2月11日(祝・月)
〇三河 95 ‐ 94 秋田●
(三河通算成績 22勝18敗)

 試合終了のブザーが鳴った瞬間、シーホース三河のベンチメンバー全員が飛び出してきて、小柄なキャプテン・狩俣昌也を抱え上げ、抱きしめた。

 バスケ漫画のような、バスケ観戦冥利に尽きる見ごたえのある激闘、そして結末だった。


  この日発表された、W杯アジア地区2次予選の代表候補にも選ばれたエース・金丸晃輔が厳しいマークにあいながらも41得点、何度も秋田に行きかけた流れを止めた。

 そして、キャプテンの狩俣昌也が苦しい展開の中で残り17秒で味方全員がつないだチャンスで放った同点3Pシュート、そして残り4秒でもらったファウルからのフリースローをきっちり決めて勝ち越し。

 開幕5連敗からスタートし、今シーズンここまで苦しんだ名門チーム、そしてキャプテンの苦労が報われた試合だった。

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4Q全てが激闘の好ゲーム

 試合は立ち上がりから両チームのエナジー全開の激闘となった。秋田ノーザンハピネッツは前日に30点近くの点差で大敗、雪辱に燃え序盤から激しく攻守に渡りプレッシャーをかけた。

 「秋田さんも昨日以上に激しく来た中で、Game1と同じ感じで入ってしまった」と三河の指揮官・鈴木貴美一ヘッドコーチも認めるほど、秋田のディフェンスは激しかった。

 一方、シーホース三河は40分フル出場の金丸が3Pシュート6本、フリースロー15本を含むBリーグシーズンハイの41得点をマーク。ベテランの桜木ジェイアールが20得点9リバウンドと好守にわたり牽引。

 キャプテン・狩俣は15得点10アシストの「ダブルダブル」で要所を締めると、最後は指揮官も「勇気づけられた」と言うホームの「大青援」で秋田にプレッシャーをかけて3点差をひっくり返し、ホーム2連勝をもぎ取った。

開幕5連敗…、苦悩が続いたキャプテン



 主将の狩俣は前日のGame1では出場数秒で2本、またその後の数分以内も含めて合計4本の3Pシュートを外し、すぐに交代でベンチに下がった。雪辱に燃えていた。

 前主将・橋本竜馬(現・琉球)から主将を引き継いで2シーズン目。そして、今シーズンからその橋本と比江島慎(現・栃木)が移籍で抜け、全く別のチームとなった。「新生・シーホース三河が、どんなカラーを打ち出し、チームとしてどのように戦うのか」と自問自答、模索を続けたが、新体制の船出はいきなり開幕5連敗…。チームは苦しみ、プレッシャーが新キャプテンに重くのしかかった。

 残り17秒。「3点差あったので、できれば金丸選手に打たせたかった。でも、アイザック・バッツ選手が良いパスをしてくれたので、迷いなく打った」と心技体を出し切った。

 そして、このまま延長戦突入という雰囲気もあったが、コート上の狩俣選手は冷静だった。

 残り4秒。「両チームともチームファウル5つを超えていた。フリースローを与えれば負ける。逆にファウルを誘えば勝利が近づく…チャンスがあればアタックしようと思っていた」、狩俣は小さな身体で突進していった。それを阻止しようと身体を入れてきたディフェンスに大きくコートに吹っ飛ばされファウルをもらう。最後は決勝点となるフリースローを冷静に決めた。

 試合終了直後、三河のベンチからベンチメンバーが駆け寄り、抱き上げるシーンは、まさに仲間たちも狩俣の苦悩や苦労を見ていた事を表していた。

「リアル・ミッチー」金丸晃輔は大事な場面、接戦の時ほどタフショットを決める


 一方、金丸晃輔は「近年記憶に無い(笑)」と言う40分フル出場を果たした。試合前、金丸は指揮官に「今日、大丈夫です」と伝え、万全の状態だった。

 金丸がボールを持てば、秋田のディフェンスが2人、3人と囲んでくる。金丸晃輔の事を秋田の指揮官は試合後の記者会見で「リーグでこれだけファウルを取られる選手はいない」とコメントするほど、金丸を止める手段が無かった。

