大手企業がクラブ活動の一環として「eスポーツ部」を新設する動きが広がっている。最初に口火を切ったのは、従業員数約1万人の大手ITサービス企業「株式会社日立システムズ」(本社:東京都品川区、社長:北野昌宏)である。 10月1日、同社は文化体育…

大手企業がクラブ活動の一環として「eスポーツ部」を新設する動きが広がっている。最初に口火を切ったのは、従業員数約1万人の大手ITサービス企業「株式会社日立システムズ」(本社:東京都品川区、社長:北野昌宏)である。

10月1日、同社は文化体育クラブの1つとしてeスポーツ部を設立。主な活動競技に人気サッカーゲーム『ウイニングイレブン2019』を採用し、来年行われる茨城国体の関連プログラムである「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」(2019年10月に茨城県で開催予定)への出場を目指すとしている。

VAMOLAは、同社eスポーツ部部長の杉山治さんと副部長の金子麻紀さんにインタビューを敢行。前編では、同社のeスポーツ部設立の背景を聞いた。後編は、現在行っている活動内容と今後の展望について紹介する。

■関連記事リンク:日立システムズeスポーツ部インタビュー前編「社長直々の相談から、社内eスポーツ部誕生へ」 https://efootball.jp/2018/12/07/hitachisystems_esports_interview1/


(写真:左・金子さん、右・杉山さん)

――eスポーツ部の目標は

杉山さん:「働き方改革」とすると壮大な目的に聞こえてしまいますが、要は「チャンレンジする企業風土を醸成しましょう」と言うことです。その取り組みの流れの中で、今年の茨城国体の関連大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」への出場を当面の目標にできたらと思います。また、活動を通じて、世代と組織を超えた交流を行えたらと思います。

――茨城国体に向けて具体的な取り組みの動きは

杉山さん:こうした企画は、ノリを良くしないと面白くありません。茨城国体は3人対3人の対戦(COOPモード)がルールです。当部も3人1組のチームを16チーム結成することで48人の部員からなる「eスポーツ部48」を結成しようと思います。

その中からエリートの2チームと1人の補欠を選抜し、「神7」と呼ぼうと…(苦笑)。ちなみに、補欠は部員のKさんの予定です。

――eスポーツ部への入部希望者の状況は

金子さん:現在、25名の正式入部が決まっています。世代はかなりバラバラです。若手は新入社員も多く、そして最高年齢は北野社長です(笑)。もちろん男性部員が多いですが、女性部員もいます。

――入部理由について

杉山さん:3分の1はウイニングイレブン経験者、3分の1は社長とゲームをしたい社員、3分の1はこの流れに巻き込まれた社員でしょうか(笑)。

――当面の活動内容を教えてくだい

杉山さん:2月2日に社内eスポーツ大会を行います。2月の茨城国体の予選エントリーまでには、有望な選手を集めようと思います。

今後は毎月1度程度、部が行う定例のゲーム大会を通じて、世代と組織を超えた交流を行えたらと思います。お互いにゲームのプレイを教えたりしながら、気軽にできたらと思います。当社の規模になると、社長に会ったことが無いという人もいます。「若手が社長とゲームをしてきました」となると、少しずつ会社の空気もポジティブに柔軟な方向に変わるのではないかな?と期待しています。

――eスポーツ部発足のキックオフイベントの社員の反応は

金子さん:本社10階にカフェテリアがありまして、お菓子などを食べながら39人の社員が参加しました。ウイイレを学生時代にプレイしていて、久しぶりにやってみたという人がいましたが、「選手の動きや表情、芝生の質感やスタジアムの観客のディテールまで、画質のクオリティが上がっていて驚いた」と言っていました。また、「社長と一緒にゲームができて楽しかった」、「社長が気さくに話してくれてよかった」という声も挙がりました。

杉山さん:ただ、会社のLANのセキュリティ上、ネットワーク対戦が実現できませんでした。その後、ITインフラ部門の人に相談したところ、本社2階の応接フロアなら(LANの)口を作れるかもと。早急に3対3のネットワーク対戦ができるように整備したいと思います。

