「とにかく今年は大瀬良大地がすごいですよ。気合いが入っています。大いに期待してください」 そう語るのはベテラン捕手・…

「とにかく今年は大瀬良大地がすごいですよ。気合いが入っています。大いに期待してください」

 そう語るのはベテラン捕手・石原慶幸である。昨シーズンは最多勝、最高勝率の二冠を達成し、リーグ3連覇の立役者となった。そんなチームの絶対的エースとなった大瀬良が、自身初の開幕投手に向けてさらに進化を遂げているというのだ。



自身初の開幕投手に向けて調整を続ける大瀬良大地

 大瀬良はキャンプ2日目にブルペン入りし、真っすぐのみ50球を投げた。「7割程度の力」とバランスを重視し、立ち投げのみの初ブルペンだったが、たしかにミットを叩く音は、投手陣のなかでも際立っていた。

 畝龍実(うね・たつみ)投手コーチも「キレ、強さとも近年のキャンプ序盤と比較しても非常にすばらしい」と絶賛し、大瀬良の充実ぶりには目を見張るものがあるという。

 その要因のひとつとして挙げられるのが下半身の充実にある。畝投手コーチは「着地した瞬間の左足の締め方がいいから体が開かない」と説明する。この安定した下半身の強さが開きを防ぎ、その後のスムーズな体重移動へとつながり、ボールにたしかな力を伝える。そのための「左足の締め」が、例年以上に強いと言うのだ。

 大瀬良自身「下半身に多少の張りが残っている」と語っていたが、畝コーチは「昨年あれだけ投げてくれたので仕方ない。ただ、それだけ上体だけに頼らず、しっかり下半身を使えている証」とメカニズム上の問題ではないと強調。時間の経過とともに万全の状態になると、まったく心配していない。

 大瀬良の指名を受けてキャッチボールパートナーを務めているルーキーの島内颯太郎は言う。

「キャッチボールの段階から、今まで見たことがないような回転のいい球を投げてくる。これが一流と言われる人のキャッチボールかと……」

 昨年のドラフトで2位指名を受けた島内は、大瀬良と同じ九州共立大の出身。最速152キロを誇り大学日本代表候補にも名を連ねた実績を持つ右腕だ。大瀬良の卒業翌年に入学したために接点はなかったが、大学時代はことあるごとに九州共立大の上原忠監督から大瀬良の名前を持ち出されハッパをかけられてきた。

「『大瀬良は全体練習が終わった後もポール間を50本走っていたんだぞ』と。当時は内心『それは言いすぎだろ』と思っていましたが、大瀬良さんに聞いてみると、実際は50本ではなく70本だったそうです。監督が言っている以上の本数だったんですよ。今年の新人合同自主トレでも2日間ほど大瀬良さんは参加されていたのですが、最後まで残って黙々とトレーニングをされていた。キャッチボールで見せるキレ味の理由が、今にしてわかった気がします」

 第2クールに入って視察に訪れた日本代表の稲葉篤紀監督は、次のように大瀬良を評した。

「2015年に初めて代表入りした時と比べて堂々としているし、制球力を含めて数倍成長している。もちろん今秋のプレミア12や来年の五輪で代表チームに名を連ねるだけの力がある」

 キャンプ地で行き交うあらゆる人々が「今年の大瀬良はすごい」、「気持ちの乗りが違う」と口を揃えるのである。大瀬良は言う。

「たしかに気合いは入っていますね。(昨年は)個人的に成績を残せてモチベーションが上がっているのもありますが、一番は最後の最後で悔しい思いをしたこと。本拠地で相手の胴上げを見せつけられて、日本一を逃したこと。あの時に味わった(悔しい)思いが今のボクを突き動かしています」

 3年連続でリーグ優勝しながら、日本シリーズで2度も敗れ、一昨年はクライマックス・シリーズ敗退の屈辱を味わった。

 さらに昨年のチーム防御率は前年から0.7ほど悪化し、4点台(4.12)にまで落ちたことも、大瀬良に危機感を煽っている。

 また、2年連続MVPを獲得するなどチーム最大のポイントゲッターであった丸佳浩が巨人に移籍し、打線は再編を余儀なくされることは間違いない。それゆえ、現状では投手陣に頼らざるを得なくなることが増えてくる可能性が高い。なかでも大瀬良にかかる期待は例年以上に大きい。

 悲願の日本一達成に向け、大瀬良は並々ならぬ覚悟で挑むつもりだ。

「一番意識しているのはイニング数です。200という数字はなんとかクリアしたいと思います。200イニングに到達すれば、自ずと勝ち星も防御率もいい数字が残ってくると思う」

 昨年は自己最多の182イニングを投げた。沢村賞を受賞した巨人の菅野智之のみが200イニング以上(202)を達成し、大瀬良と並ぶ15勝を挙げての最多勝や最多奪三振のタイトルを獲得し沢村賞にも輝いている。

「200イニング、15勝以上、防御率2.50以下」を今季の目標に掲げる大瀬良が、今キャンプで放ち続ける「すごみ」には、「昨年の菅野が残した投手成績に近づき、上回ることが4連覇達成の絶対条件」というエースとしての覚悟が見てとれる。

 第2クールの途中、大瀬良は緒方孝市監督から「自分のやりたい調整のなかでやってくれればいい」とすべて一任されている。

「とにかく責任感を持って開幕を狙う」と大瀬良は言い切る。開幕戦の相手となるのは巨人。なんとしても菅野に投げ勝ち、チームに勢いをもたらせたい。そうすればリーグ4連覇はもちろん、悲願の日本一も現実味を帯びてくる。