名古屋グランパスのジョーが完璧に仕上げてきた。 シーズン序盤からゴールを量産すればチームを優勝争いに導くのはもちろ…

 名古屋グランパスのジョーが完璧に仕上げてきた。

 シーズン序盤からゴールを量産すればチームを優勝争いに導くのはもちろん、2年連続での得点王、さらに98年に中山雅史が記録したJリーグ年間最多得点の36ゴールを越えるかもしれない――。



2018年J1得点王のジョー

 昨シーズンは、序盤こそ動きが鈍かったが夏から動きが変わった。

 当時、最下位に沈み、J2降格の危機に陥った名古屋。その救世主としてベガルタ仙台戦(8月1日)ゴールを奪い始めると、7試合で14得点と完全に覚醒した。

「今まで見た中でレベルがまったく違うすごい選手」と、楢崎正剛がべた褒めした高い能力を発揮し、終わってみれば24ゴール(33試合)を挙げ、J1残留に貢献して、得点王にも輝いた。

「最初は、日本のサッカーに慣れるのが難しかった。ブラジルと日本のサッカーを比べると、ブラジルは比較的ボールを持てる余裕があるのですが、日本は少しでも油断するとすぐにプレッシャーをかけられてしまう。そうならないようにボールを持つ前に何をしないといけないのかの判断を、素早く、正確にしないといけない。もちろんサッカー全体のスピードもあるので、慣れるまでちょっと時間が必要でした」

 ジョーが真夏に元セレソンの片りんを見せ始めたのは、日本のサッカーに慣れただけではない。ロシアW杯中断中にコンディションを整えたことが非常に大きかった。減量は5キロ以上にも及び、動きに鋭さが戻った。

「昨年の序盤は、自分のフィジカルやコンディションがよくなくて、体重が重かった。でも、夏前に体重をコントロールできたのが大きかったです。絞ったことで動けるようになり、試合をこなすごとにコンディションが上がっていきました。暑い夏が好きだったのもあり、動けるようになって、パフォーマンスもよくなっていきました」

 夏からは、浦和レッズの槙野智章曰く「動きがわかっていても止められない」選手になり、ジョーは対戦相手のDF陣にとって最大の脅威になった。

 今シーズンは、昨年プレーしたことで風間八宏監督のサッカーや日本の環境にも慣れ、「スタートから飛ばすよ」と、冷静に語る。

「今シーズンは、日本のサッカーや対戦相手のことをしっかり理解したうえでシーズンをスタートさせることができる。また、昨シーズンやってきた風間監督のサッカーを今シーズンも継続していけるので、迷いもない。気持ち的に非常に落ち着いて今シーズンに入れます」

 昨年の序盤は風間監督が求めるサッカーに戸惑い、早いパスワークで味方との息を合わせるのに時間を要した。チームも波に乗り切れず、最終節まで残留争いをするなど苦戦した。「その経験が生きている」とジョーは実感している。

「昨年の戦いが今年のベースになっています。連勝した期間もあり、中盤は悪くなかったですが、終盤は残留争いをしてしまった。その経験がチームのベースとしてあり、共有できています。それに、今年はクオリティの高い新しい選手が入ってきました。我々にとって彼らはすごくいい刺激になり、チームが昨年よりも明らかに成長しているのをトレーニングから感じています。ピッチ外も雰囲気もすごくいいですね。それがよければピッチ内はさらによくなるので、今年はスタートからいいポジションにいられるのではないかなと思います。

 個人的にも調子がいいです。昨シーズンが終わった時の体重と今はほとんど変わっていないので、開幕からいいプレーをお見せできると思います」

 良好なコンディションを保つことができたのは、昨シーズン終了後からトレーニングを続け、ブラジルで栄養管理士に食事のコントロールをしてもらってきたからだ。

「そのおかげで、今は92キロ。昨年の今ごろは97キロ以上あったと思うので、このぐらいが自分のベストな体重です。自分の特徴のひとつである素早いターンからのシュートなど、トレーニングをしていて昨年よりもキレがあり、トレーニングマッチでもよく動けています。これはオフの成果だと思います」

 おそらく本当に調子がいいのだろう。話をしていると自然と白い歯がこぼれる。

 ところで、ジョーにとって「調子がいい」というのはどういう状態なのだろうか。

「個々のプレーで判断するのではなく、試合でいかに自分がイメージどおりに動けているか。90分、どれだけ動けているか。さらに試合後、どのくらい疲労が残っているか、で判断しています。試合で動けて、疲れを感じない時は自分の調子がいいということ。もともと、自分は試合に出続けると調子がどんどんよくなるタイプ。そうして、自分のサッカーのリズムを整えていくと試合で活躍できる」

 今年は、昨年以上にゴール前での存在感を高め、風間監督のパスサッカーをピッチ内で先頭になって具現化していく役割が求められる。年齢的にも、楢崎が引退し、佐藤寿人が千葉に移籍した今、千葉和彦らとともにチームを牽引する存在になっている。

「風間監督のサッカーは攻撃的で非常に楽しい。周囲にいる選手も技術が高く、息が合うようになって、いいタイミングでボールが出てきます。攻撃にストレスはないですし、今年はもっとよくなるでしょう。スタートダッシュをして、トップを目指したい」

 そのためには、昨年以上のゴール数がジョーには求められる。

 昨年から一緒にプレーしている前田直輝やガブリエル・シャビエルらとはもちろん、新加入のマテウス、榎本大輝らとも早く息を合わせることができれば、前年度のゴール数を超えるのは決して難しいミッションではない。

「FWとしてゴールを決める役割が自分にはあります。今年はどれだけゴールを決められるか、チームをどこまで上位にもっていけるか。チームのために貢献したいですし、それがゴールというのはわかっています」

 ジョーは具体的な数字を示さなかったので、「昨シーズンの23点以上か?」という問いを投げかけた。すると、ジョーは笑ってこう言った。

「まぁ見ていてください」

 謙虚な元セレソンの言葉の裏には圧倒的な自信が垣間見える。今シーズン、「褒められるとうれしい」というジョーが、真っ白な歯を見せて笑顔になる回数がかなり増えそうだ。