北海道銀行フォルティウス
吉村紗也香インタビュー(後編)

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 女子カーリング界は今や”ロコ・ソラーレ旋風”一色だが、ロコ・ソラーレの最大のライバルと目されている北海道銀行フォルティウスも着実にレベルアップしており、第36回 全農 日本選手権(2月11日~17日/北海道札幌市)では4年ぶりの女王奪還を狙っている。その中心選手として、さらなる飛躍が期待されているのが、今季からスキップを務めることになった吉村紗也香だ。今回は、そんな彼女の知られざる”素顔”に迫ってみたい――。

――そもそもカーリングを始めたのはいつからでしょうか。何かきっかけがあれば、それも教えてください。

「カーリングを始めたのは、9歳のとき。小学校4年生のときに、体育の授業でやったのがきっかけです」

――他にスポーツをやっていましたか。

「中学校ではバスケットボール部で、ポジションはフォワードでした。高校からはバレーボールを始めて、レフトに入っていました。体を動かすのは得意で、今でも球技は好きです」

――そうしたなか、カーリングはずっと続けてきたわけですね。

「最初はルールもわからなかったけれど、ストーンを投げるのが難しくて、それが単純に楽しかったんです。ハウスの中に(投げた)石を入れるとか、相手の石を出せたとか、そういうちっちゃい喜びを重ねて、今まで続けてきました。いろいろなスポーツをやっていて『うまくなりたい』と、最も強く思えたのがカーリングでした」

――最初のチームを覚えていますか。

「小学校4年生のときに、井田莉菜さんや氏原梨沙さんらとチームを組んだのが最初です」

――そのまま札幌国際大学まで、一緒に戦ってきたメンバーですね。

「そうです。そして、中学校2年生のときに石垣真央選手(現・富士急)が、大学で石山奈津子選手(現・札幌カーリング協会)が加わってくれました」

――これまで吉村選手を取材してきて、不思議だなと思っていたことがあります。それは、パーソナルな部分がなかなか見えてこない点です。

「そうなんですか?」

――今は、多くのアストリートがSNSを使って自身の近況などを自ら発信している時代ですが、吉村選手は何もされていないですし。

「一応、アカウントはあるんですけど、友だちがアップしたものをときどき見るぐらいですね。自分のことをアップするのが嫌なわけではないんですけど、とくに発信するようなことがないんですよ」

――趣味などはありますか? 公式ホームページには「ボディクリームのコレクター」と記されていますが。

「ボディクリームは好きなので、コレクターというか、いい匂いのするものは、すぐに買っちゃいます。ただ、それが趣味かと言えば、どうなんだろう。(趣味を)聞かれても、実はこれといったものがないんです」

――たとえば、休日は何をして過ごしているのでしょうか。

「とくに何も……。家にいて、誰にも邪魔されずにテレビを見ていたりするのが幸せなんですよね。あと、インターネットで過去の『M-1グランプリ』のネタを見たり。お笑いは好きです」

――カーリングを始めた頃から、競技ひと筋だったのでしょうか。青春をすべてカーリングに捧げてきたとか。

「そうかもしれません。ほぼ毎日カーリング場に行っていましたから。学校の授業が終わって、部活に参加して、18時くらいに一旦帰宅。母が用意してくれていた食事を急いで食べて、カーリング場に行って、19時からのリーグ戦に出る――そんな毎日でした」

――日本ジュニア3連覇を達成した大学時代もそういう生活だったのでしょうか。

「基本的には同じです。トレーニングが終わったら、家に帰って休みたい。そう思っていた気がします。大学も、私が住んでいたところも札幌の街中からは少し離れた場所だったので、授業以外は部活かカーリング。真面目と言われることもありましたが、それが普通のことだと思っていました」

――氷上では自分を真面目だと思っていないんですか。

「どうなんでしょう。でも、『このショットを決めたい!』と思ったら(真剣に)打ち込むかな。負けず嫌いではあると、自覚しています」

――そうは言っても、常呂高校時代も、札幌国際大学時代も、チームメイトや自らがミスをしても、イライラする姿を見たことがありません。

「自分に対してがっかりすることはありますけど、誰かのミスによってイライラしたりはしないですね。カーリングは100%のショットを投げ続けることは難しいので、ミスはもちろんあります。でも、その状況のなかで、どう最善を尽くすかを考えるようにしています」