 昨年までは先発メンバーと控えメンバーのプレータイムの差が大きかった。「今年はタイムシェア」(鈴木ヘッドコーチ)をさせながら、今季途中に大学から加入した岡田侑大、熊谷航の二人も徐々にプレータイムを伸ばしながら、経験を積ませている。

 三河の前身のアイシンがまだ一部リーグに上がれない時代から三河を率いる名将・鈴木貴美一は、試合後の記者会見で「(新しいメンバーを)思い切って起用している。引き抜きされようが、何だろうが、とにかく育てる!と言う事を考えてやっています」と力強く言い切った。

 今シーズン出遅れてしまった71年目の名門チーム。指揮官が若手を育てるのが先か。それとも、その前にシーズンの行方が決まるのが先か。

 「日本代表期間ブレイク」が終わり、三河のリーグ戦が再開されるのは3月2日、3日の横浜ビーコルセアーズ戦から。昨秋に5連敗でスタートしたシーズンが、春には花を咲かせる事ができるのか。熱い闘いに注目だ。

会場はバレンタイン一色

 熱戦が繰り広げられたコートの外では「シーホースのバレンタイン祭」と題して、金丸が初の栄冠に輝いた前日の『モテ男NO.1決定戦』に続き、この日はバレンタイン恒例二大企画のひとつ『逆チョコ大作戦』を実施。各選手がお気に入りのチョコを直接手渡しでプレゼントし、抽選で選ばれたファン・ブースターを喜ばせた。

 また今節からは、カーシートメーカー・BRIDE社製のシーホース三河オリジナルシート「スポーツシート」が登場。限定24席の心地よい座り心地のシートで、観客はゆったり快適に観戦を楽しんだ。

1Q 三河18–14 秋田


昨日以上の激しいディフェンスゲーム

スターティング5は、#3ミークス、#5バッツ、#12西川、#14金丸、#46生原。

両チームともに昨日以上にハードなディフェンスでぶつかり合い、残り2分半まで5-2とロースコアな立ち上がりとなる。
#32桜木がコートに入ると攻撃が活性化。巧みなターンでマークをかわしてリングに流し込んで膠着状態を打ち破ると、#11熊谷、#30岡田もアグレッシブに攻めて得点。#14金丸もフリースロー、3Pシュートの連続得点で突き放す。
秋田は#13成田の3Pシュートや#21長谷川らのドライブで反撃するが、#30岡田のアタックのリバウンドを#3ミークスが押し込んで、18-14で1Qを終えた。

2Q 三河45–47 秋田 (三河27–33 秋田)


桜木 12得点で牽引も、秋田にリードを奪われる

スタートは、#3ミークス、#4狩俣、#14金丸、#30 岡田、#32桜木。

開始2分に秋田#24保岡の3Pシュートで逆転されるが、#4狩俣のリングアタックですぐに取り返し、その後は激しい打ち合いとなる。

#32桜木がファストブレイク、#30岡田とのゴール下の合わせなどで12得点、#14金丸が10得点を量産するも、秋田#40キーナンに16得点を奪われ、残り30秒に#8下山の3Pシュートで逆転を許し、前半を折り返した。

3Q 三河73–72 秋田 (三河28–25 秋田)


金丸 18得点の大爆発で逆転

スタートは、#3ミークス、#12西川、#14金丸、#32桜木、#46生原。

秋田にインサイドを支配されて、#40キーナン、#43コールビーの得点で先行される展開が続く。#14金丸の連続3Pシュート、#4狩俣の3Pシュート、#14金丸のバスケットカウント、さらに#3ミークスも3Pシュートと連続3点プレーで食らいつくが、その度に決め返されて秋田の背中を捉えることができない。
一時は7点のビハインドを背負うが、#46生原、#14金丸が果敢にリングにアタックしてボーナススローで繋ぐ。残り40秒、#14金丸が1on1からファウルを受けながらフローターをねじ込み、フリースローも確実に決めて、73-72と逆転した。

4Q 三河95–94 秋田 (三河22–22 秋田)


金丸 Bリーグシーズンハイの41得点。狩俣 ダブルダブル。秋田に2連勝で雪辱!

