名古屋グランパス・米本拓司インタビュー@後編 高校を卒業後、FC東京に10年間在籍してきた米本拓司が今オフ、新天地と…
名古屋グランパス・米本拓司インタビュー@後編
高校を卒業後、FC東京に10年間在籍してきた米本拓司が今オフ、新天地として選んだのは名古屋グランパスだった。チームを率いるのは、個の技術を高めることに定評があり、現在のJ1王者である川崎フロンターレの礎(いしずえ)を築いた風間八宏監督である。
米本の移籍の決め手となったのも、風間監督の教えを請うてみたいという想いだった。決断に至る背景に迫った前編に続き、後編では徹底して「止める・蹴る」を繰り返す、新天地での奮闘に迫った。
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MF米本拓司(よねもと・たくじ)1990年12月3日生まれ、兵庫県伊丹市出身
―― 名古屋グランパスについても聞かせてください。あらためて、名古屋で何を身につけたいと思っていますか?
米本拓司(以下:米本) 名古屋のサッカーをやるうえで、自分に技術が足りないのはよくわかっています。でも、1、2週間で急にうまくなれるわけではないので、技術に関しては、半年とか1年という長いスパンで考えていて。この1年は絶対に苦労すると思うんです。その覚悟はしているので、そこはもう、毎日、毎日ボールを蹴って、みんなに追いつきたい。
そのなかで、自分の特長である守備の部分を存分に発揮して、チームに貢献したいですね。半年後、1年後にうまくなっている自分を想像したらワクワクするし、「名古屋に行って大丈夫?」と思っている人たちに1年後、「米本って、あんなにうまかったっけ」って言わせたい。というか、見返したい。
―― かなり前の話ですが、中村憲剛選手が多摩川クラシコのあと、「ヨネが『風間さんのサッカー、どうですか?』って熱心に聞いてきたけど、興味あるのかな?」と言っていたことがあります。興味があったんですか?
米本 言ったかもしれないですね。すごく興味がありましたから。風間さんの記事を読んで、「こういう考え方もあるんだ」とか、「なんでフロンターレの選手って、あんなにうまいんだろう」とか。
―― ガラッと変わりましたからね。少し前まで、城福(浩)さんの東京のほうがボールをつないでいたのに、川崎の監督が風間(八宏)さんになったら、構図が逆になった。
米本 それまで強力な外国人選手を前に置いて、個の力で打開していたフロンターレがパスサッカーになって、しかも、みんなうまい。「ディフェンスの選手までこんなにうまくなるの!?」っていうくらいでしたから。「監督ひとりでこんなに変わるんだ」「俺もフロンターレに行ったら、うまくなれるのかな」って思っていました。
―― やっぱり対戦しながら、感じていたんですね。
米本 そもそも、対戦するのも嫌でしたもんね、フロンターレは。回されて、走らされて、疲れるので。
―― 風間監督と会ったのは、チームが始動してから?
米本 そうですね。事前に話をしたわけではないです。だから、風間さんが僕を必要としてくれたのかどうかわからないですけど、僕が風間さんのもとでやってみたいと思った。
この人に教わってみたいと思わせる監督って、そんなに多くないじゃないですか。唯一無二じゃないですけど、風間さんはどんな教え方をするんだろう、とか。たとえば、自分が指導者になったとき、風間さんのもとで学んだことが、指導者としてのレパートリーのひとつになるんじゃないかなって。そういうことも考えましたね。
―― 実際、チームに加わってみて、何に衝撃を受けました?
米本 もう、トラップひとつからして衝撃ですよ。今まで成功だと思っていたトラップが、違いますって(苦笑)。自分で「これ、いいトラップだ」と思っても、監督から「それ、止まってないから」って。
―― え? みたいな。
米本 「じゃあ、どれが正解なの?」って(苦笑)。「こう止めるんだぞ」って教えてもらって、なるほどと。だから今は、身体に染み込ませるために、毎日、毎日「止める・蹴る」を繰り返しています。
最初は10本に1本しかできなかったけど、今は10本に3、4本はできるようになってきた。その感覚がうれしいし、楽しい。でも、これまでは身体からボールがちょっと離れていても気にしなかったけど、今は身体の真下にピタッと止めないといけないから、これまで痛くなったことのない股関節が痛くて(苦笑)。
―― 千葉和彦選手と蹴り合っているようですね。
米本 そうですね。あと、練習後に若い選手を見つけて誘っています。「練習、付き合って」って。声をかけやすいから(笑)。
―― 東京でチームメイトだった丸山祐市選手、長谷川アーリアジャスール選手も、やっぱりうまくなっていますか?
