今年のキャンプを盛り上げた根尾昂(中日)、小園海斗(広島)、藤原恭大(ロッテ)の高卒野手ドラフト1位トリオ。その一…
今年のキャンプを盛り上げた根尾昂(中日)、小園海斗(広島)、藤原恭大(ロッテ)の高卒野手ドラフト1位トリオ。その一方でドラフト3位ながら、たしかな実力で首脳陣から高い評価を得ている高卒ルーキーがいる。
ソフトバンク・野村大樹(だいじゅ)――早稲田実業では1年から4番に座り、清宮幸太郎(日本ハム)と”ツインバズーカ”を形成し、172センチながら高校通算68本塁打を放ったスラッガーだ。パンチ力に加え、非凡なミートセンスを持ち、さらに勝負強さも兼ね備えた打撃力がソフトバンクの目に留まり、入団を果たした。

初の対外試合で4打数4安打を記録したソフトバンクのルーキー・野村大樹
今年のソフトバンクは甲斐野央(ドラフト1位)、杉山一樹(ドラフト2位)、板東湧梧(ドラフト4位)、奥村政稔(ドラフト7位)のルーキー4投手が「きわめて実戦的」と首脳陣から高い評価を受けているが、キャンプで二軍スタートだった野村も例外ではなく、小川一夫二軍監督も「明るさ、素直さ、賢さの三拍子が揃っているので、飲み込みがすごく早い。実戦に強いタイプだと思います」と太鼓判を押している。
2月17日にはセガサミーとの練習試合に「8番・DH」で出場。「木製バットでの対外試合も、DHも初めて。試合に入るリズムをどうつくっていいかわかりません」と試合前に語っていた野村だったが、なんと4打数4安打という衝撃のデビューを飾ってみせた。
「自分は”入り”が苦手なんですよね。昔から1回戦とか、1打席目とかに打った記憶があまりないんです。毎年、この時期は調子も上がってこないし……」
そう言いながらも結果を残してしまうところに、野村の非凡な才能を感じずにはいられないが、いきなり見せつけた実戦での強さは、小川監督が「大きなクセがない」と語る打撃フォームに起因している。
福山龍太郎アマスカウトチーフは「無駄のないフォームからのコンタクト能力は、過去に獲った高校生のなかでもトップクラス」と断言する。
大道典良二軍打撃コーチも「これだけバットの出し方がきれいな打者はなかなかいない。仙台育英から入ってきた上林誠知を初めて見た時の衝撃を思い出しました。将来は打点をたくさん稼ぐタイプになっていくのではないか」と賛辞を惜しまない。
とはいえ、高卒ルーキーである。まったく欠点がないわけではない。金属から木製に持ち替えたばかりの高卒ルーキーに見られがちな、左ヒジで引っ張るようにバットを出していくクセがまだ残る(右打者の場合)。これについても今シーズンから就任した新井宏昌二軍打撃コーチの指導により解消されつつある。野村が言う。
「高校時代から木製でも打っていましたが、当時はあくまで金属で打つためにすぎなかった。ミドルバランスの金属からトップバランスの木製に変わったことで、とくにヘッドの利かせ方の違いに戸惑いました。新井さんに言われているように、左ヒジが先行すると脇が空いてしまうのでリストターンがうまくいかず、力をボールに伝えることができない。今までのように”引き”で打つのではなく、ヒジを支点にしてしっかりとリストを返す打ち方に取り組んでいます」
新井コーチのレクチャーに対する飲み込みの早さと順応性の高さ。これが初の対外試合での4安打という結果につながったのではないだろうか。しかも、その4安打すべてに野村なりの意味があった。
「詰まったけどヒットゾーンに運べた」という第1打席の中前打。
「ピッチャーゴロでも強いスピンをかけられたからこそ、相手のグラブをはじくことができた」という2打席目のピッチャー強襲ヒット。
「左投手に予想外の初球フォークで軽く崩されてしまったけど、そのあとの真っすぐに対応できた」という3打席目のレフト前ヒット。
「しっかり振り抜けたからこそ、ヒットゾーンに落ちてくれた」という4打席目のレフトへの二塁打。
すべてファーストストライクを打ったもので、このあたりが、福山スカウトが惚れ込んだバットマンとしての能力の高さだろうか。野村はこともなげにこう語る。
「もともと自分の打撃が通用しないとは思っていなかったし、現時点でもついていけていると思っています。紅白戦でも4打数2安打、3打数1安打、そして4安打ですから。この結果は自信になりましたね」
キャンプ初日にマイヘルメットを忘れ、スタッフに宿舎まで取りに帰ってもらう”失態”を演じてしまったが、臆することなく堂々とプレーする姿からも大物感が漂う。そして野村が自信を持つきっかけとなったのが、清宮のこんなアドバイスだった。
「オレが見てきたなかでもお前の打撃センスはすごいものがある。お前のスイングの強さとミート力があれば、1年目からでも十分にやっていけるから」
12球団屈指の戦力を誇るソフトバンクだけに、一軍までの道のりは長く険しい。ただ、清宮の言葉を実証していく野村の姿を目の当たりにしてしまうと、一軍デビューの日もそう遠くはないのではないかと期待してしまうのである。