いよいよ1月30日に後半戦が始まるTリーグ。昨年10月に開幕した2018-2019シーズンも、すでに各チームが13試合を消化し、残すところ8試合のみとなった。後半戦の試合は、女子の2位・日本生命レッドエルフと3位・日本ペイントマレッツ…

 いよいよ1月30日に後半戦が始まるTリーグ。昨年10月に開幕した2018-2019シーズンも、すでに各チームが13試合を消化し、残すところ8試合のみとなった。後半戦の試合は、女子の2位・日本生命レッドエルフと3位・日本ペイントマレッツによる”大阪ダービー”で幕が開く。



女子の1位・木下アビエル神奈川のエースとして活躍する石川佳純

 やはり、”スター軍団”の実力は伊達ではなかった。Tリーグ開幕前に男子の優勝候補筆頭に挙げられていた木下マイスター東京は、その期待を裏切ることなくトップを独走。2位のT.T彩たまに勝ち点差9をつけ、初代王者を射程にとらえている。

 そんな木下だが、年末には痛恨の3連敗を喫しており、悪い流れを引きずる可能性もなくはない。個人ランキングでも13勝を挙げて首位を走る絶対的エース・張本智和も、1月20日に閉幕した卓球全日本選手権の男子シングルスではまさかの準決勝敗退。大会を通じて本来の攻撃的な卓球は発揮できておらず、張本の状態によっては波乱が生じる可能性も出てくるだろう。

 木下の背中を追う残りの3チームも、これ以上の独走を許すつもりはない。T.T彩たまは、エースとしての活躍を期待された吉村真晴はここまで2勝5敗と振るわないが、7勝を挙げて個人ランキング4位につけている鄭栄植(チョン・ヨンシク)がチームを牽引。平野友樹も好調を維持しており、昨年12月23日の木下戦では水谷隼をストレートで下している。

 鄭も昨年5月の世界選手権で張本、水谷の木下2枚看板に勝利し、Tリーグ開幕戦でも、チームの勝敗が決まった後の4戦目だったが水谷を3-2で破っている。対木下の相性のよさから、鄭と平野の活躍次第では十分に巻き返しを狙えるだろう。残り6試合の直接対決からは目が離せない。

 3位の岡山リベッツは、上田仁・森薗政崇ペアの強力なダブルスを武器に虎視眈々と首位を狙う。同ペアは木下戦では4戦全勝。さらにはTリーグで11試合ダブルスを組み、9勝2敗という圧倒的な勝率を誇っている。

 開幕戦で水谷が「最初のダブルスを取ったチームが7、8割勝てる」と話すほど、このTリーグにおけるダブルスの重要性は高い。そのため上田・森薗ペアの役割はチームにとって大きなウエイトを占めていると言える。

 だからこそ、リベッツにとっては2戦目以降の勝敗が後半戦のカギを握ることになるだろう。そのキーマンとなりうる選手が、吉村真晴の弟・和弘だ。彼は昨年5月に行なわれたITTFワールドツアー香港オープンの男子シングルスで初優勝を飾ると、同年11月の全日本学生選抜卓球選手権でも初優勝を果たし、現在、著しい成長を遂げている。

 そして、その勢いは止まることを知らない。昨年12月27日の木下戦、4番手で松平健太を3-1で倒すと、1ゲームのみのビクトリーマッチで張本を11-5で下し、逆転勝利でチームを救ってみせた。そんな覚醒の時を迎えている吉村の勢いと、上田・森薗ペアの抜群の安定感があれば、”逆転のシナリオ”がおのずと見えてくるはずだ。

 4位の琉球アスティーダは、首位と勝ち点12差と少し遅れを取っているのが現状ではある。だが、ダークホースとして台頭し、下馬評を覆す可能性もゼロではない。アスティーダにはエースの丹羽孝希を筆頭に、2013年世界選手権の男子ダブルス覇者である荘智淵(ジュアン・ジーユアン)と陳建安(チェン・ジエン・アン)の台湾コンビなど、ライバルを追撃する上で必要な戦力は揃っているからだ。

 開幕からまさかの3連敗スタートで波に乗ることはできなかったが、個人ランキングに目を向けると、丹羽が8勝を挙げて2位、5位の陳と6位の荘がそれぞれ6勝と、決して選手の状態が悪いわけではない。

 波に乗れない要因としては、前半戦で一度も連勝ができなかったことが挙げられるだろう。これはリベッツにも言えることだが、順位を上げるためには連勝が必要不可欠。勝ったり負けたりを繰り返すままでは、チームを勢いづかせることはできない。だが、逆に言えば、一度「連勝の味」を知ることができれば、終盤で一気に首位争いに躍り出ることも夢ではないはずだ。まずは最下位脱出へ向け、着実に勝利を積み重ねていくことが重要だ。

 先に”木下攻略”の糸口を見出すチームはどこなのか、それともこのまま木下が独走状態のまま走り抜けるのか。最後まで目が離せない展開が待ち受けていそうだ。

 一方、女子は男子の”木下1強状態”と違い、優勝は木下アビエル神奈川と日本生命レッドエルフの2強に絞られている。

 アビエル神奈川が11勝2敗で勝ち点38と圧倒的な数字を残し、そこに日本生命が10勝3敗で勝ち点32となんとか食らいつく。3位の日本ペイントマレッツは勝ち点12、最下位のトップおとめピンポンズ名古屋は勝ち点9と、残り8試合で巻き返すのは厳しいだろう。

 となれば、上位2チームのどちらが先に一歩抜け出すかが後半戦のポイントになってくるわけだが、注目すべきは両チームの「エース格以外」の選手だ。

 個人ランキングを見るとわかる通り、アビエル神奈川は11勝2敗で1位の石川佳純と、10勝3敗で3位の袁雪嬌 (エン・シュエジャオ)の”ダブルエース”が絶対的な柱となっており、対する日本生命は10勝無敗で2位の早田ひなと、試合数は少ないが4勝無敗で8位の平野美宇がいずれも勝率100%で好調を維持。この両軸がチームを支えている。

 要するに、勝利を計算できるこのエース格以外で、勝てる選手をいかに多く生み出すことができるか。これが優勝の行方を大きく左右するカギになるだろう。

 アビエル神奈川の候補としては、浜本由惟の名前が真っ先に挙がる。彼女は前半戦で5勝3敗とまずまずの成績を残し、卓球全日本選手権の女子シングルス5回戦では、史上初の2年連続3冠を達成した伊藤美誠(スターツ)を苦しめた。2-4で敗れはしたが、第1、3ゲームを奪取し、一時はゲームカウント2-1とリードする場面も。悔し涙を流したが、調子のよさを感じさせる試合内容であったことは間違いない。そんな浜本には石川、袁に続く”3本目の柱”としての活躍に期待がかかる。

 日本生命の「みうひな」ペアに続く戦力としては、常晨晨 (チャン・チェンチェン)、森さくら、前田美優がいずれも3勝を挙げる働きを見せている。誰しもが看板選手に化ける可能性を秘めているため、この分厚い選手層はアビエル神奈川にとって脅威だろう。この3人の勢いがさらに加速することになれば、Tリーグ女王への道が拓けてくるはずだ。

 Tリーグでは2018-2019シーズンのプレイオフ・ファイナルの開催日・会場が決定。男女同日で3月17日の開催となり、会場は開幕戦で使用された両国国技館に決まった。

 開幕以来となる”大相撲の聖地”に戻ってくるチームはどこになるのか。そして、初代チャンピオンの栄冠を勝ち取るのは。その歴史的瞬間を、見逃してはならない。