米本 いや、祐市くんも、アーリアくんも、もともと足もとの技術がありますからね。すんなり入れたんじゃないですか。僕は攻撃に関しては、勢いとノリでやってきたんで(笑)。ごまかしながらやってきて、パスが通れば、なんでもオーケーという感じでしたけど、ここはそれではダメなので。
そう言えばこの前、パスがきれいに通ったシーンの映像を見せられて、「いいボールじゃん。成功の場面かな」と思ったら、「パスは通っているけど、その前のトラップが止まっていない。ここでしっかり止められれば、もっとスムーズに行くから」って。ダメ出しの映像だったんです。これでもダメなんだって(苦笑)。
―― でも、それを求めて来たわけですよね。
米本 間違いないですね。
―― 聞いていて思うのは、城福さんが率いるアンダーの日本代表に選ばれて、柿谷曜一朗選手や山田直輝選手に衝撃を受けて、彼らのいいところを盗んで、少しでもうまくなろうとしていた高校時代に近いものがあるのでは?
米本 それはありますね。やっぱり今、練習が楽しいですもん。回しのなかで「今日は何回、取られたな」とか、「今日はミスしてないぞ」とか、「ミスはしてないけど、あれは本当に止まっていたかな」って考えたり。本当に楽しい。しかも、みんなうまいから、ボールを取るのも難しいんですよね。
―― 米本選手でも?
米本 トラップがちょっと流れる瞬間とか、ボールが足からちょっと離れた瞬間を狙うんですけど、このチームの選手はみんな、ちゃんとボールが止まりますからね。だから、ひとりではなかなか奪えない。
―― 逆に言えば、武器であるボール奪取力も、さらに磨かれたり、奪い方についてさらに知恵を絞ったりするようになるのでは?
米本 それもありますけど、あらためてボールはひとりでは取れないんだな、ということも痛感しました。コンビを組んでいるボランチやサイドハーフと連動する必要がある。周りを動かしたり、自分が食いついて、他の人に取らせたり。
今はまだ、自分のプレースタイルを完全に理解してもらえていないので、「今、コースを切ったんだけどな」とか、「今の、コースを切ってくれないんだ」ということがけっこうある。それは、練習や試合を積み重ねて、すり合わせていけばいいんですけど、東京のように阿吽の呼吸とはいかない。だから、ちゃんと要求していかないと、守備でも自分が生きなくなるという危機感があります。
―― 風間監督は攻撃だけでなく、守備の話も面白いですよね。相手を前に行かせないポジショニングだったり、ひとりひとりの守備エリアのキャパシティだったり。その集合体がチームというような。
米本 面白いですよね。だから、ゾーン、ブロック、いろんな言い方がありますけど、要は、どこでコンパクトにするか。前でコンパクトにするなら、押し上げないといけないし、引くなら引くで、コンパクトにする。それを設定したうえで、出させない守備。そして、追い込んで取るというイメージだと思うんです。
だからこそ、それぞれの特徴を意識するというか、あいつは守備が苦手だから逆サイドに誘導して、そっちでハメたほうがいいよねとか。そのあたりがまだ、チームとして足りていないと感じます。ただ、メンバーも相当代わったし、これからすり合わせていきたいですね。
―― では、最後に。あらためて大きな一歩を踏み出した今シーズン、どんな1年にしたいですか?
米本 まずは本当に、うまくなりたい。すぐに成果が出ないのはわかっています。とにかく地道にやり続けて、1年後、「米本、うまくなったな」と思ってもらえる1年にしたいです。
チームとしては、やっぱりタイトルを獲りたい。それだけのメンバーが揃っていると思うし、僕はそれも求めてここに来た。でも、いくらいい選手が揃っていても、チームがひとつにならないと勝てないので、どれだけ一丸となって戦えるか。まとめ役としてもがんばりたいと思います。
【profile】
米本拓司(よねもと・たくじ)
1990年12月3日生まれ、兵庫県伊丹市出身。兄の影響で小学1年からサッカーを始める。伊丹高校時代にはU-17日本代表に選ばれ、U-17ワールドカップに出場。2010年には日本代表デビューを果たす。今季、10年間プレーしたFC東京を離れて名古屋グランパスへ移籍。