ベルギーリーグ第23節のアンデルレヒト戦で、オイペンの豊川雄太は相手のCBに封じ込まれ、ほとんどボールに触ることな…
ベルギーリーグ第23節のアンデルレヒト戦で、オイペンの豊川雄太は相手のCBに封じ込まれ、ほとんどボールに触ることなく試合を終えてしまった(結果は1-2でオイペンの敗戦)。「試合のなかで孤立している。悔しいです」。何もできなかった自分の不甲斐なさを、豊川は素直に語ってくれた。

スウェーデン2部で昨季13ゴールを記録した木下康介
しかし、2月3日に行なわれた第24節シント・トロイデン戦での豊川は、アンデルレヒト戦とは別人のようにフリーとなってパスを受け続け、9分には先制ゴールを記録した。この1週間、しっかり課題と向き合ってきたことが、ひと目でわかるパフォーマンスだった。
ただ、シント・トロイデンの鎌田大地に同点弾を許すと守備陣が崩壊し、オイペンは1-4で大敗を喫してしまう。これで6位ゲント(勝ち点38)と10位オイペン(勝ち点28)の勝ち点差は10と広がり、事実上、プレーオフ1出場の夢は断たれてしまった。
「ダメだなあ……。1点獲っただけじゃ足りないということですよ。でも個人的には、今日の自分はよかったと思います。たくさんボールに触ることができました。今週、(クロード・)マケレレ監督やコーチとボールの引き出し方について個人トレーニングをしたんです。1週間でこれだけいい感じにできたので、手応えはあります。これから、徹底的に身体に染み込ませたい」
マケレレ監督から豊川は、「今のオイペンでは、君がしっかり起点にならないといけない」と言われているという。相手のMFとDFの間に生まれるスペースに降り、味方のパスを引き出し、相手CBを釣り出して裏を狙う……そんなイメージだ。
「自分の得点シーンが、そういう形でした」
CBシーベ・ブロンデッレからフィードを引き出した豊川は、左サイドハーフのシェイク・ケイタにパスをすると、すぐさま相手DFラインの裏へと走り込んだ。そして、ケイタのシュートがバーに当たったときには、豊川はシント・トロイデンのゴール前で完全にフリーになっていたのだ。一見”ごっつぁんゴール”のようだが、この一連の流れには1週間の積み重ねが凝縮されていた。
そんな豊川のもとへ、彼と同じ1994年生まれの木下康介が「久しぶりだね」と挨拶に来た。ふたりはU-19日本代表で一緒にプレーした間柄だ。
「監督、”あの”マケレレだよね。自分のチームの監督がマケレレだなんて、ビックリしたでしょう」「うん、ビックリした」などと、ふたりは話し始めた。
実は私にとって、木下は密かにスウェーデンに行って取材してみたいと思っていた選手だった。
堂安律のいるフローニンゲンに、シモン・ティブリング(現ブレンビー/デンマーク)というスウェーデン人MFがいた。フローニンゲンの番記者のひとりは今も親交が深く、スウェーデンまで試合を観に行って現地でティブリングに会っている。そこで木下のことを知り、「すごい日本人ストライカーがスウェーデン2部リーグにいるぞ」と、私に教えてくれたのだ。
木下がフライブルク(ドイツ)のセカンドチームに移籍したことは、ニュースになったので知っていた。しかしその後、彼がスウェーデンのハルムスタッズに移籍し、2年目の昨季、13ゴールを決めていたとは知らなかった。
1月18日、シント・トロイデンは木下の獲得を発表した。だが、ベルギーでは「木下の選手登録は2月半ばまでかかる」と報道されていたため、公式戦に出るのはまだ先と思われていた。
ところが2月1日の記者会見で、シント・トロイデンのマーク・ブレイス監督が「急に状況が変わり、うまくすると今日にも選手登録ができそうだ。さもなければ、来週のベフェレン戦になるだろう」と明かした。結局、木下は出場機会こそなかったものの、オイペン戦のベンチに座ることができた。
「スウェーデンで結果を出したので、ステップアップできるチームを探していました。シント・トロイデンは今、注目されているチームなので、ここで活躍できたらチャンスだなと思いました。話もうまくまとまったので、即決でした」
木下はシント・トロイデンへの移籍の経緯を語ってくれた。しかし同時に、なぜスウェーデンでプレーしていたのかも知りたいところ。その事情を、木下はこう説明した。
「フライブルクではケガもあり、いろいろあってうまくいかなかった(その後、ドイツ4部のホンブルグでもプレー)。そこで、どこへ移籍しようかと考えた時に、日本という選択肢もあったんですが、ヨーロッパで結果を残してなかったので、こっちでチャンスがあるならと思っていました。
今、清水エスパルスの監督をしているヤン・ヨンソンさんが、当時ハルムスタッズの監督だった。彼は広島、神戸でもプレーしていて、日本の関係者とのコネクションがあったので、そこから話がまとまりました」
スウェーデンでは、どのようなプレーをしていたのか。
「いちおう、点は獲っていました。なおかつ、チャンスメークや守備でのハードワーク……結局、全部やらないといけなかったんですが、そのなかで点を獲ることができました。スウェーデンに行ったのは、結果を残せたという意味では正解でしたね」
ただ、スウェーデンで活躍したとはいえ、ここまでの歩みは本人が思い描いていたものとは違っている。
「成長はしているけれど、結果がともなっていない。今の自分は、結果がこう(と言って、手を下げながら)落ちている。それを、V字回復のように上げていきたい。いいプレーをしているだけじゃダメ。ここで点を獲らないといけない」
ブレイス監督は、木下の印象をこう語る。
「190cmという長身で、ハードワークができ、得点能力の高いストライカーだ。英語も上手に話す。まだチームに来て間もないが、社交性の高い若者なので、すでにチームに馴染んでいる」
シント・トロイデンにとって6人目、ベルギーリーグ全体で見ると10人目の日本人選手――木下康介にも今後、注目したい。