――eスポーツ部設立は当媒体を含め、ニュースになりました。反響は

金子さん:まず、日立グループからの反響がありました。他には当社の研究開発本部が、eスポーツに関連する事業の調査・研究を始めました。その本部長から、「楽しいことしよう、楽しくやろう」という発言があったのが印象的でした。普段の仕事をするときに、なかなか「楽しくやろう」とはならないので、なおさらeスポーツ部設立の効果を感じました。

――(『ぷよぷよ』と『グランツーリスモ』も茨城国体関連eスポーツ大会の実施タイトルに採用されましたが)『ウイニングイレブン』以外のタイトルに関して

杉山さん:立ち上げたばかりで、いろいろなものに広げると大変ですが検討は常にしていきます。例えば、2月2日に予定している社内eスポーツ大会においては、『ぷよぷよ』と『グランツーリスモ』もプレイできるよう、スペースを設ける方向で準備を進めています。もしキラリと光る人材がいたら、大会にエントリーするかもしれません。

――現在の練習状況について

杉山さん:チームごとに練習をしてもらっています。オフィシャルに集まるのは月に1度、定例大会のときです。チームワークが大事だと思いますので、それぞれぞれのチームのメンバーが自宅からネットワークで繋いで一緒に対戦したり、プレイ環境が充実しているカラオケ店を利用したりして、練習を行っています。

――温めているプランはありますか

杉山さん:当社は復興支援を目的として仙台にある文化ホールのネーミングライツを取得しています。例えば、そのホール(日立システムズホール仙台)で大きな大会を開催することなどが考えられると思います。

また人事部門では、ダイバーシティ推進や若手社員の離職防止のために、eスポーツゲーム大会を通じて社外異業種との交流も積極的に行っていきたいと考えているようです。

1つずつの企画を通じて、アイディアや反響が出てくると思いますので、社内外の色々な人を巻き込みながら大きな動きにできたらと思っております。

■eスポーツ部部員の声

12月19日、日立システムズの社内でチーム対抗戦が開催された。「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」予選の社内代表選手「神7」の選定を行うのが狙いだ。

以下、優秀な成績を収めた「神7」候補の部員、伊藤慶生さんのコメント。

伊藤さん:同期3人でいつも練習しているのでチームワークには自信があります。オンラインで対戦していると強敵が多いので油断ができませんが、予選を勝ち抜き本大会に出場できるように頑張ります!


(写真:一番左が伊藤さん)

以下、初心者で「お笑い7」候補の部員、城戸崎新治さんのコメント

城戸崎さん:シュートボタンを「○ボタン」と間違えていたぐらいの初心者レベルですが、仲間と一緒にプレーすると、ミスしても励ましてくれるので楽しいです。ウイイレはオンラインで対戦可能ですが、こうしてみんなで集ってやると仲間との一体感を感じ、とても良いと思いました。


(写真:お笑い7候補の城戸崎さん)

■社長を交えたeスポーツ実業団チームとの交流戦

また、日立システムズeスポーツ部は、2月2日に本社で『ウイニングイレブン』の社内eスポーツ大会を開催する。

ゲスト企業として、制御盤メーカーの株式会社三笠製作所(http://www.mikasa-med.co.jp/)が設立したeスポーツ実業団チーム「KYANOS」を招き、エキシビジョンマッチを開くとのこと。

日立システムズeスポーツ部神7候補の選抜チームより2名の選手と北野社長が、三笠製作所「KYANOS」に所属するかつぴーや選手、Parika選手と同社の石田繁樹社長と、3人対3人のCOOPモードで対戦を行う予定だ。なお、試合の実況はVAMOLA編集長ちゃまくんが担当する。


(KYANOSチームエンブレム)

関連記事リンク:「電子」を扱う制御盤メーカーがeスポーツチーム『KYANOS(キュアノス)』を創設。かつぴーや選手、Parika選手が所属 https://efootball.jp/2018/11/19/kyanos/

(インタビュー・文●VAMOLA eFootball News)