プレー戦略、卓越した周辺視野、強靭な基礎体力。コート上で必要とされるあらゆる資質を、プロ選手たちはどのように磨いたのだろうか? 最新の理論に基づき将来の選手を育成する「テニスアカデミー」が秘密…

プレー戦略、卓越した周辺視野、強靭な基礎体力。コート上で必要とされるあらゆる資質を、プロ選手たちはどのように磨いたのだろうか? 最新の理論に基づき将来の選手を育成する「テニスアカデミー」が秘密のカギを握っている。

◆テニスアカデミーとは?

世界トップクラスのコーチの下で、さまざまな才能を持った生徒たちとともに学ぶことのできる環境。それが、テニスアカデミーと呼ばれるプロ養成機関だ。アカデミーによって内容はさまざまだが、広大な敷地のなかに豊富に用意されたコート、元プロ選手などによる指導、基礎体力向上のためのジム、最新の理論に基づくプログラム、そしてスポーツ理論などを習得する講義などが提供される。世界には数多くのアカデミーがあるが、適切なテニスアカデミーを選ぶことはプロ志望者にとって非常に重要なことだ。

テニスの道を極めるのに万人向けの方法は存在しない。ラファエル・ナダル(スペイン)がスペインのテニス連盟による指導を断り、叔父のトニ・ナダルに学んだことは有名だ。しかし、多くのプロ選手は若い時代にテニスアカデミーで修練を積んでいるのも事実。最先端の設備とプログラムを備えたアカデミーで基礎技術を研ぎ澄ますことは、プロへの最も確実な道とも言えるだろう。

◆アカデミーの聖地、フロリダ

温暖な気候のためか、アメリカのフロリダ州には優れたテニスアカデミーが集まる。最初に紹介するのは、IMGアカデミー。テニス界のレジェンドとも言われるニック・ボロテリー(アメリカ)が開設した施設で、しばしば世界最高のアカデミーの一つに挙げられる。生徒には、古くはボリス・ベッカー(ドイツ)、アンドレ・アガシ(アメリカ)ピート・サンプラス(アメリカ)から、近年ではセレナ・ウイリアムズとビーナス・ウイリアムズ姉妹、マリア・シャラポワ(ロシア)、錦織圭までが名を連ねる。学術研究に基づいた、先駆的なトレーニング・プログラムを用意する最先端の施設。400エーカー(約1.6平方キロ。代々木公園3つ分に相当)を超える広大な敷地で、子供からプロ選手まで年間1万3000人の生徒を教える。日本にも代理店があり、テニス留学が可能だ。

同じくフロリダには、ニック・サビアーノ・テニスアカデミーも。こちらは元テニス選手のニック・サビアーノ(アメリカ)による創設。コーチ1人につき生徒4人までとする密着指導が売りだ。サビアーノ・メソッドと呼ばれる独自のプログラムで、効果的なプレー戦略やショットの選択法などを学ぶ。このほか同州には、小規模精鋭のエバート・テニスアカデミーなどがあり、テニスアカデミーの集積地となっている。

ちなみにアメリカのほかのアカデミーとしては、ニューヨークのジョン・マッケンロー・テニスアカデミーが有名。シングルスとダブルスの両方で世界ランク1位となる偉業を達成したマッケンローにより創設された。世界中から生徒を呼び寄せるこのアカデミーでは、一流スタッフに加えてマッケンロー自身が指導を行なっている。

◆ヨーロッパにも名門あり

スペインを中心に、ヨーロッパにも優れたアカデミーは数多く存在する。スペインのマヨルカ島には、ラファエル・ナダル・テニスアカデミーが2016年に誕生。ラファ自身はスタッフではないものの、叔父のトニ・ナダルが、コーチ兼テクニカルチームの一員として在籍し、トップクラスのトレーニングを提供している。

このほか、今日「スパニッシュ・ドリル」として知られるトレーニング法を生み出したサンチェス・カサル・アカデミーもスペインに位置する。アンディ・マレー(イギリス)も、かつてここの生徒だった。15歳で入学したマレー少年は闘志が強かったが、ときに練習を嫌がったとの逸話つきだ。

所変わってフランスのムラトグルー・テニスアカデミーは、ローラ・ロブソン(イギリス)など著名選手を輩出してきた著名校。セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が一時的に通ったことでも有名。2012年の全仏で初戦敗退となるとムラトグルー本人から指導を受け、その後見事に復調している。

北欧では、スウェーデンのグッド・トゥー・グレート・テニスアカデミーが有名。マグナス・ノーマン(スウェーデン)など、3名の元プロ選手が創設した。グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)が当地で訓練を受けたところ、成績が短期間で明らかに向上したという。スタン・ワウリンカ(スイス)もかつての生徒の一人だ。

プロ選手の活躍の陰に、世界各地のテニスアカデミーあり。洗練されたプログラムが、卓越したプレーの源になっていると言えるだろう。(テニスデイリー編集部)

※写真はIMGテニスアカデミー(Sam keilton / Wikipedia)