日本を本拠地とするスーパーラグビーチーム「サンウルブズ」が2月16日、シンガポールでのシャークス(南アフリカ)戦で4年目のシーズンを迎える。今週末に開幕するスーパーラグビーとは、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンといったワールドカップ上位の強豪国に日本を加えた計15チームで争われる、国境を越えたプロリーグだ。



外国人選手の増えたサンウルブズで日本代表候補選手はポジションを奪えるか

 2015年のラグビーW杯、日本代表は南アフリカ代表を倒す歴史的金星を挙げた。そのメンバーのなかでスーパーラグビーを経験していた日本代表プレーヤーは、SH(スクラムハーフ)田中史朗、HO(フッカー)堀江翔太、FL(フランカー)リーチ マイケル、PR(プロップ)稲垣啓太と、数えるほどだった。

 2016年、サンウルブズがスーパーラグビーに参戦した理由のひとつは、2019年の自国開催W杯を見据え、日本代表選手の強化にあった。彼らに強度の高い試合を数多く経験させるのが狙いである。

 その強化を加速させるために、昨年は日本代表ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)がサンウルブズの指揮官を兼任した。2015年にハイランダーズ(ニュージーランド)をスーパーラグビー初優勝に導いたジョセフHCのもと、外国人選手を上手にミックスさせつつ、6月のテストマッチ前には代表選手を休ませながら、ほぼ「サンウルブズ=日本代表」という構図で世界最高峰リーグに臨んだ。

 サンウルブズの成績は1年目=1勝、2年目=2勝だったが、参入3年目の昨年は3勝。代表選手揃いの強豪チームを相手に接戦を演じるなど、徐々に強化の成果は表れてきた。

 ただ、W杯イヤーの今年は状況が異なる。「サンウルブズ=日本代表」という構図ではない。

 まず、ジョセフHCが日本代表に専念するため、サンウルブズの指揮官を降りた。以前から務めていた「チームジャパン2019総監督」として日本代表を指導しつつ、両チームを総括的にマネジメントする立場に戻った。そしてサンウルブズの指揮官には、日本代表のアシスタントコーチを務めるトニー・ブラウンが新たに就任した。

 ブラウンHCは元ニュージーランド代表のSO(スタンドオフ)で、2005年~2011年は三洋電機(現パナソニック)でもプレーした。ハイランダーズのアシスタントコーチ時代からジョセフHCの片腕として支え、2017年にジョセフHCが日本代表の指揮官に就任した後、ハイランダーズのHCも経験している。

 ブラウンHCは戦術に長けたコーチとして世界的に知られている人物だ。FWとBKが一体となった4つのユニットを並べ、空いているスペースにキックを使って攻める戦い方を信条としている。昨年5月のスーパーラグビーの試合でも、真ん中のユニットにFWではなくCTB(センター)を立たせた戦術を試し、それがうまくいくとすぐに日本代表でも実践した。

「革新的なラグビーがしたい」とブラウンHCが語気を強めるように、今年もスーパーラグビーで新しい戦術を試しながら、うまくハマれば日本代表でも採用するだろう。「セットプレーをできるだけ避け、ボールインプレー(フィールドでボールが止まらず動く)の時間を長くするスタイルで、勝てる可能性を最大限に広げたい」。

 サンウルブズの練習初日には、SOが起点となるオープンサイドへのハイパントキックを入念に確認していた。素早いパスでコントロールするSH茂野海人や、正確無比なキックが武器のSOヘイデン・パーカーには、自分からアタックを仕掛けることを求めているという。基本的なスタイルこそ変わらないが、昨年までとは違う戦い方も見られるはずだ。

 また今年は、選手の強化体制にも大きな変化があった。まず、スーパーラグビーで結果を残すべく、1月中旬から合宿に入ったサンウルブズと、2月から合宿を行なっている日本代表候補選手という、ふたつのチームが併走するスケジュールとなっている。

 昨年12月末、W杯に向けた日本代表候補選手(第3ワールドカップトレーニングスコッド)38人(FW=23人、BK=15人)と、それに準じる「NDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)」の18人(FW=10人、BK=8人)が発表された。選ばれた選手たちに大きなケガなどがなければ、W杯メンバーはこの計56人のなかから31人に絞られる。

 サンウルブズはスーパーラグビー開幕に向けて、現在35人ほどで活動している。NDSを含めた日本代表候補選手のなかからサンウルブズに参加しているのは、PR山下裕史、HO坂手淳史、LO(ロック)ヘル ウヴェ、SO松田力也、CTB中村亮土など、FW=9人、BK=5人の計14人だ。彼ら14人は、日本代表の主力選手がサンウルブズに入ってくる前にアピールをする必要がある。

 昨年、日本代表やサンウルブズで試合出場時間の長かった主力選手たちは、12月中旬から約1月半ほどの完全オフが与えられた。今年9月のW杯本番を見据えて、心身ともに休養してもらうのが狙いである。

 今年2月には、NDSも含めた日本代表候補選手30人ほどが合宿をスタートさせた。彼らは約6週間のトレーニングを重ねた後、サンウルブズに合流するか、そのまま残って昨年「ジャパンA」として活動したようにチームを編成し、スーパーラグビーの2軍などと戦う予定だ。

 サンウルブズでGM(ゼネネラルマネジャー)を務める15人制男子日本代表子の強化副委員長、藤井雄一郎はこう語る。

「外国人選手が多いと思うかもしれないが、今年のサンウルブズの目標は、まず勝つこと。昨年は日本代表候補選手にスーパーラグビーを経験させることも目的だったが、今年はスーパーラグビーで勝てるチームの内側で競争をしてもらう。ワールドカップでアイルランドやスコットランドに勝つには、本物のスーパーラグビー選手を生み出さないといけない」

 つまり、日本代表候補選手たちは、外国人選手が増えたサンウルブズのなかで、実力でポジションを奪わなければならない。

 日本代表主将のリーチは、現体制を歓迎している。

「サンウルブズで試合ができるのは、大きなアドバンテージ。僕らは(W杯までの)9カ月間、ずっと強化できる。だから(W杯では)言い訳はできない」

 今年のサンウルブズは、スーパーラグビーでのプレーオフ進出を目標に掲げている。一方、スーパーラグビーを使って、W杯で勝てる、スーパーラグビーで通用する選手への成長もうながす。日本代表のジョセフHCと、サンウルブズのブラウンHCのもと、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ではなく、「一石二鳥」「一挙両得」につながるマネジメント能力が問われるシーズンだ。