米スポーツ専門メディア「スポーツ・オン・アース」は特集記事を組み、42歳の“進化“に「白旗を掲げるしかない」と脱帽している。■「全てをこなしてしまう」イチローになかったもの、今季は四球が大幅に増加 メジャー通算3000安打まで残り6本と迫る…

米スポーツ専門メディア「スポーツ・オン・アース」は特集記事を組み、42歳の“進化“に「白旗を掲げるしかない」と脱帽している。

■「全てをこなしてしまう」イチローになかったもの、今季は四球が大幅に増加

 メジャー通算3000安打まで残り6本と迫るマーリンズのイチロー外野手が見せる“モデルチェンジ”に、米メディアの注目が集まっている。メジャー最年長野手は今季、打率.343と好調を維持。さらに、出塁率は.421と特筆すべき数字を残している。四球の数は明らかに増加。約8.61打席で1四球を選んでおり、昨季までの15シーズンで記録した16.68打席で1四球という数字を大きく上回るペースとなっている。米スポーツ専門メディア「スポーツ・オン・アース」は特集記事を組み、42歳の“進化“に「白旗を掲げるしかない」と脱帽している。

 記事ではまず、走攻守の全てをハイレベルで兼ね備える背番号51が、メジャーの歴史を塗り替えるシーズン262安打を放った2004年について回顧。「イチローは全てをこなしてしまう存在であった。打率.372にシーズン新記録となる安打記録、さらに36盗塁も決めた素晴らしい右翼手であった」と紹介している。

 ただ、その中で1つだけ欠けていたものとして挙げられているのが、四球だ。「全て、と言っても一つだけ例外がある。それが四球だ。762打席でわずか49四球、さらにこの数字にはリーグ1位の19敬遠も含まれるため敬遠を除くとわずか30四球であった」。イチローがボール球までもヒットにしてしまう圧倒的な技術を持っていたことが理由とも言えるが、2004年の打率はリーグトップの.372ながら、出塁率は.414と今季の数字とほぼ変わらなかった。

■なぜ四球は増加したのか、「イチローは打席でのアプローチを根本的に変えている」!?

 記事ではさらに、2012年以降について「ハンド・アイ・コーディネーションやスピード、コンタクト能力は劣化の兆しを見せていた」と、イチローの“衰え”が見え始めた時期を指摘。一方で「2014年のイチローのUBBr(敬遠以外の四球の割合)はキャリアハイの数字から0.5%の差しかなかったが、キャリアワーストの打撃成績であった2015年には、6.9%という自己新記録を記録した」とも言及。昨季から純粋な四球の割合が増え始めていたという。

 そして、今季に至っては、メジャー屈指の強打者であるミゲル・カブレラ(タイガース)、アンドリュー・マッカチェン(パイレーツ)、フレディ・フリーマン(ブレーブス)よりも四球の割合が多いというのだ。「敬遠を差し引くと、デビッド・オルティス(レッドソックス)とも肩を並べる」というデータも持ち出している。

 四球増の理由として真っ先に挙げられているのが、「イチローが見境なくスイングする頻度は下がったということ」。ボール球を打ちに行く回数が減ったことは、データにも明らかに出ている。「イチローは今季、彼が目にした投球のうち41%に対してスイングしている。これはキャリアを通じて最も少ない数字であり、キャリア平均からも6%ほど低い」。どのコースのボールに対しても、スイング率が減っているという。

 記事では「まさにイチローは打席でのアプローチの方法を根本的に変えているようであり、結果それはうまく作用している」と分析。四球が増加しただけでなく、三振数も減るなど、打撃成績自体が向上しているとしている。

■来季の更なる“進化”も期待!? 「アンコールとして20本塁打を打つだろう」

 今季、メジャーで評価基準の1つとなるBB/K(四球÷三振)は1.53というハイレベルな数字を記録。自己最高だった2002年の1.10を上回っており、キャリア通算の0.61を遥かに凌ぐ。特集では「イチローは時計の針を戻し、さらに新しいスキルまでも身につけたのだ」と称賛している。

 さらに打撃フォームでは、右足を上げるタイミングが若干遅くなったことでバランスを保っていると分析。始動が遅くなったことも今季の変化の1つだとして、「彼は今までよりもボールを見極め、よりボールをバットで捉え、さらに四球も劇的に増加させている。理由は分からないが、実際に彼はそのように結果を出している」というのだ。

 最終的には、四球増加の根本的な理由については「説明できない」と断言しつつ、「はっきりとした答え探しはやめて、彼の魔術を楽しめばよい。イチローはMLB通算3000安打を、平凡なチームにいながらに射程に捉え、毎打席で引退という文字に少しずつ近づいている。そして『今』、彼は四球を選ぶという術を習得しているのだ。これにはもう白旗を掲げるしかない」と脱帽。「来年、アンコールとしてイチローは20本塁打を打つだろう。現時点で彼の今後を予想することなんてできないのだから」と、メジャー最年長野手の更なる“進化”を期待した一文で締めくくっている。

 イチローはこれまでも想像を絶する努力を重ね、1年1年、1日1日の“進化”があったからこそ、日米両国で唯一無二の存在となれたのだ。50歳まで現役続行を見据える“レジェンド”は、これからも前進し続ける。