2018年11月に行われた全日本長良川カヌースプリント長距離選手権大会で、男女ともに学生8位に入賞した端艇部カヌー部門。男子部としては2年連続、また4年前に創部された女子部にとっては初の入賞となった。今回は、その快挙を成し遂げた松本惠選手(理3・栄光学園)と遠田穂奈美選手(文3・福岡県立筑紫丘)に選手権を振り返ってもらった。4月からは最上級生となり、チームを引っ張っていく存在になるだろう二人だが、どのようなチームを目指していくのか、意気込みを語った。

—まずは自己紹介をお願いします

遠田:文学部3年の遠田です。高校までは水泳をやっていて、特技はタロット占いです。暇な時に、今日の夕飯何食べようかなーと占ったりします。苦手なことは球技です。

松本:理工学部3年の松本です。惠と書いて「けい」と読むんですが、予備校とかでは、名前だけ見てよく女の人に間違われました。美容院を予約したときも、勝手に女の人として登録されていたこともあります。大学に入ってからはなくなったんですけど(笑)中高では、陸上部に所属して投てき種目(砲丸投げ、円盤投げ)をやっていました。僕も球技が苦手です。

—カヌー競技については大学に入ってから知るようになったのですか

松本:そうですね。一回テレビで見たかなというくらいでした。

遠田:最初、新歓期に声かけてもらったとき「ボートとなにが違うのかな」と思いました。

—カヌー部に入った理由は

遠田:いろんな理由はあるんですが、一番大きな理由は、日本一になりたいという思いからです。カヌー部に誘われたときも、コーチや様々なサポートなどを見て、日本一になれる環境が整っていると思いました。

松本:大学でスポーツをやりたいと思いました。初めは理工学部の体育会に入ろうと思ったり、陸上を続けようとも思いましたが、大学のレベルの高さも考え、「大学から始めることができて、球技でないスポーツ」を探すことにしました。そのなかにカヌーが選択肢にあり、最終的に選びました。

—入ってみていかがでしたか

松本:基本的にカヌー部はカヤックなんですけど、僕の場合はカナディアン(パドルのブレードが片方にしかついてないものを使用)をやっていました。ちなみにスラロームで有名な羽根田卓也選手はカナディアンです。当時入部していたときに、カナディアンをやっている先輩が1人いて、入部から8月ごろまでは、それをやっていました。なので、同期よりカヤックに慣れるのは遅かったかなと思います。

遠田:やってみての印象は、やればやるほど結果が返ってくるスポーツだと思いました。

—11月の長距離選手権では、お二人とも学生8位で入賞されましたが

遠田:嬉しかったです。もうちょっと上の順位も狙えたかなと思っていましたが、それでも「ここまで来たんだな」と感じました。

松本:僕の場合は、社会人や高校生に強い選手がいて全体順位がそんなに高くなくて、競技中は自分が何位なのか、あんまりわかっていませんでした。そしてこぎ終わったときに、「8位だよ」と言われ、実感のないまま賞状をもらったという感じでした。

—普段のレースと違い、男子15キロメートル、女子10キロメートルを漕ぐ長距離選手権ですが、どんな準備をされましたか

遠田:普段の練習は、1分や2分で500メートルを漕ぐメニューなんですけど、3キロメートルを漕ぐ練習をしていました。

田渕(副務):長距離選手権は、ずっと同じコースをぐるぐる回るので、普段のレースとは違います。

遠田:「波乗り」といって、カヤックの後ろについて漕ぐ方法があるんですが、それをいかにリズムよく続けることができるかだったり、流れを読むとかだったり、ゲーム性が高い競技だと私は思います。

松本:1000メートルが強くない選手でも、これは得意という選手もいたりします。持久力とメンタルの強さも試されますね。

—女子部にとっては初めての入賞、男子部は2年連続の入賞ということで、ここまで苦労したこともあったと思いますが

遠田:怪我することが多かったり、お腹も弱かったりして、体調が安定しませんでした。また女子部ができたのが、私の1つ上の代からで、部としても試行錯誤しながら活動していました時期もあり、精神的に安定もしていませんでした。それで嫌なこともあったんですが、結果で見返してやろう!と努力していました。私は福岡県出身で、同郷に強い選手がいるんですけど、ずっとその人に憧れてカヌーを続けてきました。そしたら、この前の大会でその人に勝つことができました。そのときに声をかけてもらって「同じ福岡県ってだけですごい嬉しかった!」と言っていただきました。そう言われたときは涙が出て来て、その人目指してやってきてよかったと思いました。

松本:今考えてみると、同期と4ヶ月くらい遅れてカヤックを始めたので、2年の夏までは初心者同様で、一番下のチームで練習していました。でもインカレに向けた練習期間のチーム分けのときに、偶然にも同期の中で力のある選手と一緒になりました。その時に、いつも「こいつに追いつくぞ」という気持ちで練習していたこともあり、インカレの関東予選を突破することができました。ちょうど昨シーズンは先輩の渡辺悠介選手(理4・前副将)と練習する機会も多くあり、力をつけることができたと思います。渡辺選手が引退して、自分が部を引っ張っていけるかという時に、長距離選手権でこうした賞をとることができたので、その点ではよかったと思います。


長距離選手権を振り返る遠田

—ご自身の競技スタイルを教えてください

松本:500メートルと1000メートルの種目があるんですが、僕は慶應のなかでは500メートルが得意かなと思っています。長いスパンで後半にスパートをかけるというよりは、前半に強く進んでコンスタントに漕いでいきますね。

遠田:気持ちで漕いでいます。

田渕(副務):彼女の場合は、パッションや力強さがあります。女子のなかでもウェイトの部分では上がるほうなので、パワーも生きていると思います。漕ぎの基礎がすごくしっかりしていますね。テクニックもあるので、燃費のいい漕ぎをします。

