1月の移籍市場が閉まり、この冬も多くの日本人選手がヨーロッパへ渡ることになった。 筆者がスペイン人エージェントから…

 1月の移籍市場が閉まり、この冬も多くの日本人選手がヨーロッパへ渡ることになった。

 筆者がスペイン人エージェントから、MF安西海斗(20)に関する人物照会を依頼されたのは、一昨年のことだった。

「国際ユース大会での柏ユースのプレーは目覚ましかった! そこで、MF安西の日本での評判はどうだろうか? 大袈裟かもしれないが、セルヒオ・ブスケッツのような展開力があるように見えたぞ。スカウトの間でかなり噂になっている。おまえの意見を聞かせてくれ」

 筆者は正直に答えた。

「安西という選手を知らない。プロ選手としてのプレーを見たことがなく、まったくわからない」

 当時、安西は柏レイソルのトップチームに登録していたものの、リーグ戦での出場機会はなかった。一応、柏の選手たちにも確認を入れたものの、特筆して報告するような話はなし。脚色せずに、「日本人はこれまで、どのカテゴリーであれ、1シーズンはプロとして継続的に試合に出てからでないと、欧州で成功したケースは例外的」とだけ付け加えて返答した。



J2モンデディオ山形からポルトガル1部ブラガへ移籍した安西海斗

 今年1月、J2モンテディオ山形に期限付き移籍していた安西は、電撃的にポルトガル1部リーグ、ブラガへの移籍が決まっている。1シーズン半の在籍で、25試合に出場。プロとしての経験は積んだということか。

 安西の移籍がどのような経緯で進んだのかはわからない。紆余曲折もあったのだろう。ひとつ言えるのは、複数の欧州のクラブのスカウトが、Jリーグで出場経験のない日本人の若者に興味を示していたという点だ。

 日本サッカー界が、世界から青田買いのターゲットにされつつある。
 
 やはり今年1月には、安西と同じ柏のGK小久保玲央ブライアン(18)も、ポルトガル1部リーグの強豪、ベンフィカへの移籍で合意した。

 小久保の場合、まだプロ選手としての出場経験はない。ただ、2018年に決勝進出を果たしたアルカスU-17カップにおいて、柏U-17の守護神として、トッテナム、レアル・マドリード、ベンフィカを破る立役者になった。パリ・サンジェルマン戦ではマン・オブ・ザ・マッチとして表彰されるなど、そのポテンシャルの高さがスカウトの間で高く買われ、獲得に至ったようだ。

 ここ数年、20歳前後の日本人選手が欧州挑戦へと足を踏み出すケースは、確実に増えている。

 今やハンブルガーSVでドリブラーとして名を売る伊藤達哉(21)も、柏ユース時代に国際ユース大会で活躍する姿が関係者の目に止まった。2014年のアルアインインターナショナルカップでは、グループリーグのハンブルガー戦でマン・オブ・ザ・マッチに選出されている。チームの準優勝に貢献し、大会MVPを受賞。多くのクラブが興味を示すなか、ハンブルガーを選んだ。

 伊藤は1対1で勝負する力に優れ、守備陣を崩すことができる。欧州のスカウトが舌なめずるタイプだ。だが、日本では「持ちすぎ」と言われて敬遠されることも。組織としての役割で縛り付けられ、力を発揮できないケースは少なくない。「日本でダメなら、ヨーロッパでもダメ」とは必ずしも言えないし、逆に「ヨーロッパでいいなら、日本でもいい」とも言えないのだ。

 ポルティモネンセの中島翔哉(24)にしても、欧州に渡ってから真価を発揮するようになった。若くして注目されたものの、FC東京ではレギュラーを取り切れず、くすぶっていた時期もある。それがポルトガルでは、1年目でいきなり10得点を叩き込み、12アシストを記録したのだ。

 その中島は、「日本人選手の道を開拓した」と言えるだろう。安西、小久保に続いて、名古屋グランパスのMF深堀隼平(20歳)も、ポルトガル1部リーグ、ビトーリアへの期限付き移籍が発表された。日本人選手の活躍は、日本人選手の株を上げる。

 特筆すべきは、最近は挑戦者の年齢が下がりつつある点だろう。

 同じことはオランダでも起きている。堂安律(20)は19歳からオランダ1部リーグ、フローニンゲンでプレーし、いきなりチームMVPを受賞した。アジアカップでは日本代表の主力として活躍。右サイドから切り込んで攻撃は切れ味鋭く、左足は伝家の宝刀の如く、その名声は高まる一方だ。

 堂安の躍進もあって、今年1月には柏の中山雄太(21)がオランダ1部リーグのズヴォォレに移籍することも決まった。日本にいる複数のスペイン人指導者たちに「ポリバレント性」を絶賛されていた中山も”海外向き”と言えるかもしれない。インサイドハーフ、ボランチ、センターバック、サイドバックをこなせ、しかも左利きである点がセールスポイント。日本人が考える以上に、左利きの特性は重宝されるのだ。

 先駆者たちの成功もあって、日本人選手の海外進出は着実に増加しつつある。青田買いにつながるほどに――。Jリーグのクラブはうかうかできなくなってきたが、それは「世界が日本サッカーの実力を認めるようになった」ということかもしれない。