乾貴士のアラベスへのレンタル移籍が正式に発表された。 日本語とスペイン語で書かれたベティスへのお別れのコメントで、乾は「ベティスで結果を出せずに、悔しさが残るなかの移籍である」と記していたが、それでも、アラベスにその力を高く評価された…
乾貴士のアラベスへのレンタル移籍が正式に発表された。
日本語とスペイン語で書かれたベティスへのお別れのコメントで、乾は「ベティスで結果を出せずに、悔しさが残るなかの移籍である」と記していたが、それでも、アラベスにその力を高く評価されたことに変わりはない。
アジア杯ベトナム戦では後半途中から出場した乾貴士
移籍の噂が流れてきたのは突然のことだった。ベティスがバルセロナと共同でブラジル人DFエメルソンを獲得するという話が出て、埋まっていた外国人枠を空けるために出場機会の少ない日本人MFを放出するとの話を、1月中旬、セビージャ現地メディアが伝えたのが最初だった。
その一方で、イバイ・ゴメスをアスレティック・ビルバオに放出し、サイドの選手の補強が必要だったアラベスが、乾獲得に興味を示しているという話も聞こえてきた。
アラベスにとって、シーズンを引っ張ってきた主力(ここまで20試合に出場)の穴を埋めるには乾はうってつけの選手であった。また、「その穴埋めをできるだけの力を持つ選手である」と乾を評価していることは、1月18日に行なわれたヘタフェ対アラベス戦でアラベスの地元記者から聞いた話からもわかった。
「チームにはイバイとジョニーというサイドの選手がいたが、イバイは移籍、ジョニーはケガで今はいない。乾にはその穴を埋めてほしい。チームにはFWボルハ・バストンへラストパスを供給してくれる選手が必要だ。
乾はボルハとはエイバル時代にもプレーをしているし、その時とやることは何も変わらない。イバイは右サイドの選手だけど、そのあたりのことは、アベラルド・フェルナンデス・アントゥーニャ監督がうまくやってくれるはずだ」
彼はそう言って、昨シーズン、降格圏内から浮上できずにいたチームを残留に導いたアストゥーリアス出身の監督の手腕に期待した。
1シーズン中に監督が4人も代われば、そのクラブは降格するのが常だが、アベラルドはそんなチームのメンタルを変えて、負け犬のようなチームを戦うチームに変貌させた。今シーズンも4-4-2のシステムをベースに、ヨーロッパリーグ(EL)圏内をうかがう順位(現在5位)で戦いを続けている。
アラベスはバスク地方の州都のクラブであるが、アスレティック・ビルバオやレアル・ソシエダのように、スペインサッカーの表舞台を歩んできたクラブではない。セグンダ(2部)で過ごした時代が長く、どちらかといえばエイバルと同じような歩みを進めてきたクラブだろう。
そんなアラベスが2000-01シーズン、サッカーファンの記憶に残る試合をした。
UEFA杯(ELの前身にあたる大会)の決勝に進出し、延長線の末、マイケル・オーウェンやスティーブン・ジェラードを擁するリバプールの前に4-5で敗れた一戦だ。1-3とリードされながら同点に追いつき、延長戦で退場者を2人も出した末にオウンゴールで幕を閉じたしたその死闘は、今でもアラベスサポーターはもちろん、UEFA杯決勝のベストバウトのひとつとして、多くのサッカーファンの間で語り継がれている。
乾にとってもアラベスは知らない街ではない。エイバル時代に、アウェー行きのチャーター便に乗るために足を運んでいた”ご近所”。また、その頃サポートをしてくれた人々にすぐに会いに行ける距離にある。
ベティスで失った輝きを取り戻すため、新天地でもこれまでどおりにサッカーを楽しみ、気持ちを新たに「レンタル移籍ではなくアラベスに残ってほしい」と言わせるようなパフォーマンスを見せることが一番の目標になる。