズン2位という好成績を残したヤクルト小川淳司監督

―― このキャンプで、小川監督の表情には充実感がにじみ出ているように見えました。

「一昨年の秋季キャンプ(愛媛・松山市)から、宮本ヘッドをはじめ、石井琢朗(打撃)コーチ、河田雄祐(外野守備・走塁)コーチなど、新しいコーチ陣のもと練習を始めました。シーズン96敗ということもあり、練習時間を多く課し、質も求めてやってきました。監督に復帰してから今回でキャンプと名のつくものは4回目 になりますが、選手たちを見て感じたのは『体が強くなったな』ということです。厳しいキャンプもそんなに苦にしていないですし、バットスピードも速くなってきている。このキャンプでは、まずそこを感じました」

―― 他球団のキャンプを回り、浦添に来た人たちはヤクルトの練習を見て「選手たちの声がよく出ている」と驚いていました。

「そう言ってくださるのであれば、元気があって、活気のあるキャンプができていたのかなと思います。声の必要性というか、練習の時から出してないと、いざ試合になった時になかなか出ないですからね。ひとつのプレーに対して声を出し合い、選手同士で指摘し合えば、それぞれの自覚や緊張感にもつながります。キャンプでのあり方など、一昨年の秋からやってきたことが定着しつつあります。それを今シーズンだけでなく、次世代にもつなげていくことが大事だと思っています」

―― 今年のキャンプは実戦が増えた印象がありましたが、シーズンの打順プランをお聞かせください。

「考えようがないんですよね。去年と変えるところがない。1番の坂口(智隆)から青木(宣親)、山田(哲人)、バレンティン、雄平というふうになっちゃうんで……(笑)。打順も守備位置もシャッフルできない。去年のいま頃は、2番打者を誰にするのかで悩んでいましたが、青木が機能したことが大きかったですよね。1番から3番の出塁率は4割を超えて、それがバレンティンの打点につながりました。

 今年もある程度は期待できるでしょうし、そこはもう変えようがないのかなと。今回のキャンプは、ベテランたちに対しては年齢と実績を尊重して、練習は各自に任せている部分があります。自分たちでしっかりやってくれるので、僕はほとんど彼らの練習を見ていません。ただ、チーム練習はもちろん一緒にやってもらいましたよ」

―― 監督は主力選手について、「彼らは打って当たり前です」とよく言われます。そういう意味で、6番から8番を誰が打つかが重要になってくると思うのですが、そこの部分の底上げについての手応えはいかがですか。

「ウチはとくに外野のレギュラー陣の年齢が高くなっています。もし彼らが欠けた時に、次の世代の選手たちがその穴を埋められるかと言えば、まだそこまではいっていない。ベテランが危機感をあおられ、そのことで刺激を受け、彼らがさらに上積みできる……そういう選手をつくり上げるといったら少しオーバーですけど、それが我々(首脳陣)の仕事だと思っています」

―― 期待の若手はいますか。

「外野の塩見泰隆(2年目/26歳)と、内野の村上宗隆(2年目/19歳)は非常に楽しみなところであります。ふたりを『なんとかしたい』という思いで、ここまでは少しでも多く実戦で使っています。塩見はシーズンが開幕すれば代走から守備という役割になると思います。村上は、サードの川端(慎吾)の調整が遅れているので、そこに入っていけるように。最初から村上と決めると、ほかの選手たちから不満が出るかもしれませんが、そこは一貫してやっていきたいと思っています。

 このふたりとは別に、去年1年間ショートで頑張った西浦(直亨)がいて、彼は本当に変わったなという印象があります。これから不動のレギュラーになれるのか、西浦にとってはものすごく大事なシーズンになると思います」

―― ベンチ入りを争う選手たちは、昨年以上の危機感を口にしています。

「そうですね。塩見と村上、西浦の名前を挙げましたが、そこに割って入ってくる選手のことも考えないといけません。今年からベンチ枠がひとつ増えたとはいえ、キャンプに参加した全員が一軍に残れるわけではありません。競争という意味では、彼らが切磋琢磨してくれたら、チーム力は少し上がるかなと思います。まだスタートしたばかりですから、そのあたりはこれからになってくるかと思います」

