得点差以上の完勝だった。 Jリーグの新たなシーズンの幕開けを告げる、FUJI XEROX SUPER CUP。昨季…
得点差以上の完勝だった。
Jリーグの新たなシーズンの幕開けを告げる、FUJI XEROX SUPER CUP。昨季J1王者の川崎フロンターレは、同天皇杯王者の浦和レッズを1-0で下し、シーズン最初のタイトルを手にした。
試合は序盤、浦和がボールを保持する展開でスタートした。しかし、試合の流れが大きく川崎に傾くまでには、さほどの時間を要しなかった。
川崎が高い位置から仕掛けるプレスの前に、浦和はパスをつなげない。次第に浦和はボールを保持することすらできなくなり、一方的な川崎ペースへと、試合は推移していった。
対照的に川崎は、浦和陣内でパスをつないでゴールに迫ると、一度ボールを失っても、攻撃から守備へのすばやい切り替えと強度の高い囲い込みで、すぐに奪い返すことに成功。特に後半は、常にボールを保持した状況で試合を進めた。
川崎の得点は、わずかに1点。川崎の鬼木達監督も「できれば、もう少し得点を決め切りたかった」と、反省の弁を口にする。
だが、浦和に許したシュートは、わずかに1本。相手に反撃の糸口すら見出させない試合展開は危なげなかった。
鬼木監督は、昨季の同じ試合(セレッソ大阪に2-3で敗れている)を引き合いに出し、満足そうに語る。
「去年の時点では、(攻守の)切り替えや球際(の争い)など、いろんなところが出来上がっていなかったので、まだ今日のようなゲームはできなかった。だが、今年はコンディションに関係なく、全員が意識を持てれば、こういうゲームになる」
トレーニングで積み重ねてきたものさえ出せば、嫌でもいいゲームになる――。なるほど指揮官の言葉どおり、川崎の強さからは、昨季J1連覇を成し遂げた主力メンバーがほぼそのまま残っているがゆえの、成熟度の高さがうかがえた。
とはいえ、川崎の強さは継続性だけに支えられているわけではない。今季新たに加わったストライカーの存在が、「川崎、強し」の印象を強く与えたのは間違いない。
この試合で決勝点となる貴重なゴールを決めた、FWレアンドロ・ダミアン(インテルナシオナル/ブラジル→)である。

フロンターレの新たな助っ人、レアンドロ・ダミアン
身長188cmのブラジル人ストライカーが川崎にもたらすメリットを挙げるとすれば、MF中村憲剛が「うちが使いたいスペースを埋めてくる相手に対しては、上(空中戦)が有効になる」と語るように、まずは高さである。
あいさつ代わりの決勝ゴールも、左サイドからのクロスを自ら正確にヘディングでゴール前に落としたことから生まれたものだ。DF谷口彰悟は「クロスに対してもそうだが、ちょっと困ったときの(ロングボールの)ターゲットにもなれる。新しいオプションとして(攻撃の)幅を広げてくれる選手」と、頼もしい新助っ人を絶賛する。
とはいえ、レアンドロ・ダミアンは、ブラジル人選手らしく足もとの技術にも長けており、前線でのポストプレーも巧みにこなす。この試合でも何本もの縦パスが、背番号9の足もとに向かって放たれ、それを”スイッチ”に川崎の攻撃がスピードアップしている。
従来の川崎は、どちらかと言えば、機動力のあるタイプの選手を前線に並べることが多かった。これによって生み出される流動性が、川崎の武器でもあった。
しかし、流動性はときに秩序を失い、とりとめのない渋滞を引き起こすこともあった。選手個々は何とか相手ディフェンスを破ろうと必死なのだが、それがむしろチームとしてのバランスを崩し、手詰まり感を漂わせる結果になってしまうのだ。
ところが、レアンドロ・ダミアンが前線中央にポジションを取ることで、流動性のなかに、いわば”中心点”が生まれた。周囲の選手たちは、それを目印に自分が取るべきポジションを見つけることができる。
右サイドにいたFW小林悠が中央に入ってきて2トップ然と構えたり、大島僚太と守田英正の2ボランチがゴール前に飛び出したりと、この試合でも川崎の各選手は、かなり大きくポジションを動かしてプレーしていたが、それでもバランスを崩すことはなかった。レアンドロ・ダミアンの加入は、彼自身の能力もさることながら、チーム全体に及ぼす影響という点でも、川崎に大きな戦力アップとなりそうだ。
もちろん、川崎に不安要素がないわけではない。
今季、清水エスパルスへと移籍したDFエウシーニョは、繊細な調和が持ち味の川崎にあって異彩を放ち、いい意味で調和を破壊するプレーが特長的だった。右サイドから豪快に相手ゴールへと突き進む推進力は、特に拮抗した試合で、貴重な得点源となっていた。それだけに、彼の抜けた穴は大きく、簡単に埋められるものではない。
だとしても、総合的に考えれば、川崎が今季J1で頭ひとつ抜けた存在であるのは間違いない。
この試合に途中出場した控え選手を見ても、川崎は全体的にレベルが高く、選手層は厚い。選手交代をするたびにチームとしての機能性が低下していった浦和とは対照的に、川崎は誰が出てきてもすんなりと試合に入ってしまう、戦術浸透度の高さもうかがわせる。
川崎、強し。
3連覇がかかるシーズン開幕を目前に、ディフェンディングチャンピオンが優勝候補筆頭の前評判に違わぬ強さを見せつけた。