2018年は、高校生スイマー小池さくら(日体桜華高)にとって、試行錯誤を重ねながら、大きな成長を示した1年となった。

冬季練習開けの3月に行なわれた「2018春季記録会」では狙ったタイムに届かず、惜しくも8月のパンパシフィック水泳選手権大会の出場権を逃し、シーズン早々に悔しさを味わった。だが、10月のジャカルタ・アジアパラ競技大会の代表には選出された。

気持ちを切り替え、アジア大会を今年の大一番と位置づけて強化スケジュールも組みなおした。夏場にもしっかり練習を積み、自信をもって乗り込んだジャカルタでは6日間で7種目という過密日程のなか、銀メダル3個、銅メダル1個を獲得。100m平泳ぎではアジア記録を、同自由形では日本記録を更新してみせる健闘ぶりだった。

アジアパラ大会は小池にとって、シニアレベルの国際総合大会としては初の日本代表戦でもあった。ジャカルタの高温多湿の過酷な気候もあり体調を崩す選手も少なくないなか、環境への順応力も示した。

「(専門の)400m自由形で自己ベストを出せなかったのは悔いが残りますが、『イーブンペースで泳ぎ切る』という目標は達成できたかなと思います。100m平泳ぎでもアジア新記録が出せたし、手ごたえのあった1年でした」

水泳を始めて約14年。生後11カ月で患った病の影響で両脚にマヒが残り、日常生活では車いすを使うが、体を動かすことは大好きだった。水泳は保育園時代に始め、中学生から競技として本格的に取り組んでいる。「ほぼ毎日ずっと泳いできて、水泳は『家族』みたいな存在」と笑う。

現在、練習は完全オフの日曜日を除き、週6日。メインは400m自由形だが、4種目すべてを伸ばすことが自由形の強化にもなると、苦手種目の練習にも積極的だ。

小池自身は、急成長した要因のひとつに、筋力アップを挙げる。ここ1年で肩幅など上半身のたくましさが明らかに増した。マシンを使ったトレーニングは週1回だが、プールに入る前のドライトレーニングに加え、学校や練習場への往復など日常生活で車いすを漕ぐことが、「自然と筋トレになっている」とも話す。

中学時代から指導する、峰村史世コーチ(峰村パラスイムスクワッド)は、「コツコツと努力ができ、練習でも全力を出せること」が小池の強みだと話す。今年は、地道に取り組んできたさまざまなことが実を結んだタイミングだったのだろう。

憧れの選手から直接、刺激も受けたことも大きかった。9月に横浜で開催された「ジャパンパラ競技大会」出場のため来日した、アメリカのマケンジー・コーン選手だ。小池と同じ障がいクラスでリオパラリンピックでは三冠に輝いた、小池がもっとも尊敬する選手だ。

「400m自由形のレース中は、どんなことを考えているんですか?」

世界記録保持者に思い切って尋ねてみた。小池自身はペース配分を考えたり、ターンで少しミスするだけでも焦ってしまったり、「いろいろ考えすぎてしまう種目」だが、女王の答えは、「何も考えない。ただ泳ぐだけ」

レースに臨む意識として貴重なヒントを得た。

また、間近で見て、鍛え上げられた上半身の筋肉と肩の柔軟性にも驚かされた。明るく親しみやすい人柄にもますます引きつけられ、「もっと近づきたい」とモチベーションも高まった。

進化を確実に感じると同時に、課題も自覚する。

「がむしゃらに泳ぐことでタイムを出してきたけれど、この先は技術も高めないといけない」

たとえば、自由形では水中で水をしっかりキャッチできるような手の動きに改良中だ。長丁場の400mではより速いペースのままスピードを維持できる持久力向上も課題に挙げる。

今年、急激にレベルアップした平泳ぎも、後半のペースダウンを抑え、イーブンで泳ぐことを目標にしている。また、上半身のパワーに頼るのでなく、下半身も含めた体全体を使うフォームに修正中だ。そのために欠かせないのが腹筋を含めた体幹強化だ。マヒもあるため、なかなか意識しにくいというが、コツコツやり続けることを強みにする。

もうひとつ、今年手ごたえを感じた点として、「メンタルの進化」を挙げる。もともとは、「あがり症」で、緊張しすぎて体に力が入り、実力を発揮できないレースも多かったという。

2016年3月、リオパラリンピック代表権がかかった「2016春季記録会」で、小池は派遣標準記録を切れず代表入りを逃した。独特の緊張感が張り詰める会場の雰囲気と、「絶対に記録を出さなければ」と自分で自分を追い込んでしまったことも敗因だったと振り返る。

だが、悔しい思いは人を成長させる。「レース経験を重ねることで、むしろ、『水泳が好き。楽しもう』と思えるようになった」という。

なかでも、自身の変化を感じたのはレース直前の招集所での過ごし方だ。以前は、「話しかけないでオーラがすごかった」と他選手から指摘されるほどガチガチだったが、最近は自ら積極的に話しかけたり、スマートフォンで動画を観て気分転換をしたり、「自分なりのリラックス術」を身につけた。

また、昨年12月に開催されたアジアユース選手権大会では、同年代の選手が集うなか日本選手団の旗手に選ばれ、「チームを引っ張る責任感」も経験。出場した5種目すべてでメダル(金2、銀2、銅1)を手にし、結果でもチームをけん引し、大きな自信を得た。

今は英会話も勉強中だ。海外選手ともっと話せれば、国際大会の招集所でもよりリラックスでき、さらなる成長にもつながるだろう。

2019年の大勝負は、夏にマレーシアで行なわれる世界選手権になる。この大会でメダル圏内のレースができれば、大目標の2020年東京パラリンピックでのメダル獲得に向け、大きな自信になる。そのためにも、代表権獲得がまず第一歩だ。

選考レースは3月の「2019春季記録会」。雰囲気にのまれていた過去は消し去り、「今度は私から空気をつくっていきたい。緊張感も楽しむことができれば、派遣標準記録も、自己記録も出せるはず」と言葉に力を込める。

まだまだ成長途中の17歳。自身も周囲も、「これから」への期待感がふくらむばかりだ。

*本記事はweb Sportivaの掲載記事バックナンバーを配信したものです。