「足がそろっている」「声が大きい」小学生が違いに驚嘆 静岡県立三島南高校が2月3日、沼津リトルリーグの4~5年生の9名を招いて、野球教室を行った。これまでも三島市内の幼稚園、保育所などを回って野球普及教室など活動をしてきたが、今回は、将来の…

「足がそろっている」「声が大きい」小学生が違いに驚嘆

 静岡県立三島南高校が2月3日、沼津リトルリーグの4~5年生の9名を招いて、野球教室を行った。これまでも三島市内の幼稚園、保育所などを回って野球普及教室など活動をしてきたが、今回は、将来の高校球児たちに直接アプローチし、夢と刺激を与えることができた。

 まずは午前9時からのウォーミングアップ。高校生だけのランニングに小学生から「足がそろっている」「列が整っている」「声が大きい」と驚きの声が上がった。その様子を見た三島南高校硬式野球部の稲木恵介監督は「野球は一つのボールをみんなで追いかけるんだ。チーム全員が心を揃えてスタートすることが大切だ」と子供たちに語りかけた。

 キャッチボールでは高校生と小学生がペアになって、ボールの持ち方、投げ方、足の踏み出し方などを指導しながら進めた。ここでも小学生は、ボールのスピードが速いこと、選手が元気よく大声を挙げていることに驚き、歓声を上げていた。

 続いては、各ポジションに高校生が後ろについて、小学生がノックを受けた。小学生が捕球すると高校生はすかさず「ナイスプレー!」と称えていた。沼津リトルの川口智監督は「“来いぃー!”の声がいつもより大きい」と反応がすぐあったことに気が付いた。ノックの後は各ポジション別にボールを転がして捕球する練習や飛球やショートバウンドの獲り方、触塁の仕方なども行った。高校生は丁寧にアドバイスしていた。

 昼食、休憩の後、午後のプログラムが始まる前に高校生小学生から質問があった。

「どうやったら強い打球が打てますか?」
「ホームラン打つためにはどうしたらいいですか?」
「ボールを上手に打つにはどうすればいいですか?」

 その答えは、午後の実技としてリターンされた。

 高校生の打撃を、小学生がゲージの後ろで見学。打った瞬間、「すげー」「行ったー」など大歓声。高校生のパワーは、小学生にとってはこの日最大の驚きだったようだ。実際に打っていた高校生が小学生を打撃指導する時には小学生の目の輝きは違った。打撃披露は説得力を倍増させていた。小学生がいい打球を放つと、高校生たちはすかさず「ナイスバッティング」「ホームランだぁ」と声かけを忘れなかった。

失敗して泣き出す子供に高校生が激励

 小学生にとって、新たな発見もあった。続いて、高校生が守備について小学生が打つシート打撃が行われたが、小学生の中にはタッチアップをしないケースが見られた。また、打者が飛球を放つと、野手が捕球したと決めつけて、一塁まで走らなかった選手がいた。ところが内野手は落球。アウトになってしまった。失敗が悔しくて泣きだす選手も。しかし、そこは高校生。「この先、いっぱい失敗あるけど、泣いていちゃダメだぞ、次だぞ、次!」と励まし、元気づけていた。

 このような野球技術だけでなく、コミュニケーションも大切なことを高校生たちは子供たちに伝えていた。また、この日は節分。赤鬼のお面をかぶった部員に小学生が「鬼は外」と豆まきをして、グラウンドは笑顔に包まれた。楽しい時間を最後まで共有した。三島南高校では、今後、軟式少年野球チームや少年野球をやっていない小学生を対象とした交流を実施したいと考えている。

 昨年、高校野球200年構想が発表されて、高校野球の目的の一つに「野球の普及」が加わった。三島南高校の取り組みは、教えられる子どもたちだけでなく、教える高校生にとっても有意義な体験になっている。各都道府県でも高校球児が子供たちに教える場が少しずつ増えている。今後も三島南高校をはじめ、このような高校の取り組みを見守りたい。

◯三島南高校硬式野球部、稲木恵介監督
「保育園訪問を続けて5年、高校野球200年構想で単独チーム同士の少年野球チームとの野球教室が可能になりました。今回は初の取り組みでしたが、このような活動が地域の少年野球チームや野球をやっていない子供たちを対象とした取り組みへと広げていければ良いと思います。一日、グラウンドで過ごす姿を見て、この小学生たちは野球が好きなんだな、と感じました。こういう形で、スポーツに親しむ少年たちを増やしたい、それが野球であれば私たちが育てていくことが使命だと思います。野球を通じて幅広い層と交流する高校生にとってもこれからの社会にとって有益な存在になることは間違いないでしょう。地域活性にもつながると思います」

◯沼津リトルリーグ、川口智監督
「子供たちが、野球が好きだということを再認識できました。また、三島南高校の野球部員の優しさや温かさを子供たちと接する姿を見て感動しました。悔しくて泣き出す選手がいたこと、そして高校生たちが励ましてくれたことが、とても良い経験になったと思います。少年野球チームは保護者の方に支援していただいていますが、より小学生に近い年齢の高校生が親身に指導してくれることはかけがえのない経験となりました。今後もこのような活動を続けてもらいたいです」(広尾晃 / Koh Hiroo)