遠田:確かに、気持ちとテクニックで前の選手についていく感じですね。でも、途中で一気に前に進められて死ぬ、、ということもありますが(笑)

田渕(副務):松本の場合は、182センチと身長が高く、リーチが長いのも強みだと思います。

—お互いの印象はいかがですか

松本:遠田に関しては、1年のころから本気度がすごく伝わってきます。最近は、強豪の鹿屋体育大学(鹿児島県)に一人でアポを取って、練習にいったりしていました。

田渕(副務):自主練の量も同期の中では一番多いと思いますし、カヌーが好きなのが伝わってきます。

遠田:松本選手は、クールなんだけど、情熱的です。理工学部で忙しいんですけど、成績も優秀で、「神は細部に宿る」というようなレポートを書いたりしているようです。競技の研究もよくしていて、飲み会のときも「携帯見ているなぁ」と思ったら、カヌーの動画を見ていました。

—カヌーの動画はご自身のものですか

松本:自分のも見て研究はしますが、海外のトップ選手の試合を見るのが好きです。語り出したら止まらないです。世界大会の情報とかもよく知っているので、「世界の松本」とも呼ばれています(笑)


競技の研究は欠かせないという松本

—普段の練習は、どんなことをやっていますか

松本:11月から1月までは冬のウエイト期間となっていて、カヌーに乗ることはあまりありません。その代わりに体を鍛えることを今は重点的にやっています。あとは、練習の質にこだわってはいます。カヌーは意外とハードな競技なので、気をぬくとすぐにエネルギー切れになっていまいます。そういうことがないように、身を引き締めてやっています。

遠田:私は自主練のときに、苦手なスタートを意識して練習しています。500メートルは大体2分で漕ぐんですが、その2分間では、絶対負けないという気持ちで取り組んでいます。

—2020年には東京オリンピックがありますが、スポーツ選手として出場を考えたことはありますか

遠田:目指してみたいという気持ちはありますね。

松本:女子はまだ選手層が薄いので、チャンスはあると思いますが、国内の男子は層が厚いです。海外の男子選手のレベルはすごく高いです。200メートルの種目は日本人選手も出場していますが、1000メートルになると、出場した日本人選手はいないのでは、というくらいレベルの高さですね。そう考えると、厳しいかなあと考えます。

田渕(副務):だから全力でボランティアだけはしたいですね。

—カヌーをやってきて、よかったと思うことはありますか

遠田:人間性が高まったことだと思います。カヌーは個人スポーツなので、自分が勝っていればいいやと思っていましたが、最近は「チームで勝たないと意味がない」と思うようになりました。後輩の面倒とかを見たりするのも楽しいですし、後輩が結果出すとすごく嬉しいです。

松本:僕は自分のためだけに頑張ることができないタイプで、練習を自分のためにどれだけやるとか考えることが苦手です。だから引退された先輩やコーチたちが、「自分が勝てば喜ぶだろうなあ」と思いながらやることが一番のモチベーションです。それに気づけたことが良かったです。

—カヌー部のチームとしての一体感は感じていますか

田渕(副務):カヌー部は学生主体で動いていて、練習メニューを考えたりするのも自分たちでやります。監督やコーチは確認してもらう立場になってもらいます。なので、一人よがりになっていたら、チームとして成り立ちません。こうしたところから、チームで勝つという意識が高まっていると思います。

—代替わりを経て、一番上の代となりましたが、今後目指したいことはありますか

遠田:私たちは男女ともに、インカレのカヤック部門で3位以内に入る(部門3強)ことを目指しています。私たちは、それに見合った組織であるかを、日々判断しながら行動しています。例えば、今は体づくりや食事の管理をしています。

田渕(副務):今は最新で最良のメニューを取り入れて、様々な方面から情報を集めて練習づくり、後輩の育成をしています。後輩の成長が、目標の部門3強につながると思うので、選手層の底上げを目指しています。

—それでは、最後にこれからの意気込みを

遠田:インカレでシングル、ペアの両方で優勝して、今まで育ててきてくれた先輩・監督・コーチや応援してくれた家族・後輩たちに最大の恩返しをしたいと思います。

松本:僕はどの種目でも表彰台を目指して、これから頑張りたいと思います。

—ありがとうございました!

(取材:佐野ちあき)

選手プロフィール

遠田 穂奈美(文学部3年)

2016年 全日本学生カヌースプリント選手権 新人部門200mシングル優勝

2016年 全日本学生カヌースプリント選手権 新人部門500mペア優勝

2016年 全日本学生カヌースプリント選手権 新人部門500mシングル準優勝

2017年全日本学生カヌースプリント選手権 200mペア決勝出場

2018年海外派遣選手選考会500mペア4位

2018年国体予選東京都大会優勝(オープン)

2018年全日本学生カヌースプリント選手権 500mシングルB決勝3位

2018年全日本学生カヌースプリント選手権 200mペア決勝出場

2018年全日本学生カヌースプリント選手権 500mフォア5位

2018年全日本カヌースプリント選手権 500mシングルB決勝9位

2018年全日本カヌースプリント選手権 500mフォア3位

2018年長良川長距離選手権学生8位入賞

松本 惠(理工学部3年)

2017年全日本カヌースプリント選手権500mフォア4位2018年海外派遣選手選考会

1000mシングル準決勝進出

2018年国体予選東京都大会

500mシングル4位

2018年全日本学生カヌースプリント選手権1000mフォア7位

2018年全日本学生カヌースプリント選手権200m準決勝進出

2018年全日本カヌースプリント選手権1000m準決勝進出

2018年長良川長距離選手権学生8位入賞