福田正博 フットボール原論 いよいよ新シーズンが開幕するJリーグ。今季も優勝候補の川崎フロンターレ、前回分析したヴィ…
福田正博 フットボール原論
いよいよ新シーズンが開幕するJリーグ。今季も優勝候補の川崎フロンターレ、前回分析したヴィッセル神戸など、各チームが激戦を繰り広げる。外国籍選手の出場枠の増加など、ルール変更もあった群雄割拠の今季、福田正博氏が注目するクラブの戦力分析する。
新シーズン到来を告げる『富士ゼロックススーパーカップ』は、川崎フロンターレが1-0で天皇杯王者の浦和レッズに勝利して初優勝。ロンドン五輪の得点王になった元ブラジル代表FWの新戦力、レアンドロ・ダミアン(←インテルナシオナル)がゴールを決めたことも、川崎にとっては幸先よいスタートとなった。

ゼロックススーパー杯で初優勝した川崎フロンターレ
リーグ3連覇とアジアチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を見据える今季の川崎は、レアンドロ・ダミアンのほかに、右SBにマギーニョ(←ヴィラ・ノヴァ)を獲得。DFラインには、ジェジエウ(←パラナ・クルーペ)や、中盤とDFができる山村和也(←セレッソ大阪)などを補強した。各ポジションにレベルの高い選手を補強したことでバックアッパーは充実した。
川崎のサッカーはコンビネーションを重視するスタイル。そのため新加入の選手がチームにハマらないケースもある。新加入選手がひとりでもスタメンとして計算できるようになれば、戦力アップとしては相当に大きなものをもたらすとも言える。
そうしたチームだからこそ、今季は(齋藤)学には注目している。右膝前十字靭帯損傷の大ケガから復帰した昨シーズンは、コンディション面の問題もあったとは思うが、川崎のスタイルにフィットできなかった。能力は疑いようのないものだけに、彼のドリブルがチームの戦い方の幅を広げる武器になるのか、シーズンを通じて見届けたい。
獲得した戦力の個の能力がチーム力向上に直結するサッカーが浦和だ。オズワルド・オリヴェイラ監督は、川崎ほど連携を必要としないスタイルを採るだけに、新加入選手にとっては個の能力をチームに還元しやすいと言える。
今季はFWに杉本健勇(←C大阪)、MFにエヴェルトン(←ポルティモネンセ)、左サイドに山中亮輔(←横浜F・マリノス)、CBには鈴木大輔(←柏レイソル)らを獲得した。
左サイドに山中をピンポイントで獲得できたことは大きい。左利きの選手を左サイドに置ければ、攻守においてピッチの幅を広げられる。3バックなら中盤の左サイドでプレーでき、4バックなら左SBで起用できる山中が、浦和の攻撃を活性化させる存在になることを期待している。
さらに、FW興梠慎三とMF柏木陽介のバックアップになり得る選手を獲得できたことも大きい。ここ数シーズンの浦和は、興梠と柏木がスタメンを外れたときのスケールダウンが課題だったが、杉本やエヴェルトンを獲得できたことで、コンスタントに成績を残せるのではと期待している。
ただし、強化という視点に立つと、チーム力向上につながる補強は、前年のレギュラーをベンチに追いやる戦力を獲って初めて実現するもの。浦和の場合、興梠や柏木をベンチに追いやるレベルの選手を獲ったときにチーム力が向上したと言える。杉本やエヴェルトンが、シーズンが進むなかでどういう存在になるかにも注目したい。
外国籍選手の試合出場が5人まで可能になった今季は、彼らの出来がチームの成績に大きく影響する。それだけに外国籍選手と、残りの6人の日本人選手をつなぎ、まとめ役になる選手の存在がより重要になっていくはずだ。
その点、名古屋グランパスではそのまとめ役になる日本人選手が誰になるのか。昨季得点王のジョー、司令塔のガブリエル・シャビエル、ボランチのエドゥアルド・ネット、GKランゲラックに加え、昨季大宮アルディージャで40試合12得点のMFマテウスと、U-21ブラジル代表経験のあるMFジョアン・シミッチ(←リオ・アヴェ)を獲得した。
