マウンドから本塁までの18.44メートル。この距離を隔てて対峙する投手と打者は、時に2人だけしか分からない心の会話をするという。無言で行われる駆け引きを経て、互いにリスペクトを深めていく。■6回2死の第3打席フルカウントから首を振って投げた…

マウンドから本塁までの18.44メートル。この距離を隔てて対峙する投手と打者は、時に2人だけしか分からない心の会話をするという。無言で行われる駆け引きを経て、互いにリスペクトを深めていく。

■6回2死の第3打席フルカウントから首を振って投げた今季最速95マイル

 マウンドから本塁までの18.44メートル。この距離を隔てて対峙する投手と打者は、時に2人だけしか分からない心の会話をするという。無言で行われる駆け引きを経て、互いにリスペクトを深めていく。

 17日(日本時間18日)、ヤンキースタジアムで行われた伝統の一戦、ヤンキースvsレッドソックスで、ヤンキース先発田中将大がレッドソックス4番オルティスに直球勝負を挑んだ。2点リードで迎えた6回2死、この日3度目の打席に立ったオルティスを相手にフルカウントとした時だった。変化球を要求した捕手ロマインのサインに首を振った田中は、今季最速95マイル(約153キロ)フォーシームを力一杯投げ込んだ。オルティスのバットから飛び出した打球は、大きな弧を描いた中飛に。「何としても勝つ気持ちが強かった」という田中が勝利した。

 この日の田中は1回にペドロイアにソロ弾を浴びながら、尻上がりに調子を上げた。6回1死からボガーツを空振り三振に仕留め、メジャー移籍後3年連続で100奪三振を記録。オルティスを力の勝負で打ち取った後、6回3安打7奪三振1失点の好投でマウンドを下りた。

■指揮官の「ビッグパフォーマンスを期待」に応えた好投でチームを勝利に牽引

 87球での降板となったが、田中とオルティスの駆け引きを感じ取ったのか、ジラルディ監督は「彼はすべてを出し尽くした」と迷わず投手交代を決意。「後ろにはビッグな3人が控えているし、負けられない試合だったので継投策を取った」と、ベタンセス→ミラー→チャップマンの中継ぎ最強トリオに勝負を託した。

 チームは後半戦を2連敗でスタート。プレーオフを目指す上でも、この日の勝利は必要だった。「ビッグパフォーマンスを期待していた」という指揮官に、コンビを組んだ試合は5戦5勝と好相性の捕手ロマインと応えた。女房役が「お互いに信頼関係を築けている。本塁打以外は思い通りの投球ができた」と太鼓判を押す投球で、チームに後半初白星をもたらした。期待通りのエースの活躍に「とてもいい投球をしてくれた。初回に本塁打で点を取られたが、4回に援護を得てから踏ん張ってくれた」と監督も大喜びだ。

 今季限りで引退を表明している偉大なる打者に挑んだ直球勝負を制し、チームを勝利へ導いたこの日の登板。後半戦初登板は上々のスタートが切れたと言えそうだ。