今シーズン、J1セレッソ大阪の監督に就任したミゲル・アンヘル・ロティーナが着手したチーム作りは、まだまだ途上にある…

 今シーズン、J1セレッソ大阪の監督に就任したミゲル・アンヘル・ロティーナが着手したチーム作りは、まだまだ途上にある。2月17日、開幕を1週間後に控えたJ2レノファ山口戦も、敵地で1-0と敗れた。ノッキングする箇所は少なくなかった。

 しかし、スペイン人指揮官ロティーナには道筋が見えている。J2東京ヴェルディからJ1のチームを率いるようになって、必要な人材が手に入るようになった。



今季からセレッソ大阪の指揮を執るミゲル・アンヘル・ロティーナ

「サイドを崩したい」

 スペイン人監督はヴェルディを率いていたときから、その理想を洩らしていた。ロティーナ自身がバスクのクラブ出身で、クロスを叩き込むタイプのセンターフォワードだったこともある。指導者としても、体に染み付いている戦い方なのだ。

 しかし、ヴェルディでは相応の戦力に恵まれなかった。Jリーグにはサイドバックも、サイドアタッカーも乏しく、空中戦に強いセンターフォワードも屈強なバスク人から見たら物足りない。システムよりも選手ありき。ヴェルディ時代は3-4-2-1とも、5-4-1とも言える「守備を安定させて攻撃を旋回させる」という戦術を選び、サイドバックも、サイドアタッカーも使わなかった。

 セレッソでの戦い方は、システムから変化している。山口戦では、4-3-3、4-4-2、4-2-3-1と変えながら、いずれも4バックを採用。サイドは常に大きく開き、高い位置をとった。ボールを運ぶルートを作り、その精度を高める。選手のポジショニングが流動的に最適解を求められる、より難しい戦い方だ。

 いくつかのポジションで戦術を運用できない選手がいるのは現状で、完成形には程遠いだろう。

「負けるのは好きではないが、満足のできる出来だった」

 そう静かに語ったロティーナは、J1を舞台に名将の真価を見せられるのだろうか。

――志向するサッカーをするために、(水沼宏太のような選手が)必要だったのでは?

 そう水を向けると、ロティーナは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「ふふふ。賢いし、クロスがいいね」

 水沼宏太はロティーナの戦い方を左右する選手と言える。日本には少ないサイドアタッカー。サイドで時間を作ることができるし、コンビネーションに長け、斜めに走って決定的な仕事もできる。何よりクロスの精度が高い。幅を作って、深みを作るというサイドの仕事ができるのだ。

「(ロティーナが来て)サッカーがうまくなっている、というのを感じています。それは他の選手もそうで、いろいろあると思いますが、焦らずに信じてやっていこう、と思っています」

 山口戦でキャプテンマークを巻いた水沼は、そう言って顔をほころばせた。

「今までのセレッソは、選手たちが自由にプレーして、というところが多かったです。だから、ロティーナ監督が来たときは、ギャップもありましたね。でも、好き勝手に動くのではなくて、まずはとるべきポジションをとっていれば、結果的により自由にプレーができるんです。シンプルにさばいて、フリーでボールが出てくる感じで、ゴールに早くつながる道筋が見えるというか」

 山口戦、前半のセレッソは後手に回った。わずかだが、パスがずれ、動きがずれていた。しかし後半になって、左サイドの選手2人を代え、前線に都倉賢を入れてテコ入れすると、好機が増える。後半アディショナルタイムには、交代で入った清武弘嗣が時間を作って出したパスに、右サイドの水沼が走り、折り返したクロスに都倉賢が合えば……というシーンもあった。

「戦術理解力が問われますね。その部分を評価されるのは、自分は嬉しい」と水沼は言う。

「選手は、特徴を生かせるポジションを与えられています。もちろん、尹晶煥(前)監督のときも任せてもらっていたんですが、今はピッチに立つだけで、そういうロジックなんだな、と頭でも納得できるというか。視界が開けて、自信を持ってプレーできつつあります。これからですね」

 今シーズンのセレッソは選手の入れ替えが激しい。杉本健勇(浦和レッズ)、山口蛍(ヴィッセル神戸)、山村和也(川崎フロンターレ)ら主力が移籍し、都倉、藤田直之らが加入。この日は柿谷曜一朗が足首の痛みで大事をとって休み、清武もようやく試合に合流できたにすぎない。土台があっただけに、新しい戦術を運用するには時間がかかる。たとえば、後半に出場した都倉はボールを呼ぶこむ能力の高さを見せており、あとひと息と言ったところか。

 ロティーナの戦い方はじっくり浸透していくもので、だからこそひとつの形になったときには揺るぎがない。

「動き方のオプションも、いくつもトレーニングしています。いい位置について、ディフェンスがついて、それを頭に入れると、実際のプレーで同じことが起こるようになっています。それで、ペップ(ジョゼップ・グアルディオラ)のマンチェスター・シティとかの試合を見ていると、似たようなシーンが起こるので、今までは漠然と見ていたゲームも、考えながら見ている感じになって、サッカーがすごく楽しくなっています!」

 水沼はそう言って相好を崩した。

 今は布石を打っている段階で、勝負の行方は見えない。霜田正浩監督が率いて2年目の山口の方が、戦い方の輪郭は見えた。しかし、戦い方は日々鍛えられる。

「短所も出たので、どんどん改善していく。前半はもっと早くコンビネーションを使って攻めるべきところで、もたついていた。ただ、選手はそれぞれキャラクターを出してくれたと思う」

 試合後、ロティーナ監督は振り返った。ヴェルディ時代よりも高度な戦い方だけに、置き去りになる選手もいるだろう。セレッソの選手たちは、自らのプレーをアップデートすることができるか。

 2月22日、本拠地ヤンマースタジアム長居。Jリーグ開幕戦、ロティーナ・セレッソは、スペイン人監督フアン・マヌエル(ファンマ)・リージョが率いるヴィッセル神戸を迎える。