那覇空港からクルマを北へ2時間ほど走らせると、沖縄本島最北端の国頭(くにがみ)村に到着する。自治体の公式サイトには…

 那覇空港からクルマを北へ2時間ほど走らせると、沖縄本島最北端の国頭(くにがみ)村に到着する。自治体の公式サイトには、「ヤンバルクイナやノグチゲラといった貴重な動物が生息し、東洋のガラパゴスとも呼ばれています」とある。そんな自然あふれるのどかな場所で、FC東京が新シーズンに向けて1次キャンプを張っていた。

 燦々(さんさん)と陽差しが降り注ぐピッチでは、和やかなムードで軽めの練習が行なわれていた。この日の前日にFC町田ゼルビア、Ⅴ・ファーレン長崎と強化試合をしたチームは、円陣で移動しながらリフティングをしたり、ヘディングでボールをつないだりしながら、たびたび大きな笑い声を上げていた。気温は20度近く。トレーニングを引き上げる選手たちは口々に「暑いですね」と言いながら笑顔を見せた。




チームに復帰した久保建英(中央)ら、キャンプで笑顔を見せるFC東京の選手たち

 チームを率いて2年目のシーズンを迎える長谷川健太監督は「順調にきていると思います」と話す。

「ここまでの3試合(1月22日には大宮アルディージャと対戦)では、いい部分とそうでない部分が見えました。当然、コンディションの面はまだまだで、(試合では)疲れによるミスも多かった。プレーのクオリティ、技術面、戦術面を高めていくのはこれからです。

 ただ、1次キャンプの試合では点が入らないことが多いのですが、町田戦で3点、大宮戦(45分を3本)でも2点取れた。この時期に、J2上位のチームと試合をしてゴールを奪えたのは大きな収穫だと思います」

 その町田戦で終盤に決勝点を決めたのは、横浜F・マリノスへの期限付き移籍を終えて復帰した久保建英だ。指揮官に17歳のアタッカーについて質問を投げかけると、もともと柔和な長谷川監督の表情がさらにほころんだ。

「一年経って、だいぶ逞しくなってきましたね。(新シーズンは)本当の意味で、(ファーストチームのレギュラー)競争のスタートラインに立てるでしょう。もともと技術的にはいいものを持っているのですが、(去年は)それをJ1の舞台で発揮するだけのフィジカルが少し物足りなかった。昨日の試合でも、スプリントや球際がだいぶ強くなっていたので、今シーズンの飛躍に期待しています」

 町田戦で4-4-2の右MFでフル出場した久保本人は、「引き分け濃厚のなか、苦しい時間帯に(決勝)点を取れたのは、個人としてもチームとしてもプラスだったと思います」と振り返っている。横浜へのローンでいかに成長できたかについては、「あまり自分ではわかりませんが、一度環境を変えた身としては、それがプラスだったとピッチ上で証明していきたいです」と語った。

 1次キャンプでの3試合は2勝1敗(大宮と町田に勝利、長崎に敗北)。勝敗そのものが重要ではない時期だが、選手会長を務める太田宏介は次のように見解を述べた。

「自分の経験的に、キャンプやプレシーズンの試合ではあまり結果が出ないほうが、実際のシーズンにはうまく入れるような気がします。去年もプレシーズンは1敗もせず、ほぼ完璧な内容と結果だったのですが、シーズン序盤戦はつまずきましたから。何が正解かはわからないですね。今の時期に勝つに越したことはないと思う一方で、負けから学ぶこともあるし、課題が明確になったほうがいいとも思います」

 2018シーズンの副キャプテン(今季は未定)は新シーズンの目標について、「もちろん優勝を目指して戦うけれど、現実的にはACL出場権獲得(3位以内)ですかね。挑戦者であることは間違いないので。去年は6位でしたが、夏以降勝てなくなったし、内容には満足していない。得点も、攻撃のバリエーションも少なかった」と語った。

 大田自身は昨シーズン、小川諒也とのポジション争いに晒されたが、「(若手の突き上げは)もっともっとほしい。年上の選手がそれに負けずに、みんなが競争をするようになればいい」と激化する定位置争いを喜ぶ。

 31歳となり、「(年齢順では)上から数えた方が早くなった」太田は、2015-16シーズンの途中から約1年間、オランダのフィテッセでプレーした。その経験を若手に伝えることもあるのかと聞くと、「今の若手は、びっくりするぐらい、何も聞いてこない(笑)。自分が若い頃は年上の選手にいっぱい話しかけて、たくさん吸収したいと思っていたけれど。試合に出たいとか、活躍したいとか、そういう気持ちを態度や姿勢で示してほしい。(若手は)もっと尖ってほしい」と願う。

 これは、チーム全体の成長を考えてこその言葉だろう。日焼けした顔に汗が光るベテランは最後に、「自分は去年、FKから1点しか取れなかったので、今年は2点取ります」と言ってバスに乗り込んでいった。

 かつてエールディビジで武者修行した31歳と、バルセロナの下部組織に所属した経験を持つ17歳。首都のクラブが3度目のACL出場権を手にするには、彼らの活躍が欠かせない。