ミケル・エチャリのイラン戦レポートを読む>>「日本が序盤に喫した2失点は、どちらも守備の強度が足りていなかった。他に…
ミケル・エチャリのイラン戦レポートを読む>>
「日本が序盤に喫した2失点は、どちらも守備の強度が足りていなかった。他にも、簡単にインサイドへのパスを通させてしまっている。後半はプレーが改善されたが……」
スペインの慧眼、ミケル・エチャリ(72歳)はアジアカップ決勝、日本がカタールに1-3で敗れた試合をそう振り返っている。
エチャリは80年代、エイバルを監督として率い、5バックを使いこなして戦っている。当時、日の出の勢いだったデポルティボ・ラ・コルーニャと引き分ける”金星”を挙げた。戦術家として、”フットボールの回路”を知り尽くしている。
エチャリは、カタールの堅守に苦しみ、その効果的な攻撃に沈んだ日本をどのように見たのか?

アジア杯決勝カタール戦で、就任以来初の黒星となった森保一監督
「日本はこれまでと同じように、4-4-2を採用。ボランチの遠藤航(シント・トロイデン)が欠場し、塩谷司(アルアイン)が入った。遠藤はケガのようだが、重要なポイントだったと言えるかもしれない。
これに対してカタールは5-3-2の布陣。自陣にリトリートし、5バック、プラス3人のMFで中央を固めている。俊敏な反応、機敏なスライドによってよく守り、ボールを奪い返し、カウンターを狙う戦術だ。特筆すべきは2トップで、いやらしく日本の攻撃を限定し、コースを消していた。
一方、自分たちが望むようなビルドアップができない日本は、中央から無理なパスを狙い、敵の術中にはまってしまう。時間とともに攻撃に対する焦りは強くなっていった。たとえば、堂安律(フローニンゲン)は”ボールに足がついていない”状態だったにもかかわらず、最短距離でのゴールを狙い、中に突っ込んでいた。サイドバックとの連係を駆使し、サイドで幅を作ってから、インサイドへボールを入れるべきだった。
プレーリズムの悪さは、攻めだけでなく守りでも出る。
前半10分、日本はファウルでどうにか止めたものの、インサイドを一発で破られてしまっている。ポジショニングが悪く、守備の寄せも甘い。それが必然的に失点へつながったのだ」
12分だった。カタールは簡単に左サイドへパスを展開。フリーで蹴ったクロスを、エリア内で受けたアルモエズ・アリがコントロールし、オーバーヘッドキックでゴールに叩き込んでいる。
「日本は、相手ボールになった時に、受けに回ってしまった。カタールの攻撃を、簡単に自陣に入らせていた。失点のシーンで、マークについていた吉田麻也(サウサンプトン)も、ゴールを守る権田修一(ポルティモネンセ)も、動きが鈍かったのはその象徴か。
日本が目立って悪いプレーをしていたわけではない。中盤で多くボールを奪っていたし、ポゼッションの時間も長かった。しかし、相手が固めた中央へ無策に攻撃を仕掛け、ボールを失う機会も多く、そのたびに守備の態勢が取れていない。とりわけ、柴崎岳(ヘタフェ)、塩谷の2人のMFが背後を簡単に取られてしまい、DFとMFの間の危険なゾーンで自由にボールを持たれていた。
27分の失点は、まさに拙守が招いた。MFのラインを突破されるパスを出され、後手を踏んでいる。これを受け、バックラインの前でシュートポジションをつかんだカタールのアブデルアジズ・ハティムに、左足でミドルシュートを突き刺された。
3失点目を喫していてもおかしくはなかった。34分、日本はインサイドにパスを通され、ポストを叩く決定的なシュートを放たれている。
前半の日本は、戦術的にバランスが取れたカタールとは対照的に、攻守に乱れが出ていた。それに引きずられるように、個人の技術も単純なミスも目立った」
エチャリはそう言って、前半のプレーを厳しく評価したが、「後半は日本がプレーを改善させた」と語っている。
「後半は酒井宏樹(マルセイユ)が高い位置でプレーするなど、無理に真ん中に突っ込まず、サイドで幅を作れるようになった。これによって日本が主導権を握る。CK、FKの回数が格段に増えた。
カタールはたまらず選手を入れ替えたが、日本も原口元気(ハノーファー)を下げて武藤嘉紀(ニューカッスル)を投入し、攻勢を強めている。後半24分には、右サイドから相手の守備ブロックを広げ、中央にパスコースを作り出す。塩谷からのパスを、バックラインの裏で受けた南野拓実(ザルツブルク)がゴールを決めた。
サイドで幅を作り、相手の守備網を広げて、深みを作って、ダイアゴナルのパスを縦に入れる。それは、守備戦術を破る攻撃戦術の定石のひとつだ」
日本は1点差に迫ったものの、吉田のハンドがPKと判定され、逆転の流れは消えてしまった。
「吉田にハンドの意志はなく、審判も見逃している。VAR判定になったのは不運だった。後半は悪い内容ではなく、もしVAR判定にならなかったら、少なくとも同点に追いついていたのではないか」
エチャリは日本の健闘を称えた一方、細部についての問題点を指摘し、アジアカップの日本代表をこう総括している。
「たとえば、日本は多くのCKを取っている。柴崎のような優れたキッカーがいて、吉田、冨安健洋(シント・トロイデン)、大迫勇也(ブレーメン)が動きを合わせるのは一つの形だろう。しかし、あまりにバリエーションが乏しい。なぜ、ショートコーナーも用いないのか。
また、ロシアW杯のベルギー戦もそうだが、ゴールすることに気持ちが行き過ぎて、カウンターに対する準備ができていないシーンもあった。高いレベルの相手には、必ず研究されるだろう。
とはいえ、大会を振り返って日本のプレーは悪くはなかった。試合ごとに違う戦い方を見せ、対応力も示した。及第点の大会だったと、祝福の言葉を贈りたい」