悔しさに涙する友岡阿美主将 全日本選手権準決勝はクラブ1位チームNeOとの対戦。前半、AT西村(商4)の得点から慶大が一歩リードするも、高い技術力を誇る社会人相手に要所で差を見せつけられ、すぐさま勝ち越しを許す。1-2で迎えた後半戦のプラン…


悔しさに涙する友岡阿美主将

 全日本選手権準決勝はクラブ1位チームNeOとの対戦。前半、AT西村(商4)の得点から慶大が一歩リードするも、高い技術力を誇る社会人相手に要所で差を見せつけられ、すぐさま勝ち越しを許す。1-2で迎えた後半戦のプランは「残り10分にギアを2つ上げ、前線からプレスしてどどっと点を取って勝つ」(大久保監督)というもの。作戦通り、終盤にMF石田(経4)がここ一番のシュートを決めると、一気に畳みかける慶大。しかし、あと一歩が及ばなかった。この試合を3-5で敗れ、日本一への道は虚しくもここで断たれた。

第29回ラクロス全日本選手権大会 準決勝vsNeO

12/9(日) 14:30ドロー @ヤンマーフィールド長居

 前半後半合計
慶大
NeO

スタメン

ポジション背番号名前学部・学年出身高得点
28大沢かおり経4学芸大附属国際
DF62櫨本美咲経4慶應女子
DF75平井淑恵商3慶應女子
MF51石田百伽経4慶應女子
MF58清水珠理商2慶應女子
MF66石川のどか政4品川女子学院
MF73伊藤香奈経4慶應女子
MF81野々垣眞希商2慶應女子
MF97小久保磨里奈政4慶應女子
AT32友岡阿美政4慶應女子
AT33西村沙和子商4慶應女子
AT72吉岡美波理4大妻多摩

ベンチ入り選手

ポジション背番号名前学部・学年出身高得点
西村佳子政3東京女学館
MF17脇坂遥香経3慶應女子
MF20溝口友梨奈経2慶應女子
MF59日野美咲商2慶應女子
MF77橋本ひかる政4慶應女子
AT18荒井理沙経3慶應女子
AT26井上ゆり子経2慶應湘南藤沢
AT38石井有花子政3雙葉

 前回、今季初の黒星を喫した慶大。関学戦後のチームの雰囲気を「すごく落ち込んではいた」と友岡阿美主将(政4)は振り返るが、2週間後に控える全日本選手権に向け、「やれてもあと2試合」とチームを奮い立たせた。残された日本一を懸けて、社会人チームのトップ・NeOを相手に彼女たちはもう一度立ち上がった。


写真提供:女子ラクロス部

 大阪・ヤンマーフィールド長居にて幕を開けたNeO戦。最初の決定機は慶大だった。開始5分、ゴール付近でボールを保持したAT西村沙和子(商4)は相手ディフェンスの隙に素早く潜り込み、そのままゴール。西村の先制点に喜ぶ選手たちだが、クラブ1位チームを相手に試合はそう一筋縄にはいかない。ファウルを立て続けに取られて追い込まれる慶大をよそに、相手はスムーズなパスワークで慶大守備陣をかわし、中盤に2連続得点。すぐさまリードを奪われてしまう。終盤にかけては互いの好守備もあり、両者ノーゴールのままに前半終了。1-2と慶大が1点を追う形で後半戦へ繋いだ。


先制点を決めた西村に駆け寄る選手たち

 ビハインドの慶大には勝算があった。それは「後半残り10分にギアを2つ上げ、前線からプレスしてどどっと点を取って勝つ」(大久保監督)というもの。最後に自分たちの流れが来ることを信じて臨んだ後半戦は、開始早々にAT吉岡美波(理4)がフリーシュートを手堅く決めてスコアを2-2に並べる。しかし、この日は重なるファウルで自らの首をしめた。8分に相手のフリーシュートが決まり、1失点。さらにその後も慶大選手の一時退場から劣勢を強いられると15分、技ありの相手パスから失点を許し、点差を2にまで広げられた。選手たちはいずれ来る流れを信じてNeOの攻撃に耐えた。

 後半21分、そのときは訪れた。慶大ボールから始まったタイムアウト明け、友岡からゴール右サイドに構えるMF石田百伽(経4)に絶好のパスが通った。低めの姿勢でキャッチした石田はそのままクロスを振り抜きネットを揺らした。この1点を起点に、慶大はラストスパートを開始。前線から果敢にゴールを狙うも、次の1点が遠かった。残り2分を切った頃、NeOがとどめを刺すように1点を返した。最後まで希望を捨てずにコートを駆ける選手たちの努力も虚しく、試合終了。スコア3-5で敗れ、部員全員の夢がここ、大阪ではかなく散った。


4年は涙の引退

 学生対社会人、それぞれのプライドをかけた熱戦は後者に軍配が上がった。試合を振り返れば、両者の間に歴然たる差があるわけではなかった。ドローやボールキープで言えば慶大はほぼ互角に渡り合った。しかし「(NeOは)ファウルコントロール(ファウルを取られないディフェンス)がしっかりできていて、その後のボール処理もうまかった」と大久保監督の評するよう、技術面でNeOが慶大の一歩先を行き、結果的にそれが勝敗を分けた。超えられなかった経験の壁、それでも監督は「2週間前から今の状態まで持ってきて、チャンピオンチーム相手にこれだけのゲームをしたこと自体は選手たちをすごく評価できる」と笑顔でチームの健闘を称えた。