―― 投手陣についてお聞きします。日本ハムから高梨裕稔選手がトレードで入団し、ソフトバンクを退団した五十嵐亮太選手、寺原隼人選手と契約。新外国人はアルバート・スアレス選手とスコット・マクガフ選手を獲得しました。さらにドラフト1位の清水昇選手(国学院大)も新加入しました。

「去年のいま頃は、開幕に小川(泰弘)と星(知弥)が間に合わず、先発候補をどうしようか悩んでいましたからね。こういう言い方は適切ではないかもしれませんが、去年はそういう状況のなかで起用して、成長してくれたピッチャー がすごく出てきたシーズンでもあったと思うんです。彼らが今年も活躍してくれることを期待していますし、ほかにも復帰した選手や、4年目となる高橋奎二も出てきてくれた。楽しみは大きいです」

―― 現時点での先発候補はどう考えていますか。

「小川、ブキャナン、原樹理。あと新外国人のスアレスは先発で考えていて、高梨、寺原……それに高橋奎二、星、石川雅規に、あと誰だ(笑)。これで9人じゃないですか。去年はこんなに数えられなかったですからね。今年は6人+1人で考えています」

―― 勝ちパターンのブルペンについてはどうですか。

「ちょっと心配なのは、近藤一樹と石山泰稚です。やはり、去年の登板数の反動というか、疲れが残っているのではないかと……。でも、近藤も石山も実戦に入って、いいボールを投げていました。そこにマクガフが入り、あとは五十嵐と梅野雄吾といったところを考えています。現状では左がいないのですが、そこもこれからです」

―― 28人から29人になったベンチ枠については、どうお考えですか。

「まずは候補の多いピッチャーを多く入れることが、一番の選択肢になると思います。そのなかで左の中継ぎ不足という現状を考えると、ハフがいいのかなと思いますが、外国人枠の問題があります。6番目の先発候補に入れて、1~2回投げたら抹消という選択肢もある。また、野手を入れるというアイデアもあります。レギュラー陣はベテランが多く、そこに川端や畠山和洋が戻ってくれば、どうしてもスペアが必要になる。結局は、その時の状況次第になってしまうのですが、まずはピッチャーをどう回すか、そして外国人枠をどう使うのか……29番目の枠は、我々が知恵を絞って考えないといけないですね」

―― ライバル球団に対してはどうですか。とくに広島は、昨年6勝19敗と大きく負け越しました。

「カープは戦力が揃っていて、強いのはわかっています。巨人は積極的な補強をして、額面どおりの働きをすればすごい打線が組めますよね。阪神はもともと投手陣がよく、そこに西勇輝とガルシアが加入して、かなり強力になりました。DeNAと中日も今シーズンにかける思いは強いと思いますし。

 ただ、補強して戦力アップしたことや、広島との対戦成績などは情報として必要なんですけど、僕としてはそういう先入観をもって戦わない方がいいかなと思っています。大事なのは目の前の試合をどう勝つかということです。いかに1点を取りにいき、いかに失点を防ぐか。相手チームを意識して戦うことはないと思います」

―― チームスローガンは「躍進」です。

「当然、最終的な目標は優勝ですし、どこのチームにも勝つ可能性は十分にあると思っています。野球は必ずしも強いチームが勝つとは限りません。まずは1試合1試合を、去年と同じように執念を持って戦い抜くことです。あきらめない気持ちを持ち続け、こなすようなプレーは見せない。カープの強さはそこですよね。点差が開いてもジワジワと追いついてきて、最後にひっくり返してしまう。去年もそういう試合がいくつかあったと思います。選手たちには、開幕前にそこをもう一度伝えたいと思っています。シーズンは143試合と長丁場ですけど、ベテランと若手をうまくミックスして、それが戦力としての上積みになるように、我々がいろいろと考えることも必要だと思っています」