『早稲田のLB』 LB中村匠(人=大阪・豊中)。その存在は早稲田のLB陣にとって『絶対』だ。素早い判断力とタックルのクロージングスピードはチーム随一。パスプレーにもランプレーにも必ず絡み、攻撃の芽をつみ取り続けた。今年度BIG BEARSの…

『早稲田のLB』

 LB中村匠(人=大阪・豊中)。その存在は早稲田のLB陣にとって『絶対』だ。素早い判断力とタックルのクロージングスピードはチーム随一。パスプレーにもランプレーにも必ず絡み、攻撃の芽をつみ取り続けた。今年度BIG BEARSの副将を務め、ディフェンスリーダーとしてチームを牽引。関東大学秋季リーグ戦(リーグ戦)制覇の大きな原動力となった男のフットボール人生を振り返る。

 今年度のリーグ戦ではQBサックやロスタックルといった数字に残る結果は出していない中村匠だが、リーグ戦は全試合スタメン出場。ディフェンスの要として、常にフィールドに立ち続けた。持ち前の身体能力に大学4年間で培った経験とインテリジェンスを加え、学生界屈指のLBに成長。目標と語るコグラン・ケビン(平27商卒=現IBM BIGBLUE)と加藤樹(平28商卒=現IBM BIGBLUE)に続く『早稲田のLB』として、存在感を放った。


春の早慶対校戦から活躍を見せた

 「自分の成長だけではなく、チームの成長につながるようにするという点を考えながらプレーしてきました」。最上学年となり、ディフェンスリーダーという大役を担ったこともあり、チーム全体のことを考える時間が増えた。そんな中でも特に下級生の育成に力を入れ、昨年度までと比べ練習量もかなり増やした。そんな中で次期主将であるLB池田直人(法3=東京・早大学院)やLB杉田直人(法3=東京・早大学院)が大きく成長。「チームの核となるメンバーに育ってくれるよう楽しみにしています」と、後輩たちには来年度の中心戦力としてディフェンスを支えられるよう期待をかける。

  中村匠を語るにあたって絶対に外すことのできない一日がある。2016年12月18日(日)。阪神甲子園球場にて行われた第71回毎日甲子園ボウル(甲子園ボウル)。この試合に出場した当時2年生の中村匠は躍動した。アグレッシブなディフェンスを武器に、好タックルを連発。強力関学大RB陣を脅かし続け、観客を沸かせた。この一日をもって、無名に近かった中村匠の名は全国に知れ渡った。

 この甲子園での中村の活躍に対し、ふつふつと闘志を燃やす男がいた。中村の高校時代からの同期であり、今年度オフェンスリーダーを務めたエースRB元山伊織(商=大阪・豊中)だ。高校時代、オフェンスでは元山がFB、中村がTBでランユニットを組み、ディフェンスでは共にLBとして、常に一緒にプレーをしていただけに信頼関係は強い。大学入学後は元山がRB、中村がLBに専念したためポジションは異なったが、大学でもお互いに意識しあい切磋琢磨してきた。そんな2人が先頭に立ち引っ張る今年度のオフェンスとディフェンスの関係性について中村は、「歴代の中でも一番強い信頼関係がある」と語る。


2年ぶりに戻ってきた甲子園、勝利を挙げることはできなかった

 「試合が楽しかったし何より同期と出会えたことが四年間で一番有意義なことだった」。ディフェンスの中心としてチームを支えてきた早稲田ディフェンスの要が、エンジのユニフォームを脱ぐ。強い『早稲田のLB』の系譜は中村から後輩たちへと引き継がれていく。大舞台でこそ別格の輝きを放つ男は、社会という無限に広がる大海原でどのような輝きを放つのか。新たな挑戦が中村匠を待ち構える。

(記事 涌井統矢、写真 藤田さくら、小田真史)