 これをもって、4年部員は引退となる。この1年、覇者のフィルターを通して見られる彼女たちは、常にある程度の重圧を感じながらプレーしてきたはずだ。「強い慶應」であるために、選手たちは様々な闘いを強いられた。昨年も成し得なかった全戦勝利での関東制覇はその努力の結晶だ。目標である日本一には届かずとも、ここまで戦い抜いた選手たちに、いま拍手を送りたい。「楽しくラクロスができて幸せだったから、みんなもそうであって欲しい」。友岡らの思いは次の代へ引き継がれる。来季、また新たな慶大ラクロスが戻ってくることを心待ちにしたい。

(記事:堀口綾乃 写真:五十右瑛士)

◇以下、コメント◇

大久保監督

――今日のゲームプランとそれを振り返って

関学戦に負けて、チーム全体が地の底まで落ちるようなどんよりした空気のなか、一昨日までは勝てるビジョンが全く浮かばなかった。だけど一昨日、勝てそうな道筋が一つだけ見えて、一応途中まではそれ通りに行きました。

――そのプランとは

前半は相手のことをのらりくらりとかわして、マンツーディフェンスで相手の目をくらませて、2点ビハインドまででついていけばいい、と思っていました。それで後半残り10分にギアを2つ上げ、前線からプレスしてどどっと点を取って勝つというプランでした。

――そのプラン通り行きましたか

いいところまでは行ったんですけどね。2-4で残り10分を迎えて、その後3-4になってあと1点というところで取りきれなかった。あとはやっぱり向こうがファウルコントロール(ファウルを取られないディフェンス)がしっかりできていて、その後のボール処理もうまかった。そこら辺の技術の差が出たかなと思います。僕らはそのグラボ処理ができずにファウルして、イエローカードをもらって、その間に2点取られてゲームの流れを持って行かれてしまったかな。ただ、2週間前から今の状態まで持ってきて、チャンピオンチーム相手にこれだけのゲームをしたこと自体は選手たちをすごく評価できるし、それだけのチームを今年も作れたという自負はあります。

――その他にも及ばなかった点は

戦略的なことや戦術的なことはお互いにわかっていた部分もあったし、ある程度わかられているなかで、お互い一番弱いところを見せないようにゲームを進めるというのはわかっていました。何度も試合して、お互いよく知っているので。まあ、そこはうまく行きました。ただ、ボールがニュートラルになったときに向こうのグラボ処理がうまかったのと、その後のボールをフリーの選手に逃がす技術と、ファウルを取られないという技術と、そこら辺の差ですかね。その技術の差で審判は向こうの味方になって、こちらの敵になってしまいました。そこは大きかったですね。

――今年のチームを振り返って

去年一番良い成績が出て、今年の負けられないプレッシャーはすごかったと思うんですけど、そのなかで4年生を中心によく頑張ったと思います。なかなか大変な試合も多かったし、ある一定水準のプレーを期待されながらプレーするのは厳しかったと思うんですけど、まあそのなかでもよく耐えたというか、よく7試合、8試合と持ちこたえたかなという気がします。

――最後に選手にかける言葉は

一緒にやっていて面白かったよね、という感じです(笑)勝ち負け云々よりも。こんなに面白いことできたから。色々成長もできたし。よく頑張ったんじゃないですか?勝ち負けはどっちかなんで。それよりもここまでを楽しめたことの方がずっと大事です。僕も一緒に楽しめたので、良かったと思います。

友岡阿美(政4・慶應女子)

――今のお気持ちは

超スーパーハイパー悔しい…けど、すごく全員頑張った。みんな頑張った結果力及ばず…勝てなかったのは自分たちの責任だけど。でも全員よく頑張ったなというのが今の正直な感想です。

――前回の敗北からこの試合に向けて、どのように切り替えて臨みましたか

関学戦は、関東も全学準決勝も勝って、このままの流れで行こうと言っていたらボコボコにされて。自分たちのなかでもやられたなとすごく落ち込んではいたんですけど、「逆にここで落ち込んではいられない」「やれてもあと2試合だ」という話にはなっていて。しかも、去年サドンで勝った相手だからこそ絶対に負けたくないと思っていたので、気持ちを切り替えて、NeOに勝つためにはどのようにすればいいのか、という練習を組み立ててやった1週間でした。

――強敵であるクラブチームにはどのような面で対抗しようとしましたか

去年NeOに勝った時点から、私たちが圧倒的運動量と言っているなかで社会人チームの方々も運動量で負けたくないと思っているだろうし、その上で、向こうには技術があると思っていたので、ある意味最後は気持ちの勝負だと思っていました。大久保監督も「魂の勝負だよ」みたいなことを話していて、最後の自分をどれだけ信じて魂をぶつけられるか、というところでした。少し戦う土俵が違ったというか、気持ちの勝負という感じでした。

――試合を振り返って

ゲームプラン的には結構いい形で持っていけました。前半を1,2点差で後をくっつけていたら後半に私たちに分があるという話だったので、すごくいい流れで前半を持っていって。それでも後半に点を取りきれなかったのもそうだし、ファウルが多くなってしまい自分たちの足を引っ張ってしまったかなという風に思ったので、すごく惜しかったかなと思います。

――最後に、チームメイトにかける言葉は

大学からラクロスという競技を始めて、4年間でラクロスがすごく面白いなと思ったし、女子で100人もいるチームは私たちぐらいしかいないから、色んな人がいるし。ラクロスをやり始めて面白くない時期もあれば、本当に面白い時期もあったんですけど、結局は色々な人と絡んで楽しくラクロスができて幸せだったから、みんなもそうであって欲しいと思います。色々と諦めずに前を向いて欲しいなと思います。