スタートは、#4狩俣、#5バッツ、#14金丸、#32桜木、#46生原。

残り3分半、秋田#34小野寺の連続で85-85の同点に追いつかれる。悪い流れを切りたい三河はタイムアウトを取るが、#34小野寺、#8下山に連続3Pシュートを浴びて6点のビハインドを背負う。
それでもアリーナのエナジーに後押しされ、#4狩俣、#14金丸がアグレッシブにアタックしてボーナススローで加点。#5バッツのバスケットカウントで3点差に迫ると、残り16秒、「パスが来たらシュートを狙う気持ちをずっと持っていた」という#4狩俣の3Pシュートが美しい放物線を描いてリングを射抜き、94-94の同点に追いつく。
「ディフェンス、ディフェンス」の地鳴りのような大青援を受けて、粘り強いディフェンスで秋田のターンオーバーを誘うと、そこからファストブレイクを繰り出して#4狩俣がファウルを受ける。緊張感ある場面でのフリースローを#4狩俣がきっちりと決めて、95-94と勝ち越し、この1点を守り抜いて試合終了。2309人の観客は総立ちとなり、勝利の喜びを分かち合った。


■ シーホース三河 鈴木 貴美一 ヘッドコーチ 試合後コメント

 今日は秋田さんが昨日以上に最初からハードにやってきて、我々も昨日のリズムでやりすぎてミスが多くてそんな中でも点数は取れました。

 秋田さんは昨日と違うパターンで攻めてきて、点の取り合いになりました。最後も岡田選手に経験させたくて出したんですが、激しさに戸惑ったみたいで本来のシュートが入らなかったんですけれども、最後まで諦めないで1点差で勝てたということはチームにとっても非常によかったゲームだと思います。

 秋田さんは昨日のゲームを振り返って反省して、さらにハードにやってきたので素晴らしいチームだと思います。我々もいいところは見習って、一度シーズンはブレイクしますが後半戦の中盤からしっかり頑張りたいと思います。

■ シーホース三河 #4狩俣 昌也 選手 ヒーローインタビュー

ー今日の勝利、おめでとうございます。
ありがとうございます!

ー同点に追いついた3Pシュートはどんなことを考えながら打ったんでしょうか?
パスが来たらシュートを狙うという気持ちはずっと持っていて、そこにアイク(#5バッツ)選手がいいパスをくれたので躊躇なく打ちました。

ー試合を振り返ってみていかがですか?
昨日と違って点の取り合いになって、我慢の時間も長かったんですが、チームとして40分間我慢して、最後1点差で勝てたということは本当に良かったです。

ー本日、ダブルダブル達成です!いかがですか?
ありがとうございます。スタッツは自分1人では出せないので、本当にチームメイトに感謝したいと思います。

ーファン・ブースターの皆さまへのメッセージを
このゲームが終わって少しリーグが中断するんですが、しっかり練習してチーム力を更に高めて、共に頂点へ、また頑張っていきますので、残りのレギュラーシーズンも応援よろしくお願いします!

■ シーホース三河 #14金丸 晃輔 選手 ヒーローインタビュー

ー今日の勝利、おめでとうございます。
ありがとうございます!

ー試合を振り返ってみていかがですか?
激しい試合になったんですけど、最後キャプテンが締めてくれたので、もう言うことないです。

ー本日、Bリーグ レギュラーシーズンハイの41得点です!どんなことを意識してプレーしていましたか?
んー、特に何も考えていないんですけど…笑
ボールが来たら攻めるっていうことですかね。

ーアリーナにたくさんいる子供たちへぜひオフェンスのアドバイスをお願いします。
ちょっと難しいんですけど(笑)
シュートはやっぱり気持ちが一番大きいと思うので、常に入るという気持ちを持ってシュート練習から励んでください。それしかアドバイスはないです。

ーファン・ブースターの皆さまへのメッセージを
前回、僕がアウェーで40点取った時は負けてしまったんですが、今日は41点取って勝てたので、本当に皆さんの応援だと思っています。ありがとうございました!

■ 秋田ノーザンハピネッツ ジョゼップ・クラロス・カナルスヘッドコーチ 試合後コメント

 すごく感情の多くつまった試合になったと思います。

今日、会場に足を運んでいただいたファンの皆さんはすごく楽しめたと思いますが、負けたチームとしては、特に私はこういう負け方は個人的には好きではないです。