1年前の自分、これからの自分――。 横須賀にある横浜DeNAベイスターズの二軍球場で合同自主トレを行なうルーキーた…
1年前の自分、これからの自分――。
横須賀にある横浜DeNAベイスターズの二軍球場で合同自主トレを行なうルーキーたちを見て、高卒2年目の阪口晧亮(こうすけ)は、あの時を振り返る。
「ビブスを着て練習している新人選手たちを見ると、まだ1年とはいえ、すごく懐かしく感じますね。当時の自分は、ただ与えられた練習をこなすことで精一杯でした。けど、今はそうではありません。何をやれば効果的なのか、まだまだですけどだいぶわかるようになりました」

186センチの長身から最速152キロを投げる高卒2年目の阪口晧亮
阪口はそう言うと口元を引き締めた。しっかりとした受け答えと利発な顔つき。1年前はまだあどけなさを残していた青年だったが、19歳ながらすっかりプロとしての意識を開花させているようだった。
北海高校出身の阪口は、2017年のドラフト会議で3位指名され入団。昨季はファームのみの出場で主に先発として18試合に登板したが、3勝9敗、防御率6.15とプロの厳しさを思い知らされた。
そんな阪口が今シーズン期待の選手として評価を急騰させたのが、日本代表に選出され戦った第2回WBSC U-23ワールドカップでの投球だ。阪口は2試合に登板。10月27日のドミニカ戦では先発して、7回無失点の好投を見せた。
「あの大会は自分にとって大きかったですね。自分のなかでベストピッチと言える内容でしたし、その後、投球に自信を持てるようになりました。力感を持たず投げ切ることができ、あのピッチングができれば、今シーズンはいい結果が出せるのではないかと、このオフは過ごしてきました」
持ち味は、186センチの長身から繰り出されるMAX152キロのストレートにスライダー、カーブ、スプリット、カットボールといった多彩な変化球。さらに昨秋は大家友和二軍ピッチングコーチからワンシームを伝授された。
「球種が増えることで損はないですし、あとはどれだけレベルや精度を上げていけるか。高いレベルでないと絶対に上では通用しないでしょうから」
育成に定評のある大家コーチから習ったのは変化球ばかりではない。とくに投球術に関し、多くの教えを受けたという。
「自分の長所は真っすぐですけど、そればかりでは通用しない。変化球を使っての駆け引きが必要になってきますし、大家コーチからはバッターのタイプ別の配球などを学びました。あとはしっかりと自分の意思を持つこと。意思がなく投げてもいいボールはいきません。自分が投げたい、こう攻めたいといった意識を持ちながら投げるようにしています」
普段は柔和な表情の阪口であるが、マウンドに上がれば考えを巡らせ、硬軟併せ持って攻めていく。
また指揮官であるラミレス監督も期待の若手投手として、阪口に強い関心を寄せている。
「最初に阪口の投球を見た時、感じるものがかなりあった。ポテンシャルが高くて、将来有望な選手。彼がチャンスを掴むことができれば、ローテーション入りの可能性もある。周囲の人が思っているよりも私はいい選手だと考えているよ」
このラミレス監督の言葉に、阪口はかすかに笑顔を見せ素直な気持ちを口にする。
「とてもうれしいですね。その期待を裏切らないようにしないといけませんね」
意識をする選手は1学年上で、昨シーズン高卒2年目で6勝を挙げた京山将弥だ。
「昨年、上で投げていい成績を残していますし、それに追いつき追い越すことが目標です」
その力強い口調からは、希望と野心が感じられた。もちろん今後に向け課題は多い。とはいえ、阪口はそれをしっかりと把握している。
「昨年ファームで投げて、どれぐらいの球数で疲れるのか理解できたので、それを克服すること。あと、真っすぐは通用すると思うのですが、まだコントロールが曖昧。変化球がばらつくので、そこを完璧にすることができれば、もっといいピッチングができると思います」
あとはフィジカル面も大事になってくるだろう。長身のせいもあるが、やはりプロとしてはまだ線が細く感じられる。ただ、聞けば現在の体重は82キロであり、入団時の77キロから5キロアップしたという。
「自分としてはバランスよく90キロぐらいまでは増やさないといけないと思っています。まだまだ体ができていない状態で152キロ(高校時代はMAX148キロ)投げることができているので、これで体重が増えればどんなボールが投げられるのか楽しみでもあるんです」
底知れぬポテンシャルを感じさせる阪口。キャンプとオープン戦で自分のよさをしっかりとアピールできれば、開幕一軍もけっして夢ではない。