レベルの高い外国人選手が揃う反面、昨季限りで楢崎正剛が引退し、玉田圭司や佐藤寿人らベテランが移籍したこともあって、日本人選手でリーダーシップを発揮する役割を誰が担うのかまだ見えてこない。チームをまとめ、外国籍選手と融合する選手の存在意義は、川崎の中村憲剛を見れば一目瞭然。名古屋も、次代に向けてキャプテンシーを持つ選手を育てることが重要になってくる。
昨季終盤戦は9勝1敗でリーグ戦を終えたガンバ大阪は、宮本恒靖監督が”世代交代”にどう取り組むかに注目している。39歳の遠藤保仁と36歳の今野泰幸の能力はまだまだ高いレベルにあり、サッカーは年齢でやるものではないとはいえ、現実として歳を重ねるにつれて長いシーズンをフルで戦うのは難しくなっているのも事実だ。そこを宮本監督がどう対処していくかは見どころだ。
また、大型補強がなかったことは少し気になる点ではある。宮本監督が補強を望まなかったのか、望んでも思うような補強ができなかったのかはわからないが、他クラブに比べて新戦力獲得人数が少ない。主な新加入選手は、韓国代表のキム・ヨングォン(←広州恒大)ぐらい。昨シーズンから変わらないメンバーで戦い、チームがさらに成熟していくメリットがある一方で、故障者などが複数出た場合、苦しい戦いに陥る危険性もある。
鹿島アントラーズもG大阪と同様に、今シーズンは世代交代に取り組む。昨年限りで小笠原満男が引退。DF陣からはCBコンビの植田直通(→サークル・ブルッヘ)と昌子源(→トゥールーズ)が抜け、西大伍も神戸へ移籍した。
右サイドの西が抜けたことは痛手だが、今季からキャプテンになった内田篤人が鹿島に復帰した昨シーズン以上のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。また、中盤に清水エスパルスから白崎凌兵を獲得できたことは大きい。攻撃的なMFとしてもボランチとしてもプレーできる白崎が、鹿島でどれくらいやるのか注目している。
ポイントになるのはCB。犬飼智也とチョン・スンヒョンを軸に、昨年は徳島ヴォルティスに期限付き移籍していたブエノ、町田浩樹と候補者はいるなかで、楽しみなのが関川郁万だ。流通経済大柏高から新加入したルーキーが、いきなりバリバリやることを望むのは無理な話。だが、出場経験を増やしながら、神戸のビジャや名古屋のジョーといった名だたるFWのスピードや当たりの強さを体感しながら、持ち味の空中戦や対人の強さを一段も二段も高めてもらいたい。フィード能力もあるだけに、経験を重ねていければ数年後には関川が鹿島DF陣の中軸になっている可能性は十分にある。
昨年4位と躍進したコンサドーレ札幌は、都倉賢(→C大阪)、三好康児(→横浜FM)が抜けたが、代わりに鈴木武蔵(←V・ファーレン長崎)、アンデルソン・ロペス(←FCソウル)、岩崎悠人(←京都サンガ)というFWと1.5列目の両方でプレーできる選手を獲得。サイドにもルーカス・フェルナンデス(←ヴィトーリア)、中野嘉大(←ベガルタ仙台)というパスやドリブルでチャンスメイクできる選手が加わり、今季も攻撃的なスタイルでリーグを面白くする存在になる予感が漂っている。
注目は東京五輪世代の岩崎だ。昨夏のアジア大会ではU-21日本代表で最多得点を記録したポテンシャルを持つだけに、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとで才能に磨きをかけてブレイクし、来夏のオリンピックへつなげてもらいたい。
そのほか、セレッソは指揮官がロティーナ監督に代わって、選手も大幅に入れ替わり、どうチームをつくっていくのか興味深い。昨年、粘り強い”清水らしさ”の復活を印象づけた清水エスパルスは、今年もおもしろい存在だ。FWドウグラスが開幕に間に合わないものの、FW北川航也やDF立田悠悟らのさらなる成長に期待している。
今年6月には日本代表が南米選手権(コパ・アメリカ)を戦うこともあり、選手たちは代表入りへのアピールのためにも、開幕から強度の高いプレーを見せてくれるはずだ。