トップ・オブ・トップの実力を備えながら、これほどポーカーフェイスができない選手も珍しい。ガンバ大阪のボランチ、今野泰幸…

 トップ・オブ・トップの実力を備えながら、これほどポーカーフェイスができない選手も珍しい。ガンバ大阪のボランチ、今野泰幸のことだ。

 強烈な負けず嫌いで、それが今野のキャリアをここまで引き上げてきたのは間違いない。しかし、その割には「不安です」「無理っす」と、すぐにネガティブワードを口にし、そうした感情が表に出てしまうのだ。



今年1月で36歳となったプロ19年目の今野泰幸

 もちろん、それが人間味あふれる今野の魅力なのだが、沖縄で行なわれたG大阪の2次キャンプでも”弱気な今ちゃん”の姿があった。

「コンディションがよくなくて。全然上がってこないんです……」

 G大阪は2月6日にFC東京と、9日に川崎フロンターレと練習試合を行なった。いずれの試合でもレギュラー組が出場した1、2本目で遠藤保仁とコンビを組んだのは、ベガルタ仙台への期限付き移籍から復帰した矢島慎也だった。

 昨シーズンのJ1残留の立役者である今野は、プロ3年目の高宇洋(こう・たかひろ)と2ボランチを形成して3、4本目に出場した。

「対戦相手との力関係や展開によって、この組み合わせもあると思います。去年の終盤、ヤット(遠藤)や今ちゃんがチームにもたらしたものは残っているので、ヤン(高の愛称)も含めて全員の力で戦っていく意識を持ってやってもらっています」

 そう語るのは、チームを率いる宮本恒靖監督である。遠藤と今野の組み合わせのよさはすでに把握しているから、今さら試すまでもない。だから今は、いろいろな組み合わせを試し、戦い方の幅を広げたい--。そんな想いが伝わってきた。

 しかし、今野は「監督からは何も話されていないし、聞いていない」と前置きしたうえで、「でも、自分では(サブ組での出場を)納得しています。今はまだ(レギュラー組では)出られる状態ではないので」と語り、遠藤とのコンビに関しても「去年は阿吽(あうん)の呼吸で、やることがすべてわかっていたし、いい関係を保てていたけど、今はヤットさんとプレーするイメージができない」と嘆くほどなのだ。

 メンタルが落ち込んでいる要因は、どうやら疲労にあるようだった。

「オフにはしっかり休んで、1次キャンプも楽しくやっていたんですけど、2次キャンプに入って練習試合が多くて、移動もあって、疲れが溜まってきてキツくなってきた。それが原因なのか、コンディションが全然上がらなくて……。これまでキャンプからスタメン組にいることが多かったから、こうした状況は初めて。それで戸惑いもあるのかもしれません」

 振り返れば昨季、シーズンの半分を欠場することになる足首のケガを受傷したのも、沖縄キャンプでのことだった。ケガは思いのほか重傷で、5月に手術を余儀なくされてワールドカップを棒に振り、復帰は後半戦まで待たなければならなかった。

 今回のキャンプでも川崎戦で再び足首を痛めてしまい、「(ケガの状態は)そんなに重くはないですけど、このグラウンドとは相性が悪い」と苦笑するしかなかった。

 昨シーズンは負傷から復帰すると、獅子奮迅の働きで中盤を締め、苦しむチームを蘇らせた。今野が戦列に戻った9月1日の川崎戦で4試合ぶりの勝利を飾ったチームは、そこから9連勝を飾って一気に浮上する。

 その事実に、今野もあらためて自信を深めていた。

「残留争いという難しいシチュエーションのなかで、メンタルの部分を乗り越えて自分のプレーで勝利に貢献できたので、ひと皮むけた感覚があったんです」

 だから今野は、自身に言い聞かせるようにして言うのだ。

「去年もケガを乗り越えられたんだから、今のこういう苦しい状況も乗り越えられれば、また強くなれると思う。それは自分次第なので、これからですね。もちろん試合に出たいので、コンディションをしっかり上げてメンバー争いに加わっていきたい」

 復帰戦となった昨シーズンの川崎戦の前、今野はやはり今と同じようにややこわばった表情で、「わからない」と繰り返していたという。ところが、連覇を狙う川崎を2−0と下し、ミックスゾーンに姿を現した今野は、前日までの不安そうな表情が嘘のように、「俺、持ってる」と誇らしげに言ったという。

 このテンションの乱高下も、今野が愛される理由のひとつだろう。だから、今のネガティブな今野が横浜F・マリノスとの開幕戦を境に、一気にポジティブに変わる可能性は十分ある。

 プロ19年目を迎える36歳。しかし、遠藤が39歳であることを考えれば、老け込むには早すぎる。真価の問われる宮本体制2年目、G大阪の躍進に中盤の職人である今野の存在は、絶対に欠かせない。