――スキップの鑑のようなメンタルですね。これまでのカーリング人生において、挫折したことはあるのでしょうか。

「何度か、あります。高校時代は勝てない時期が長くて、悔しい思いをしました」

――当時のジュニアには、同じ地元の藤澤五月選手(現ロコ・ソラーレ)や、長野県の御代田ジュニアの土屋海さんなど、同世代には技術の高い選手がそろっていましたからね。そうした時を経て、現在所属の北海道銀行フォルティウスに入ってからは、迷いなどが生じたことはありますか。

「フォルティウスに入って数シーズン経ってから結果が出なかったときは、ショットが決まらない自分に失望したり、『これ以上、伸びないんじゃないかな』と不安になったりしました。練習でできても、本番で決まらない。海外の難しいアイスにも対応できない、という悔しさ、怖さを抱いていました」

――そういうとき、吉村選手はどう対処するのでしょうか。

「悩んでいても仕方がないので、とにかく黙々と練習していた気がします。とくに誰かに相談もしませんでした。でも今は、以前の自分に比べて、自分のことや思ったことなどを口に出して、チームに話せるようになりましたから、しっかり自分を分析しながら、どんな練習が必要なのか、どうすればもっとよくなるか、考えながら練習しています」

――カーリングに向かう姿勢は、やはり真摯ですね。それを維持するルーティンのようなものはありますか。

「う~ん……、しっかり睡眠をとることくらい。でもこれって、ルーティンではないですね。何か”これ”といったものはないんです。”これ”って決めちゃうと、それをやらないと不安になるかもしれないし、やらなかったときに、それがメンタル面に影響したりするのが嫌なんです」

――今季は海外遠征がとくに多いシーズンですが、チームで必ず持っていくものはありますか。

「やっぱり、試合前にはしっかりとお米を食べたいので、白米を持ち込んで海外でも自炊していますね。そのために炊飯器とホットプレート、調味料などを食料バッグに詰め込んで出発します。ホットプレートは煮たり、焼いたり、いろいろできますが、そこで鍋料理をすることが結構多いかな」

――料理は誰がやるのでしょうか。

「基本的にメンバーみんなでやります。役割分担を明確に決めたことはないんですが、調理が始まると自然と役割分担ができていて、今、出汁をとっているから野菜を切っておこう……とか、みんながそれぞれ判断して動いていますね。なので、ご飯を作るのはめちゃくちゃ早いです。単純にお腹が減っていて、早く食べたいだけかもしれないけれど」

――逆に遠征から帰ってきたら、必ず食べるものはありますか。

「この間、カナダから帰ってきたときは『トリトン』(※北海道で人気の回転寿司チェーン)に行きました。お寿司が好きなので、海外から帰ってくると、お寿司屋さんには必ず行きます」

――やっと吉村選手のパーソナルな部分が見えてきたような気がしますが、カーリング以外の人生設計というか、将来のことについて考えたりしているのでしょうか。

「トップ選手のひとりであるスウェーデンのアンナ・ハッセルボリ選手が、平昌五輪のあとに結婚を発表しましたし、私もいい人がいれば……。結婚願望もありますし、子どももほしいです。ただ、相手がいないことには具体的なイメージはなかなか……」

――当面はカーリングひと筋なのでしょうか。やはり最大の目標となるのは、2022年北京五輪出場ということになりますか。

「今季から中国主導で始まったワールドカップが、オリンピックのような大きな会場で開催されていたりして、あれを見て、ああいう大きなアリーナでいいプレーをするためには何が必要か、ということは少しずつイメージしています。3年後、オリンピックシーズンに向けて、ピークを作れるように調整していきたいですね」

(おわり)



 

吉村紗也香(よしむら・さやか)
1992年1月30日、北海道北見市常呂町出身。小学4年生からカーリングを始め、常呂高校時代から日本選手権の表彰台に立つなど、若くから頭角を現す。札幌国際大学時代には日本ジュニア選手権で3連覇を達成し、2013年の世界ジュニア選手権では銅メダルに輝く。2014年から北海道銀行フォルティウスに加入し、今季からスキップを担う。